翌日、私は昨日の出来事などなかったかのように学校へと向かった。

なんだか、こうしているとき脳のことが夢見たいよね

昨日で3年生の卒業式は終わったけれど、2年生の私達はまだ1週間ほど授業がある。

短縮授業ではあるが、例年なら多少のめんどくささを感じる期間だ。


でもなぜだか今日は、こうして日常が戻ってきたことにほっとした。

少なくともこうして教室にいれば、カルロスのことを思い出さなくてすむからだ。

あーあ、鈴木先輩卒業しちゃったなぁ

美佳、先輩のこと大好きだったもんね

だって、あんなかっこいい人他にいないもん

こういう会話も、なんかめっちゃおちつくなぁ

そういえばリンネは? 田中先輩に告白したんでしょ?

それがだめだったの

その割には、なんかあんまりがっかりしてないね

え、そう?

そうそう! 私たち、リンネのこと励ます覚悟できたのにー

なにそれひどい!

だって、田中先輩って顔がゴリラなくせに彼女いるって噂だし

ゴリラってなによ、すごいイケメンなのよ田中先輩は

冷静につっこんでるし、やっぱりあんま凹んでなさそう

そんなことないって

いいつつも、正直彼女の存在を聞いても、あまり動揺していないのは事実だ。

もちろん田中先輩のことは好きだし本気でつきあいたいと思っていたけれど、カルロスの慰め方がひどすぎたせいか、自分でも驚くほどドライになってしまったのだろう。


そもそも彼の側にいるとツッコミが追いつかないし、泣いている暇もない。

悲しいけど、いろいろ大変なことがあったからそのせいかも

大変なことって?

異世界から勇者がやってきて……
なんていえないよね

家のことでちょっと

ひとまずそうごまかすと、タイミング良く先生が教室へと入ってくる。


すると友人達は蜘蛛の子を散らすように自分の机へと戻り、私はごまかしの嘘を考えずにすんだことに少しほっとする。


だが……

えー、突然ですがみなさんにちょっとしたお知らせがあります

いつもはすぐ出席を取り始める先生が、そんな前置きをする。

突然ですか、今日から転校生が来ることになりました

え、こんな時期に?

少し変わった経歴の方でちょっと驚くと思いますが、快く受け入れてあげてください

そしてがらりと扉が開き、その新入生がやってくる。

!?!?!?!?!

みなさんこんにちわ、新入生のカルロスです

カルロスさんは見たとおり大人ですが、訳あって今日から高校生をすることなりました

なにその唐突な嘘!!

はいっ!あと実は自分、こう見えても社長でして!

その上嘘が図々しい!!!!

ただ若くして起業したため高校は卒業していなくて……。その心残りを無くすため、進学を決めた次第です!

でも、異世界人のわりにはそれっぽいこと言ってる……

改めて進学を考えていた折り、縁のあった我が校の校長にこの学校に通うことを薦められ、入学を決めたそうです

それっぽいことは言っているが、相手はおっさん。


それが教室にいるなんて不自然きわまりないのに、どう言うわけかクラスメイト達はあまり気にしている風もない。

そうなんだー

すごいねー

むしろ気にするどころか、納得している。

わからないことも多いと思うので、みんないろいろ教えてくあげてください

はーい

えええ、なに普通に受け入れてんの!?

とりあえず、席はリンネの隣で

えっ、わたし? なんで?

何でって、カルロスさんとは遠縁の親戚なんだろう?

ええ。それもあって、この学校に来たんです

こいつ、また嘘を重ねやがって

ちゃんと面倒みてやれよ

よろしく先輩

しれっと私の隣に座り、カルロスはこちらに笑顔を向ける。

そのうれしそうな顔があんまりムカついたので、私はホームルームが終わるなり、彼を教室から連れだした。

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