【遺跡の研究所】
培養カプセルの中にベヒモスは入れられていた。
先程の行動に不可解な点があったので再調整の真っ最中だった。
しかし、それでも研究者の天使ヤハウェーは上機嫌だった。超生命体を遂に完成させ、次のステップに入れるからだ。
【遺跡の研究所】
培養カプセルの中にベヒモスは入れられていた。
先程の行動に不可解な点があったので再調整の真っ最中だった。
しかし、それでも研究者の天使ヤハウェーは上機嫌だった。超生命体を遂に完成させ、次のステップに入れるからだ。
くっくっく、ゼウスしか出来なかった生命創造の力を、いつか我がモノとし天界の王の座につくのは僕となる日も近い。
大層な夢だが、夢は寝て見るものだ
背後から声をかけられた。ヤハウェ―はウンザリしながら背を向けたままルシファーに言った。
ふぅ、やれやれまた侵入者か。人間どもは使えないな。ザル警備じゃないか
ヤハウェはボタンを押すと、周りにあったカプセルが開いて、中から複数の怪物が飛び出し醜悪な姿をした化物がルシファーの周りを囲んだ。
・・・・・・
超生命体の副産物でできた怪物だ。失敗作だが、人間相手にはこいつらで充ぶ・・・
翔べ
「―――――――――――――――――!?」
ルシファーは黒い片翼で全身を覆ってから、一
気に広げると羽の矢を四方に向けて一斉に飛ばした。放たれた矢は一瞬で化け物どもを貫ぬき。即座に全滅させた。
なんだと・・・
次は貴様の番だ。
その光景を見て、ようやくヤハウェはこの侵入者が只者でないことに気づく。
片翼の天使・・・くっくっく、そうか貴様がルシフェル=サタナエルだな?
外道に名乗る名は持ち合わせてない。
これはかの有名な堕天使に出会えるとは、してこの僕に何か用か?
お前のくだらない実験とやらで、多くの人間が死に、多くの血と涙が流された。それをお前にそっくりそのまま返してやる。
はっーははー! 面白い!いいだろう丁度天使相手の実戦データが欲しかったところだ。ベヒモス!
「グオオオオオオオオ!!!」
培養カプセルが割れてベヒモスが飛び出した。ルシファーは剣を抜いて構える。
ゆけ、我が最高傑作よ!奴を殺せ!!!
グオオオオオオオオ!!!
ベヒモスがルシファーに襲いかかる。
ベヒモスの鋭利な爪がルシファーの頭に振り下ろされる。
ヌッ!
それを紙一重にルシファーは躱す。
見かけによらず素早いな。
グオオオオオオオオ!!!
フン
再び襲いかかってきたべヒモスの攻撃を切り返してルシファーはダーインスレイブを振りべヒモスを斬る。しかし・・・
イッテェェェェェェェ!!!
なに!
べヒモスの身体はルシファーの斬撃を弾いた。
攻撃が不発に終わったと悟ると、すぐにべヒモスから離れる。
どういうことだ、天使をも斬れる剣だぞ。何故斬れん?
オイコラルシファー!モット丁寧二扱エ馬鹿!!!
それは俺の台詞だ真面目にやれ。なんだ今の不様な姿は、お前は錆びついてるナマクラか?
チゲェヨ!アイツ硬スギィィィ!!!
べヒモスの表皮が異常に硬く、ダーインスレイブを持ってしてもベヒモスの身体に傷ひとつつけられなかった。
無駄だ無駄だ!剣などでこのベヒモスに傷ひとつつけられるものか!
厄介だな。
ルシファー、俺にやらせてくれ
フッ、わかっている。こいベルフェゴール!!!
ルシファーは自らの眷属の神名を言うと、転がっている小石や砂が一ヶ所に集まり始めて形作る。徐々にそれは人型の姿になり、二本のヤギの角を持ち、牛の尾に、伸びきった無精髭、されど眼光は鋭く、精錬な顔と肉体をしていた。彼は砂でできた玉座に座っている。
ルシファーの第二の眷属、その名もベルフェゴールが姿を現した。
お前の力、見せてもらおう。
ああ、任せろ。
何だそいつは?お前の眷属か?
そんなところだ。
まぁ雑魚が一匹増えたところでべヒモスには・・・ん?
・・・・・・・・・
こいつの顔、どこかで見たような・・・
思い出した!?あのときの人間か!
