* * *
ドルバザレア洋上
* * *
キャッ!
どうした?
シーラ!
お怪我はありませんか?
勇くん愛用のガラスのコップが
急に割れた……。
むぅ……。
不吉な……。
なんで、そんなもん
持ってきてるんだ?
しかし、今の我らには
勇者勇の無事を祈る以外
できることはない。
シーラよ、取り乱さぬことだ。
……はい。
なぁに、大丈夫。
勇ならちゃんとやってるさ。
ありがとう、ポメラ。
………。
勇くん……。
ドルバザレア洋を進む定期船。
シーラさん達の航海は
まだ始まったばかりです。
逃走の果て
* * *
- ウスト大陸 -
ヨーコソ〜
ツギノ街道の
道はずれ
* * *
ヨーコソから北へと一目散に逃げ走った勇者様。
ヨーコソの人々に見つかって
争いになってしまっては、
体を張って止めてくれたトワ兄弟に
申し訳が立ちません。
はぁ、はぁ、はぁ……
もう追手はこないかな……。
森の入口付近で大木の裏に回って
もたれかかる勇者様。
そのまま地面にしゃがみ込みます。
くそっ、なんてこった。
カジノのおじさん……。
俺のせいで……。
もふぅ……。
体力以上に精神的なダメージを
負ってしまったようです。
……浮かれてた。
ついこの前、
ハジメノやセ・カンドが
消されたのに……。
……迂闊だった。
もふ、もふ……
ありがとな、また助けてもらったな。
もふもふ
あの時もそうだ。
『ミナオレノモノ』。
あの呪言が突然現れたんだ。
最近のことを振り返り自戒する勇者様。
それにしても、なんて狡猾なんだ。
おおよそ魔王らしくない。
まるで魔王の参謀の手口のような……。
旅に出てからこれまでの冒険を振り返ります。
それは殆どが罠という罠。
本格的な魔物との戦いと言えるのは
ナゲー運河付近のみです。
勇者様はその罠の特徴を考察します。
落とし穴に落とすかのように
呪言で消失させるやり方。
そして、そのツヴァイ自身は人々を敵に回すわけでなく、それどころか人々を利用して俺を追い詰めてくる……。
それぞれの街は一見、
平和なようだけど……。
立ち入ってみると、
まるで魔物たちの巣窟に
魔物の格好で放り込まれたと言うか……。
何か根本的な軸が
違っているというか……。
ずっとボタンを
掛け違えているというか……。
………!
ふと、何かに気づき
真顔になる勇者様。
……いつからだろう。
勇者様は鼻の下に手を当て、考え込みます。
……いつから……
この状態を作られていたんだ?
アインスタークと戦っていた時……?
アルザレアを救った時?
でもそんな感じはしなかった。
それ以降も平和だった……ハズ……。
ツヴァイが現れるまで
平和だった…ハズ……。
勇者様は記憶をたどり、
何かが変わった時が無いかを思い出します。
……しかし、
ダメだ、全く検討もつかない。
残念ながら勇者様の記憶の中には、
違和感の開始点が見つかりません。
……でも……これは恐らく、ツヴァイ討伐のヒントにつながるハズだ。
これまでとの考え方を改める勇者様。
戦っている相手は
アインスタークではありません。
それは高度な頭脳戦と心理戦を展開してくる
まだ見ぬ魔王ツヴァイ。
次第に夜の帳が降りる中、
勇者様は日が沈む方向を眺めます。
……シーラは無事だろうか……。
もふ……
離れているが故のもどかしさ。
名状しがたい恐怖は、
勇者様の心の隙を
絶え間なく狙い始めました。
つづく
【勇者勇の装備】
レベル :17
めいせい :165
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :銀の額当て
たて :なし
どうぐ :野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×2
淡水ザメの煮凝り
淡水ザメの骨
淡水ザメの牙
黒王の羽
いつもの額当て
王の冠
カジノコイン×2560
なかま :もふもふ
とくぎ :ファイアブレス
トキシックブレス
釣り
じょうたい:カジノ破壊の容疑者、逃亡者
【シーラの装備】
レベル :11
めいせい :130
ぶき :いつもの本
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの飾り
たて :なし
どうぐ :やくそう×95
イーサ薬×9
乗船券×4
おみやげ×99
ガラスの破片
なかま :戦士ポメラ
大魔導ソルフェージュ
コボルト
とくぎ :しょうかん
値切り
冷やかし
虫の知らせ
じょうたい:パーティーリーダー、航海中