四月十八日(月)


 私は花園可憐(はなぞのかれん)。私立有志大道(ゆうしたいどう)高等学校二年の、極普通な女子高生です。

は、花園さん。もしよかったら僕と――


 すみません。今は受験のことしか考えられなくて。

なあ花園、いいじゃん一回くらい付き合って――


 今日は少し具合が。

ぐへへ、可憐ちゃん、今日はどんな――


 ひ、人を呼びますよ!

詩織

よ、可憐。一緒に帰ろ


 ごめんなさい。気持ちは嬉しいのですが。

詩織

は? ああ、キャラ作った状態だったか


 ……うざい男子ではなく、早乙女詩織だった。
 リアルは発言者名が表示されないから、わかりにくい。

詩織

声で気付け。親友じゃなかったのか


 あたし駄目絶対音感はないから。

詩織

いや、使い方微妙に間違ってるぞ


 そもそもキャラを作るのがめんどい。いちいち告白断るのもめんどいけど、授業中とかもずっとこうだからね。嫌になるよ。

詩織

やめればいいじゃないか。本性知っている身としては、キモい以外のなにものでもないしな


 途中で変えてしまうと、それはそれで面倒が増えるんだよー。
 せめて真面目お嬢様系じゃなくて、電波アイドル系ならよかったかも。男から隙ありみたく思われてるらしいから。

詩織

電波系でも寄って来るだろう。隙ありという見方が正しいなら


 そっか。
 はーあ、なんでアホな男ってリアルに幻想持つんだろ。お前の思っているような女なんて存在するわけないっての。大人しくエロゲでもやっていればいいのに。

詩織

そうだな。エロゲやってる男を嫌悪罵倒するよりは、相手に配慮した解決策だ。ま、エロゲでもやってろと思うのと、エロゲやってることを嫌うのは、結論が違うだけで前提も過程も思考は同じだが


 詩織はどうして告られないの?

詩織

まったくないわけではないぞ。可憐に比べれば格段に少ないが


 じゃあやっぱり容姿以外に原因が……。
 隙がない構えをしてるとか。

詩織

どんな構えだ。武道の心得はないぞ


 でも、いかにも武道の心得ありそう。エロゲなら有段者の設定が付いてるね。

詩織

なんでもエロゲで例えるな。自分では男っぽくしているつもりもないんだが……、そう思われるようだから、きっと男っぽいんだろう


 見た目自体は全然男っぽいことないんだよね。髪も長いし、肌も白いし、背も高くないし、胸も大きいし、パンツも――

詩織

それは外見でわからないだろ


 あいたっ。かばんで叩かれた。
 うーん、詩織は素で暮らしてて問題ないんだから、羨ましいなあ。

詩織

可憐も最初から素で行けばよかったのに。気付くのがいつも遅い。いやこの件に関しては、キャラ作りの判断が早過ぎたというほうが適切か


 あ、そうだ。遅い早いで思い出したんだけど、昨日詩織帰った後すごいこと閃いたんだよ、ちょっと聞いて。

詩織

話を聞くくらいやぶさかではないが、場所は考えろ。お前この話、小声でできないんだろ。誰かに聞かれないところでないと、さすがに私も抵抗ある


 ですよね。
 あたしも詩織も、エロゲ好きを公言していない。そう簡単にできるものじゃない。というか公言できるくらいなら、男子のエロゲ仲間作るくらい造作もなかっただろうからね。

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