ヤハウェはベルフェゴールの顔に見覚えがあった。
そう、先程殺した人間の...ペオル=ゴールの面影があった。
・・・クックック、なるほどそういうことか。こいつは面白い。
ヤハウェは不敵に笑い出す。
あの人間に自らの血を飲まして下僕にしたか?
ああ、そうだ。
流石は天界を出された大罪人だ。神の掟などなんのそのなわけか
・・・・・・・
そう怖い顔をするな。僕は別に責めているんじゃない逆に賞賛してるんだよ。
賞賛だと?
これは偶然かな?まさか僕以外にも禁忌を踏み込んだ天使が目の前にいようとは。
ヤハウェ―はべヒモスを撫でながらおかしそうにしていた。ルシファーはその言葉の意味を読んだ。
グルル…
貴様・・・まさかその化け物は・・・
そう、このベヒモスも僕の血を使って精製した。君のペットと同じだよ。
天使の血には細胞の促進効果がある。ヤハウェ―は自身に流れる天使の血を流用してこのべヒモスは造り上げられていた。
まさか天使の中にゼウスの敷いた禁忌を破る奴がいるとはな
科学の発展には古い掟は邪魔にしかならない。僕は求道者なんだよ。
求道者?貴様がか
考えたことはないか? 何故ゼウス唯一人だけが天使を生み出すことができるのか?
・・・・・・・・
それはある。人間との間に子を作ることは可能だが生まれるのは混血(ハーフ)のみ。純潔の天使はゼウスにしか生み出せない。そしてどうやって天使が生み出されるのかは謎とされている。
生命創造、あの旧時代の老人にできて僕に出来ないわけがない。
ゼウスを見下した言い方をするヤハウェー。
飽くなき野心の持ち主のようだ。
お前は世界征服でもしたいのか?
世界征服か、マヌケな台詞だが間違いではない。
真に優れた者が世界を治めるのは自然の摂理だよ。僕はゼウスの造ったこの世界を壊し、新たな世界を創造して神に成り代わる。地上と天界にはべヒモスで溢れかえることになるだろう。
大層な御高説をしてもらっておいて悪いんだが、俺からしてみればゼウスも貴様も世界を治める器はないがな。
天才とは常に愚民から嫉妬される。まぁいい、討論など不要。結果こそ全てだ!私の造った超生命体と、貴様の造った玩具、どちらが優れているか見物させてもらおうじゃかいか。
ベルフェゴールとべヒモスは互いに相対した。
よぉガキンチョ
グルル…
対峙するベヒモスとベルフェゴール。
ベルフェゴールのその瞳には哀しみしかなかった。
今終わらせてやるからな
グオオオオオオ!!!
ベルフェゴールとベヒモスは両者激しくぶつかった。
ルシファーとヤハウェーはその戦いを離れて見守る。
このベヒモスはただ血を飲ませただけの不死者とは違う。数千種類の動物のDNAを混ぜ合わせ僕なりにアレンジを加えている生物兵器だ。
それで魔素か
本来天使の血を飲んだ人間が魔素などという強い猛毒を含むはずがない。それに人工的に手を加えて変異したものだった。
そうだ。魔素の正体は多種の遺伝子を組み込んだために変質したウィルスだ。人間どもが黒死病と呼んでる猛毒な物質を含むが、あれを見てみろ。
グオオオオオオ!!!
ぐおっ!?
ベヒモスの猛攻にベルフェゴールは押されていた。
どうだこの圧倒的なパワーは!
これが魔素の持つ力だ。魔素は毒の作用以外に人間の細胞を飛躍的に促進させる。適応さえすれば御覧のとおり圧倒的な力を得られる。
これぞハイリスクハイリターン。ただ血を飲ませただけの貴様の不死者とは性能が違うんだよ。
べヒモスの素早い動きに翻弄されてベルフェゴールは一方的にやられていた。そして・・・
グオオオオオオ!!!
―――――――――――――!?
ベヒモスの鋭い爪がベルフェゴールの頭を吹き飛ばした。
クックック、どうやら勝負あったようだな
べヒモスに頭を吹き飛ばされたベルフェゴールを見てそう呟くヤハウェ―
はじめから結果はわかっていたが、幕切れはあっけないものだったな。
・・・・・・・・・・・
そもそも格が違いすぎたのだよ。同じ不死者でもこっちは魔素の力を取り込んだ不死者だ。同じ蜂でもミツバチがスズメバチに敵うわけないだろう?
・・・・・・・・・・・
なんのつもりだったかは知らないが、あの人間を不死者にしたのは僕へのあてつけかい?でも残念だったねぇ僕のべヒモスに二度も殺されるだなんてさ。
・・・・・・・・・・・
さて、次は貴様の番だ。こいべヒモス!
