4月12日

犬伊

入って、新乃

新乃

・・・

放課後、約束通り勉強を見ることになった俺は、新乃を自分の家に呼んだ。

新乃はキョロキョロと部屋を見渡して、どこに居ればいいのか探しているようだった。

犬伊

そこ座って待ってて
今、コップ持ってくる

新乃

・・・

勉強机の椅子を引いて促すと、新乃はこくんと頷いて座った。
帰りにコンビニに寄り、適当な飲み物とご褒美(予定)のお菓子を買ったので、俺はコップを取りに部屋を出た。

男友達一人残して部屋を開けるのって結構危険(隠し財産的な意味で)とも一瞬考えたが、和咲や井崎がいるならまだしも、新乃だけなら平気だろうと判断してのことだった。
とはいえ、少し急ぎ目に部屋に戻った。

犬伊

って、ああ、新乃堪え性ないなあ

新乃

・・・

部屋に戻ると新乃は買ってきた菓子をすでに開けて食べていた。

犬伊

その菓子そんなに好きなんだ

新乃

・・・

ビスケットにチョコレートのついたその菓子を、口いっぱいにしてもぐもぐと食べる姿は小動物そのものだった。
新乃は食べるのを止めないで、こくんと頷いてさらにもう一個を口に含む。
甘いものを目の前にした新乃に、我慢なんてものは不可能なことだったらしい。

犬伊

これじゃあ勉強頑張ったご褒美のお菓子はナシだな

新乃

・・・

新乃

・・・

この後に及んで、まだ菓子を食べるつもりでいたらしい。

犬伊

はい、勉強勉強
今日は漢字な

俺は菓子を横によけ、春休み中に片付けておくべき課題集の漢字問題集を開いた。
甘いものを取り上げられてすっかりやる気の失せた新乃の背中を押す。

犬伊

春休み中に少しはやった?

新乃

・・・

新乃は目をそらした。
見ると10ページあるうちの、1ページしかやっていないようだった。

犬伊

なんだ、1ページやってるじゃん
えらいえらい

新乃

・・・

俺は褒めて伸ばすからな。
新乃の頭を撫でると、悪くなさそうな顔をする。

犬伊

こんなのわからなきゃ携帯で調べればいいんだよ

早速わからない漢字があったらしい。
新乃の手が止まったので、俺はその漢字を携帯で調べた。

犬伊

そういえば新乃って携帯持ってる?
俺らまだ連絡先交換してないじゃん

新乃

・・・

犬伊

こ、これは・・・

俺は新乃の取り出した携帯に、思わず言葉を失う。
こんな形の携帯、久々に見た気がする。

犬伊

えっと、これってライン使えるの?

新乃

・・・

新乃は首を傾げた。
うーん、使えたところで、新乃の反応薄そう。
既読無視どころか既読さえつかない気がする。

犬伊

じゃあメアド交換な

新乃

・・・

新乃は携帯を俺に押し付けた。
どうやら面倒だから俺にやれ、ということらし。

犬伊

じゃあちょっと借りるな

俺は新乃の携帯を受け取り、連絡先を打ち込む。
ボタンのムニムニ感がなんとも新鮮だった。
最近はみんなスマホでラインだから、メアドを打つなんてことも久しい。

犬伊

じゃあ俺の方に送信して・・・
うわ、新乃のアドレス覚えやすい

自分のメアドあてにメールを送信して、新乃のメアドを確認する。
nino2no、たったそれだけだった。

犬伊

ニノにの?
にのにーの?
なんか可愛い

新乃

・・・

可愛いと言われて怒ったのか、新乃は膨れてしまった。
余計可愛くて仕方ない。
今度からにーのって呼ぼう。

そんなこんなで遊んでいるうちに、夜になっていた。

犬伊

うーん、あんま進まなかったからまた明日だな

新乃

・・・

あからさまに嫌そうな顔をするにーのに、俺は苦笑するしかない。

犬伊

明日は、にーのが好きそうな甘いの買っておくから、勉強終わったら食べさせてあげるよ

新乃

・・・

それならやろうかな、なんて思っていそうなにーの。
にーのってよく分からない風で、実は結構わかりやすい奴だ。

犬伊

じゃあ、また明日も

新乃

・・・

つづく

にーののアドレスゲット、明日の勉強会も予約済み。
着々とにーの攻略に勤しむ犬伊だったが・・・。

犬伊

また見てね

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