崖から落ちて地面に叩きつけられたペオルは瀕死の重症を負っていた。
ベヒモスに噛み砕かれて無くなった右腕の感覚もない。
ここ・・・までか・・・
ペオルは死を実感しながら静かに目を閉じた。
崖から落ちて地面に叩きつけられたペオルは瀕死の重症を負っていた。
ベヒモスに噛み砕かれて無くなった右腕の感覚もない。
ここ・・・までか・・・
ペオルは死を実感しながら静かに目を閉じた。
静かだ・・・
これが死か・・・
俺はこのまま死ぬのか
よくよく考えるとあんなガキ放っときゃよかったぜ。
怠け者の俺がガキ一人に珍しく頑張るんじゃなかった。
そしたらこんな痛い思いせずに、死ぬこともなかったのによ。
それにいつもなら今頃、売春宿に繰り出して女といいことしてたってのによ
俺も焼きが回ったか、嫌だね~歳って奴は!
それにしても静かだ。こういうのも悪くはねぇ。
外は色々騒がしいからよ。
ただ、名残りがあるとすれば・・・
こんなことなら、一発やってから行きゃあよかった。
最後の最後まで女のことを考えるとは、俺らしいな。自分でも笑えら。
―――生きたいか?
!?
ペオルはハッとした、
自分以外の誰かの声がしたからだ。
そしてよく見ると目の前には一人の青年が立っていた。いつからそこにいたのかわからない。
そいつはなんとも不思議な雰囲気を纏っていた。
ペオルは青年に問いただした。
お前誰だ?
青年は無言だった。
その代り、青年は大きな黒い翼を拡げ始めた。
美しい翼だ。力強くそれでいて神々しい。
ペオルは青年の翼に一瞬見とれるが、すぐ正気になり、青年に対して憎悪の目を向ける。
チッ、また天使かよ。
今は天使の面に唾を吐きたいってのによ
―――そうか、なら吐きつけてみろ
そうしてえが、身体が動かねぇ
―――その身体をもう一度動かせるようにしてやろうか?
なんだと?
―――ペオル=ゴール、我が仲間になれ
ケッ、何を言い出したかと思ったが、ふざけんな、誰が天使なんかの仲間になるもんか
―――私は天使ではない。天使と神に敵対する者だ。
どっちにせよ俺にとっちゃ同じだ!昔から神さんは大ッ嫌いなんでな!
―――頑固な男ですね。主よ、本当にこの者を我らの仲間に加えるのですか?
いつの間にいたのか青年の隣に誰かいた。そいつは気味の悪い蝿のような兜にローブを纏った珍妙な格好をした奴だ。青年は構わず話を続ける。
―――ああ、俺はこの者が気に入った。この人間なら充分資質もあるだろう。
―――そこまでおっしゃるのでしたら、私は主に従うのみ・・・
おいこら、勝手に話進めんじゃねぇよ。大体なんで俺なんだよ。
―――ペオル、お前の一部始終は見させてもらった。お前には我々の仲間になる資格がある。
その上から目線が気に入らねえんだよ!天使って奴はみんなそうなのか?
―――貴様、無礼だぞ!
青年の隣にいる奴が怒鳴る。しかし、青年は諌めるかのように隣の奴を制止した。
―――いい、この者のいうとおりだ。上から目線に聞こえたのであればすまなかったな。決してそんなつもりではない。
今更礼儀よくしても遅すぎやしないか天使様よ?
―――貴様ッ!
―――やめろベルゼブブ、大義を忘れるな。我々にはこの者が必要だ。
―――しかし我が主よ・・・
それにてめぇ、一部始終を見てたって言ってたな。
―――ああ
あのやり取りをただボッー突っ立って見てたわけだ。
―――そうだ
ヨブが化け物になったのも、俺の部下が食い殺されたことも!全部間近で見てたんだな!
―――見ていた
見殺しにしといて何が仲間になれだ? 笑わせんな!
―――お前が我らの仲間に値するか試す必要があった。
ふざけんな!!!
てめぇらが見殺しにしたそのせいであいつは!あのガキは!!!
あんな化け物になったんだぞ!
―――それは違います。どのみちあの子供は体内の魔素に汚染されていて、長くはなかったでしょう。
―――いや、助けられなかったことは事実だ
ちくしょうが、どいつもこいつも...
―――お前はどうしたい?
知らねえよ。こっちとらさっさと天国にでも行って旨い酒と綺麗な女を侍らかしてえんだ。
―――天国なんか空想だ。存在しない。
へっ、夢見るのも許さねえってか?キツい天使だ。
俺にはやらなくちゃいけないことが残ってる。
なら、それならそれでいい。
あの天使だけは許せねぇ・・・
ミディアンとヨブの仇だ。
こいつ等の素性はしらねぇが、力を貸してくれるっていうのなら、とことん使ってやろうじゃねぇか。
それが、人間じゃなくなるとしてもだ。
今俺が一番やりたいことは俺はあのくそ天使の面に唾・・・いや!しょんべんぶっかけてやりてえ!!!
ペオルの出した答えに満足してか、青年は笑みを浮かべた。
私はルシファー=サタン
ペオル=ゴール、お前に選択肢をやろう。
次回イヨイヨ決着!