グオオオオオオ!!!
ヤハウェ―はべヒモスに命令した。べヒモスはそれに応えようと振り向く。
ふぅ
ずいぶんおめでたい奴だな。
は?
まだ終わっていない。
クックック、負け惜しみかね?残念ながらもう勝負はすでについているのだよ。まぁいい、べヒモス!こいつを始末しろ!
ヤハウェーはべヒモスに命じた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
しかしべヒモスはベルフェゴールの前から一歩も動かない。
どうした?さっさとこっちにきて、あいつを始末しろ
・・・・・・・・・
しかしべヒモスはベルフェゴールの前から一歩も動かない。
何をしている!さっさとこっちへ来い!おい!べヒモス!!!
・・・・・・・・・
しかしべヒモスは一向に動かない。
一体どうしたというんだ・・・何故僕の命令を受け付けない
クックック・・・
困惑しているヤハウェーにルシファーは不敵な笑いをする。
何がおかしい?
クックック・・・ハッ―ハッハッハ!!!
まさか貴様、僕のべヒモスに何かしたのか?
違う
じゃあ何がおかしい!!!貴様が何かやったんだろう!!!
まだ気づかないのか?
また命令系統に不具合が生じているのか?
いやしかし調整は完璧のはずだ。何故命令を受け付けない・・・
何故僕の命令を聞かない。どういうことだ!
ホント頭の中がおめでたい奴だな。
なにぃ!?
動きたくても動けないんだよ、このマヌケ
よく見ろお前のご自慢の超生命体とやらをな
グルルルルルル!!!
ヤハウェーはべヒモスをよく見る。
するとべヒモス何か必死にもがいていた。
まるで命令を聞こうとするが身体が思うように動けないでいるように見えた。
ん?なんだアレは・・・砂か?
ベヒモスの後ろの二本の足には砂がかかっていた。
いや、あれはかかっているのではなく固まっている。
後ろ足を砂で固められていてべヒモスは身動きが取れなくなっていた。
ようやく捕まえたぜ
頭を吹き飛ばされたはずのベルフェゴールに砂が集まりだし、ベルフェゴールの頭部を修復し始めた。
身体は砂になっていてベヒモスの一撃を通していなかったのだ。
なにぃ!?
べヒモスが身動きがとれない隙に、ベルフェゴールは両拳を地面につけると両拳に石が集まりだした。
そしてそれは巨大な岩石のドリルに変化した。
今度は俺様の番だ!!!
「どりゃっ!!!」
グオオオオオオ!!!
岩のドリルはべヒモスの硬い表皮を貫いた。
まだまだいくぜぇ!!!
「ドリャドリャドリャドリャドリャアアアアアア!!!」
グオオオオオオ!!!
岩石のドリルでベヒモスをラッシュするベルフェゴール。べヒモスは悲痛な咆哮をあげながら魔素の血をあたりにぶちまける。
馬鹿な、ただの不死者が地の魔法を!?
そうそう俺も若干アレンジを加えている
アレンジだと?
血を飲ませただけの不死者には魔法は本来使えないはず、それがなぜ・・・
そのとき、ヤハウェ―はハッとした。
まさかこいつ・・・こいつは・・・・・・
お前まさか・・・自らの地のエレメントを不死者に授けたのか!?
フッ
ルシファーは不敵な笑みを浮かべた。そのまさかだ。
確かに理論上では可能だ、天使の血を飲み不死者になった人間つまり混血児(ハーフ)と同じ存在になる。しかし、生まれながらのハーフと、後天的にハーフになった者とでは根本的に違うものがある。
それはエレメントの有無だ。
お、お前正気か!? 二度と魔法が使えなくなるんだぞ!!!
魔法には五つの属性がある。
火のエレメント
地のエレメント
雷のエレメント
風のエレメント
水のエレメント
これを五大属性という
ルシファーはこれら五大属性のエレメントを持っている。それにより魔法を行使することのできる。
しかし・・・今のルシファーには雷、風、水の三種類の魔法しか使えなくなっていた。
ベルゼブブに火を
ベルフェゴールには地を
ルシファーは己のエレメントを彼らに移植した。
本来エレメントとは、その者が持つ先天性の才能であり。後から身に付けたくても身につけられるものではない。
エレメントの才能には個体差があり。
天使の中でも火のエレメントのみの者もいれば、
二、三種類のエレメントを持って生まれる者もいる。
その中でルシファーは五大属性全てを持って生まれた天使の中でも珍しい希少な一人だった。
それだけエレメントは重要なのだ。
失ったらもう二度と取り戻すことはできない。
それは魔法を行使する者にとっては常識であり、魔法を失うことは死を意味する。
それを、たかが天使の成り損ないの不死者如きに、自分のエレメントを渡すなんて・・・信じられんことをする馬鹿だ。
後悔はない
それに貴様にはわかるまい
力を失っても、愛する女性を奪ったゼウスに復讐できるのなら安いものだ。全てを失う覚悟ならとうにできている。
理解しがたい、失うことに恐れはないのか!?
