4月11日

犬伊

おはよう新乃、元気ないね?

新乃

・・・

教室に入って一番に目に入ったのは、机で潰れている新乃の姿だった。

声をかけつつ、新乃の頭をくしゃりと撫でる。
今日は少し肌寒い気温で俺の手は冷えていたが、新乃の髪の中は暖かくて気持ち良かった。

新乃

・・・

新乃

・・・

犬伊

ごめんごめん、新乃

急に冷たい手が触れたから驚いたのか、新乃が顔を上げて俺を見た。
謝りながら手をのけると、俺が触れたところを自分の手で撫でて直していた。

そんなことされたら、余計髪をくしゃくしゃにしてやりたくなる。
俺は再び新乃の頭に手を伸ばし、ワシャワシャと搔き回した。

犬伊

あー、新乃の頭、あったかい

新乃

・・・

さすがに怒らせたかな。
新乃は俺の手を押しのけて、睨み付けてくる。

井崎

おはよう犬伊、新乃のことからかいすぎだよ
さっき先生に叱られて、凹んでんだから

犬伊

そうなんだ?
新乃何かしたの?

新乃

・・・

俺が聞くと無視して、新乃は机にべちゃりと潰れた。
少しからかいすぎたらしい。

井崎

逆かな
課題提出しなかったから、怒られたんだよ
今週中にやってこいって言われて、この通り

新乃

・・・

この通りの新乃は気の抜けた顔で遠くを見つめていた。
新乃、そんなに勉強が嫌いなのか・・・。

犬伊

そうか、からかって悪いことしたな

犬伊

お詫びに、甘いの食べる?

新乃

・・・

甘いの、という言葉に釣られて顔を上げた新乃は、俺の取り出したサイコロのようなものをきょとんとした目で見た。

犬伊

知らない?
これを開けると・・・

蓋になっている面を引っ張り開けると、中から二つのキャラメルが顔を現した。

新乃

・・・

犬伊

はい、あーん

新乃

もぐもぐ・・・

新乃

・・・

甘いものを食べて、新乃はご満悦のようだった。

犬伊

幸せそうな顔してるなあ

和咲

新乃すっかり餌付けされてるね

新乃

・・・

いつの間にか現れた和咲が新乃に後ろからのしかかる。
新乃はびっくりしているが、和咲はそれを気にすることもなく、もう一つのキャラメルに手を伸ばした。

和咲

僕にもキャラメルちょうだい

言った時にはもう、キャラメルは和咲の口の中だった。

和咲

そういえば僕聞いてたんだけど
新乃の勉強、犬伊が見てあげたらいいんじゃない?

犬伊

んん、唐突だな
なんで俺なんだ?

井崎

ああ、ちょうどいいんじゃない?
餌付けしてるんだし、勉強の面倒も見てあげなよ

犬伊

いやいや、ちょうどいいの意味がわかんないし

和咲

えー?
犬伊は新乃の面倒見るの、いやなの?

犬伊

いや、そうは言ってないけど

井崎

新乃も犬伊に勉強見てもらいたいよね?

新乃

・・・

新乃

・・・

新乃はこくんと頷いた。
和咲と井崎の畳み掛けるようなコンビネーションは、どこかで練習してたのでは?と思うくらいだった。

犬伊

ま、まあ新乃がそう言うなら別に、勉強くらい見るけど

そんなこんなで、気づけば新乃の勉強を見ることになった。

つづく

いつの間にか新乃の勉強を見ることになった犬伊。
早速明日、犬伊と新乃の勉強会が始まって・・・。

犬伊

また見てね

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