ナタリーの家に着くと、預言者はナタリーに操られ浮遊状態からソファーにそっと下ろされた。

 そして預言者はふらりと起き上がり、辺りを見回した。

 テーブルの上の大きな籠の中に入った収穫したての野菜と目が合う。

 無意識に手を伸ばし、生のままむしゃぶりついた。

 ナタリーが呆気にとられている間に食べつくし、それが終わると、こてっとソファーに横たわり、眠ってしまった。



 ナタリーは不思議と笑い出す。




全く、世話が焼けそうだね



















  




 夢を見ていた。

 幼い頃の景色。

 師匠に連れられて、町に来ていた。

 そこで目にしたのは、ひとりの少女が “ 神 ” と崇められている姿だった。
 


魔法使い様! 神様!! どうか私たちをお救いください!!

………………





 少女は困惑していた。……ように見えた。




 その時の僕は、遠くからそれを眺めていただけだった。

 だけど、強く印象に残っている。


………………






 すぐに分かったんだ。

 あの娘は僕の“仲間”なんだと。















 それから、あの娘に関して調べだした。

 神と崇められている理由とその能力。

 出生と、名前。

 知れば知るほど、興味が膨らんできた。



……僕も不思議な力を持っている。




 だから、人と交われない。

 だから、僕とあの娘は同じだ。

 だから、仲間なんだ。

 だから、会わないと。





 調べつくしたときには、すでに10年が経過していた。











どうだい? 目は覚めたかい?



 ナタリーが預言者の顔を覗き込む。

 預言者はソファーから起き上がった。


ここは……

わたしの家だよ。あんた、死にかけで森に倒れていたんだよ




 ナタリーが心配して言う。

 預言者は辺りをゆっくりと見回した。

 状況を頭の中で整理しているようだ。


僕…、僕は……

ん? どうした? あんた無意識だろうけど、ここの野菜しこたま食べたからね、体力回復すればすぐに動けるようになるさ

僕は、人を探している




 預言者の言葉に、ナタリーは首をかしげた。

 この森に他に誰か暮らしているような話は聞いたことがない。


……こんな森の中で、誰か暮らしているのかい?

……ここにいると聞いた

誰を探しているんだい?





 預言者はボソッとその名前を呟く。



ナタリー・ローレン













 





 フェミリアは充実した日々を送っていた。

 会いたい人に会えないのはさびしい。


 でもそれ以上に手に入れたものがあった。


じゃあ、行って来るからね

はい、いってらっしゃい




 遠く遠く離れた町で、アルフは新しい仕事を見つけ、フェミリアもようやく庭弄りが出来る自由と時間を得た。


 大丈夫。

 これからもきっと、2人で生きていける。




 フェミリアには確信があった。

 なぜなら、今がとても幸せだから……。







 肌身離さずつけている夢見のペンダント。


 それが今、不気味に光った。








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