三月一日。
ついに卒業のときを迎えた。
この学校へ転校して、僕も少しは変われたのだろうか。
結局のところ学校生活が幾分か改善されただけで、人間としての成長はなかったのかもしれない。
校長先生が一人ずつ卒業証書を手渡していく。
僕は体育館の窓から外の光を眺め、ここでの思い出を振り返った。
いつも陽気なアキオ君と出会い、ホアチャー君とも少しずつ仲良くなった。
うらべっち君の優しさに励まされ、飯塚さんの情熱に心打たれた。
倖田さんの高圧的な態度に怯え、加藤君のしたたかさに驚かされた。
そして……
左方向の少し離れた列に目をやる。
そこには相変わらずメガネを光らせた山根さんの姿があった。
僕はもう山根さんのことをどう思っているのか、自分でもわからなくなっていた。