ない。あと先程貴様も言ってただろ?これが俺のハイリスクハイリターンだ
ベルフェゴールが高々に拳を掲げると、地の魔法で拳に周囲の岩石を寄せ集めた。
それは巨大な拳になり、べヒモスの顔面を打ち抜いた。
「ウオリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
グオオオオオオ!!!
ベルフェゴールの岩石の拳を受けてベヒモスはぶっ飛ぶ。
強力な一撃でべヒモスの牙はへし折れ、身体中のあちこちの骨も折れた。
しかし、ベヒモスは倒れない。
ベルフェゴールは地面を掴んで指先に力を込める。
ヌオオオオオオオオオオ!!!
膨大な魔力を溜めて大地に放出する。
黒き大地の力よ! 怒りの地響きで天を穿つ槍となれ!
ギシャアアアアアアアアアア!!!
ベルフェゴールは地面の大地を勢いよく持ち上げた。それは剣山のような鋭く尖った岩が突出して、波のように連なりながらベヒモスに向かっていった。
そしてべヒモスが足元まで剣山が辿り着くと、真下からべヒモスの腹を貫いた。
ギシャアアアアアアアアアア!!!
まだだ!そのままクソッたれ天使の住む天までいきな!!!
ギシャアアアアアアアアアア!!!
伸び続ける岩の槍は研究所の天井を突き破り、上の遺跡まで伸び続けた。
ギシャアアアアアアアアアア!!!
岩の槍の勢いは止まらない。べヒモスを突き刺したまま遺跡に出ると、今度は遺跡の天井をぶち破り、外に出る。
べヒモスをぶっ刺した剣山は盛り上がり続ける。
勢いよく盛り上がり続ける地面は、凄いスピードで遺跡の天井を突き破り、外に出てもまだグングン高く昇り続ける。そして遥か上空の空までベヒモスを運んだ。
な、なんだこの魔力は!? ありえない! たかだか眷属如きがこのような魔力を持つはずが…
ベルフェゴールの地の魔法はそこら辺の天使の魔法を遥かに凌駕していた。
それを物語るように、天を貫く堅い岩盤が月をバックに高々くそびえ立っている。まるでそれは遺跡から生えた高い塔のように
あらよっと!!!
そこへベルフェゴールは伸びた岩の根本まで歩き、思いっきり根本をぶん殴る。すると岩の根本は豪快にへし折れて、塔は次第に崩れ落ちていく。
塔のてっぺんにいるベヒモスは為すすべもなく真っ逆さまに大地に落ちてゆく。
崩れ落ちる高い岩の塔、ベヒモスは足場を失い落下し高さ1000mから地面に叩きつけられた。
ギュオオオオオオオオオオンンンン!!!
激突した衝撃を受けてべヒモスは断末魔をあげた。
馬鹿な...ベヒモスは、僕の最高傑作は地上最強の生物なんだぞ。こんなことありえるか…
地上最強の生物か、ならベルフェゴールは地上に足をつけている全ての生物に対して最強だ。
ぎゅふぅ・・・・ぎゅふぅ・・・・
まだ生きてるのか・・・
1000mの高さから叩きつけられたはずのベヒモスはまだ生きていた。凄まじい生命力だが、すでに身体中の骨は粉々に砕け、瀕死の状態だった。
ぎゅふぅ・・・・ぎゅふぅ・・・・
くそ! この役立たずめ! お前は失敗作だ!
敗けを察したヤハウェは慌てて逃げようとする。
創造主に見捨てられたベヒモスをベルフェゴールは静かに見下ろしていた。
・・・・・・
ぎゅふぅ・・・・ぎゅふぅ・・・・
・・・・・・悪かったなヨブ
・・・・・・・
痛みを感じる間もなく一瞬で終わらせるつもりだったが、逆にお前を痛めつけちまった。
・・・・・・・
こんな姿に変えられて、俺はお前を救えなかった。だから今度こそ俺はお前のその苦しみを取り払ってやるからよ
・・・・・・・
・・・今楽にしてやる
くぉーん・・・・くぉーん・・・
虫の息だが、確実にトドメを刺すためベルフェゴールは頭の角を硬化させ、べヒモスに向ける。
その時、ベルフェゴールにはベヒモスからあふれでた光を見た気がした。
それは錯覚か、幻か、その光は少年の姿に見えた。
おっさん!
