異世界の元王子にしてヒモ予備軍のカルロスを連れ、私は仕方なくある場所へとやってきた。
異世界の元王子にしてヒモ予備軍のカルロスを連れ、私は仕方なくある場所へとやってきた。
ずいぶん広い屋敷だな。
さすが勇者なだけはある
言っておくけど、ここはおじいちゃんちで私のじゃないからね
おお、おじいさまがいらっしゃるなら是非挨拶せねば!
やめろと言いかけて、私は口をつぐむ。
輝く目を見た限り止めても無駄だろうし、何よりこうなることが予想できたから私は彼をわざわざ祖父の家へと連れてきたのだ。
家族や友達が私を勇者(笑)扱いする中、唯一私の話を信じてくれたのが祖父だ。
夢の話を馬鹿にしたり笑ったりせず「すごい体験をしたんだね」と言ってくれた祖父は今も私の一番の味方で、親と気まずくなるたび私はこの家を訪れている。
だから今回も、私は彼に頼ることにしたのだ。
自宅以上になじみのある祖父の家に上がり込むと、彼は居間でゲームをしているところだった。
今年66になるが、祖父の一番の趣味はゲームだ。特にRPGが好きで、私の話を信じてくれたのもそういうところにあるのだろう。
最近では大人気RPGシリーズのオンラインにハマったらしく、彼は巨大なモンスターをネットの向こうの仲間たちと討滅しているところだった。
リンちゃんすまん、あと1フェーズで終わるからお茶でも飲んでで!
こちらに背を向けたままゲームに夢中の祖父は、まだカルロスに気づかない。
だがカルロスの方はゲームに興味津々で、私が止める間もなく祖父の隣に腰を下ろす。
なんとも珍妙な光景だ。
こんなにも凶悪な魔物と戦うとは、なんと勇ましい勇者だ
ふふふ、もうあとちっとで勝てるぞ!
この、絵の中のかわいい女子が勇者殿の傀儡か?
誰だか知らんが、エリアスちゃんのかわいさがわかるとはお前さんわかってるな!!
ああ、彼女は本当に愛らしい。特にこの、猫のような耳としっぽが愛らしい
りんちゃん! お前のお友達は目の付け所が良いぞ!!!
喜びに身体をくねらせる祖父にはさすがに少し呆れるが、彼の柔軟すぎる思考回路はきらいでは無い。
そうこうしていると、どうやら祖父は無事魔物を討滅したらしい。
うひょおおおおお、武器ドロップきたーーー
腕を上げ、叫び、さらにくねくねした後、祖父はようやくコントローラーを置いた。
そのままキャラクターの頭上に離席をしめす印を表示させた後、彼は画面から目を離す。
むむ?
そこでようやく、祖父は私が連れてきた相手がおっさんだと気づいたらしい。
たぶん高校の同級生でも連れてきたにだろと思ったのだろう。
りんちゃん、この方は学校の先生かね?
自己紹介が遅れて申し訳ない。
私はカルロス=ネオ=イグニシアス。
オルギアス国の第54代国王にして、リンネ殿の婚約者である
あー、異世界の人ねー
その説明で受け入れるんかい!
っていうか、婚約者じゃないし
でもカルロスって、りんちゃんが昔すきだって……
あばばばば!
あわてて祖父の口をふさいだが、カルロスはにやけている。
実に腹立たしい。
アレは若気の至りです。っていうか、おじいちゃんもうちょっと他に言うことないわけ?
ちなみに、異世界からこちらはどうやって?
転移魔法だ。なかなかに危険かつ難しい物だったが、リンネ殿にあうためなら安いものだ
命を懸けた愛なんて素敵じゃないかー。おじいちゃん、二人のこと応援しちゃうぞ!
ノリがかるい……
祖父の柔軟なところには救われたこともあるし、そこに頼ろうとは思っていたけれど、こうもあっけなく受け入れられるとそれはそれで困る。
婚約うんぬんはともかく、カルロス元の世界に帰れないらしいの。だからしばらく、ここにおいてもらえる?
この世界のことをなにも知らないことや、住む場所はもちろんお金さえない彼の事情をはなせば、祖父はようやくカルロスをこの家につれてきた理由を理解したらしい。
かまわんよ。無駄に広い家だし、いっそりんちゃんも一緒に……
嫌です
何で俺を見ながら言う
赤の他人、それもおっさんと一緒なんて危ないでしょう?
赤の他人じゃない!一緒に世界を救った仲だ!
カルロスはうるさく吠えるが、私はすべてを無視し、その日は家へと帰った。
問答無用で。
ジイサン若イナwwシカモ、ネカマwwイイキャラシテルw