僕は慣れないセリフにしどろもどろしながら、お客様を店内の空いてる席へ誘導した。
なぜ僕がこんなことをしているかというと、単純にバイトだからである。
夏休みを迎え、美術部では僕も含めて三年生のほとんどが部活を引退した。
ちなみに飯塚さんは三年生になってすぐに部活を引退しており、少し遠い地域にある美大受験のための予備校へ通うようになったらしい。
僕は卒業後、IT関連の専門学校に通うつもりでいた。
僕の成績はあまりいいとは言えないので、無理に大学へ行くより専門学校の方が後に就職もしやすいと考えたのだ。
僕の志望校である専門学校は入学試験を行ってはいるものの、大学と比べてかなり簡単なものだと聞いている。
進むべき道が一本になった僕は、周囲の進路に向けた慌ただしさを尻目に余裕をかましていた。
そんなときアキオ君の誘いを受け、近所のファミレスでウェイターのバイトをすることになったのだ。
バイト初日。
アキオ君に連れられて従業員専用の裏口から中へ入った。
お風呂のタイルを敷いたような床に、打ちっぱなしの壁。
脇には雑に置かれたグラスのラックや洗い物を運ぶためのワゴン。
表側のお洒落なイメージとは異なり、まるで銭湯やお手洗いみたいな廊下だ。