なんだガキンチョ
その......あれだよ...あれ...
少年は照れ臭そうに笑った。
ありがとな
ベルフェゴールは笑うと、額から勢いよく発射された鍾乳石の鋭く尖った角がベヒモスの口を貫いた。
脳髄を破壊されベヒモスは絶命する。
そして、ベヒモスの身体は衝撃で吹き飛び、その先には逃げようとするヤハウェーがいた。
なっ!?
ぐはっ!?
ベヒモスの死骸の下敷きになる天使ヤハウェ
ぬぐっ!このどけ!!!邪魔だ!!!
ベヒモスがのしかかって身動きがとれない。
そんなヤハウェの目の前にルシファーが立つ。
どこへ行くつもりだ?
貴様、これで勝った気でいるなよ...いつか必ず神罰がお前に下る!それを忘れるな!
ゼウスに弓引こうとしてた奴が最期には神頼みか、笑わせる
くそ! くそ! この僕が! 邪魔だどけ! この失敗作が!
ベヒモスの死体を退かそうとするも全然動かない。
間もなくこの遺跡は崩れさる。だが天使は飯を食わなくても息をしなくても人間と違い死にはしない。生き埋めにしたところでお前は死なないだろう
そうだ! 必ずここから這い出て貴様を!
ルシファーはベヒモスの死骸を斬りつけた。べヒモスが死んだことにより体中の硬質化はすでに無くなっていた。
な、なにをしている…
ペッ! ペッ! クソマズッ!? ルシファー! コンナ魔素マミレノ血ナンカ飲マセンジャネエ!
そうか、魔素の味しかしないのか
き、貴様…まさか!?
ヤハウェはハッと気づいて震えた。
ベヒモスから溢れでた泥のような血が吹き出し、下敷きになっている天使に落ちる。
ぐぎゃああああああああ! 魔素が!? 魔素がああああ!
ベヒモスが死んだことで、魔素を中和する抵抗力がなくなったようだな。この血はタップリと有害な毒をさぞかし含んでることだろう
魔素を含んだベヒモスの血に天使の肌が触れると、皮膚が化膿し、黒い斑ができる。
それがお前が撒き散らした黒死病だ。実験と称して奪った二万四千人の苦しみを身を以て味わえ
ぎゃああああ、ゲホッ!ゲホッ!
血反吐をビチャビチャぶちまける天使ヤハウェー
おそらく、魔素が肺のほうまで侵食したのだろう。
苦しそうに蠢いている。
天使は人間と違い生命力がある分、死ぬまで時間がかかるだろう。疫病で死んだ人間の10倍は苦しみながら死ね
ル…ルシフェル…サタナエル!!!
ルシファーはベヒモスも心臓に剣を深く突き刺す。
それを唖然としながら天使は見上げた。
今の俺はルシファー=サタンだ
剣を引き抜くと、心臓に溜まっていた大量の血が溢れだし、天使の全身に浴びせかけた。
「びなあたなさやまかなあか!?!?!?」
声にもならない声をあげる天使ヤハウェー。
整った顔は醜く腫れ上がり、全身黒い斑模様の斑点が浮かび上がる。ヤハウェ―は魔素の血の海の中に沈んだ。
崩れ落ちる岩盤、王族の遺跡は邪な野望に染まったヤハウェーを置き去りにして、その研究所と共に崩壊した。
崩壊していく遺跡をベルフェゴールは眺めていた。
ミディアン……ヨブ……デカイ墓になっちまったが、安らかに眠ってくれ。王様の墓だから文句ねぇだろ?
ベルフェゴールは死んでいったミディアンとヨブに黙祷を捧げた。
その後ろにルシファーは立ってベルフェゴールを見ていた。
満足したかベルフェゴール?
ああ、大満足だ
我らが行く道は棘の道だ。今一度問うが、覚悟はあるか?
めんどくせえこと言うなや
ベルフェゴールは口元を上げて言った。
次はどの天使にしょんべん引っかけるよ?
怠惰のベルフェゴール
後にその名は、7つの大罪怠惰の悪魔として語り継がれることになるだろう。