僕は美術室を自らの居場所に選んだ。
離れたところからお祭り騒ぎのような生徒たちの声が聞こえる。
後輩が展示したデッサン画を眺め、絵画を眺め、頭の中で思い出を眺めた。
この学校に転校してきて色々な人と出会った。
友達になれたと思った。
ならば僕はどうして一人でここにいるのか。
山根さんと話がしたい。
あの頃の関係のままでいい。
山根さんの描いたネームを読ませてもらい、感想を言う。
少しだけ世間話を僕から切り出して、山根さんが一言二言返す。
砂時計の砂が落ちるのを眺めているような、あの頃の時間を過ごしたい。
無人の美術室でただ一人、僕は悶々としていた。