というわけで、あたしの家まで話は持ち越し。家近いというわけでもないけど、詩織はあたしの部屋が気に入っていることもあって、結構頻繁に訪れている。
 で、詩織が精液のこと言ってて思い出したんだけど。

詩織

誰がそんなことを言ったんだ


 あれ、違ったっけ。まあいいや。
 えーと、あたしは精液を出せません。

詩織

うん、そうだな


 何故だと思う?

詩織

それは何を問うものなのか、判断に苦しむが……、女だからだろうな


 そう。あたしは女。だから精液は出せない。
 でも! あたしは女だから、母乳は出せる!

詩織

帰っていいか?


 ちょ、ちょっと待って。ちゃんと聞いて。

詩織

この先に危険な展開が待っている気がしてならない


 危険なことなんてないって。あたし基本的にチキンだし。

詩織

ああ、そうだな。まったくその通りだ


 わかってくれてよかった。……よかったのかな。

詩織

いいから話せ。母乳がどうしたって?


 だから精液の代わりに母乳があればいいの。ほら、例のシーンはあくまでも、母乳が飛び散ってるんじゃないかっていう錯覚がいいわけだから、本物の精液かは重要じゃないでしょ。母乳で全然おっけー。
 あたしってたまに天才じゃないかと思うんだけど、どう?

詩織

天才というものを、誰も思い付かないことを思い付くという定義でいくなら、ある程度は認められるな。ただしどんなに奇抜なことでもどこかの誰かは思い付いているから、そしてどこかの誰かは意外と多いものだから、実際は天才ではない


 じゃあ誰かがすでに……

詩織

かもしれないが、あのエロゲは売れていないから、母数が少ないという意味で、お前しか思い付いてない可能性も高いんじゃないか


 おおっ、やっぱりあたしは――

詩織

バカだな


 がーん!
 ど、どうして。こんなに素晴らしいアイデアなのに。

詩織

お前母乳出るのか?


 …………。
 …………。
 …………。
 はっ!

詩織

遅い。丸一日分、遅い。エロゲキャラじゃあるまいし、母乳いきなり出るはずないだろうが


 で、でも精液よりは可能性あるよ。

詩織

ああ、あるな。可能性だけは


 どうやったら出るかな。吸ってみるとか? でもあたしは残念おっぱいだから自分では吸えないし。
 あ、そっか!

詩織

危険というかろくでもない展開にはやっぱりなりそうだ


 詩織のおっぱい吸わせて!

詩織

……そっちに行ったか。てっきり私に吸えと言い出すものかと


 それでもいいよ。ていうか吸って、激しく吸って。

詩織

私がよくない


 え~、貧乳差別だ~。

詩織

まるで巨乳ならOKしたかのように言うな。だいたい私が乳を無差別で愛していること知っているだろ


 まあね。おっぱいに貴賎なし。詩織は無乳から爆乳まで等しく愛を注いている。あたしも基本はそうだけど、大きいほうが好きは好きだから、ちょっと違う。
 あと、あたしがおっぱいに貴賎なしなのはエロゲ限定、詩織のほうはリアルも含めている筋金入り。だからあたしの残念おっぱいも愛しているはず……。
 なら吸ってくれてもいいじゃない。

詩織

何故そうなる。それからな、拒否以前に、吸っても出てきたりしないぞ。しかもお前、エロゲ精液に匹敵するほど大量に出ること前提で考えているだろ


 でもそういう特異体質かもしれないから、試してみようよ。やってみる前に諦めるなんて人間としてどうかと思う。

詩織

それを試すことのほうに疑問を持ってくれ


 ぶーぶー。

詩織

それから可憐、こういうことはあまり言いたくないんだが


 なに?

詩織

お前バカだろ


 がーん!

詩織

昨日の反省が全くない。たとえ母乳が出たとしても、歩美さんがいなければあのプレイは成立しないだろうが


 …………。
 はっ!

詩織

遅い。生物が脳を獲得してから人間大の脳に進化するまでかかった時間くらい遅い


 あ、でも、母乳の件とは別に、詩織のおっぱいって一度吸っ……触ってみたかったんだよね。

詩織

断る


 はっきり拒否された。口だけでなく、アイアンクローが拒否の態度を表している。
 い、痛い。

詩織

だいたい可憐はリアルに興味ないんだろ。何故私の乳には反応する


 リアルに興味ないのは、アホな男と付き合う気はないとかそういうことなだけで、おっきいおっぱいは人格抜きで舐め……触れるはずだから、話は別なの。
 そう言う詩織のほうこそ、リアルも守備範囲なんだからおっぱいくらいいいじゃん。

詩織

範囲内であることとそれは違うだろうが。それから、私が範囲なのは鑑賞までだ。エロゲを楽しむのと同じように、安全圏から人間のあられもない姿や奇行を鑑賞するのがいいのであって、私が巻き込まれることは絶対に許さん


 ところで詩織さん。まだアイアンクロー食らったままなんですけど、そろそろ許してくれませんか。

詩織

断る


 痛い痛い痛い。余計に力加えないで~。
 あ、でも今ちょっとおっぱい揺れ……うへへ。

詩織

ふん!


 痛い痛い痛い~。

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