第8話 探索開始
前日にセットした、アラームが鳴る。
普段自宅なら、なかなか一度で止められないアラームを一度で止め、顔を洗い、朝食会場に向かう。
部屋から出ると、清水も偶然?部屋から出てきて、僕と目が合い近づいてくる。
第8話 探索開始
前日にセットした、アラームが鳴る。
普段自宅なら、なかなか一度で止められないアラームを一度で止め、顔を洗い、朝食会場に向かう。
部屋から出ると、清水も偶然?部屋から出てきて、僕と目が合い近づいてくる。
お早う、松君、夕べは、良~く眠れた?
いや~初めて外国へ来たんで、興奮してあまり眠れ無かったよ!だからちょっと眠い
まあ、それ以外にも昨夜いろいろあったらかな、清水はどこまで知っているのかな?
恐らくこいつの事だから全く知らないって言うことはありえないと思うんだけど、いや、う~ん
ん?松君何を考え込んでいるの?
いや、何も、何でもないよ
朝食はバイキングスタイル、もちろんセレブ専用のバイキングの為一般用とは別の場所にあった。
はなさんと、梶本さんとは部屋が別のフロアになっているため朝食会場で落ち合う事になっている。
会場に到着すると、僕を見かけたはなさんが、ちょっと顔を赤らめて、それを誤魔化すように話しかけてくる。
いや~本当に香港って日本と全然違うね~すごい~見て!昨日リムジンから見た横になが~い あの看板なんて、日本じゃありえない!ね~見てよ、バスの屋根が看板のぎりぎりのところをくぐっている感じがするよ~ふえ~
さりげなく、でもちょっと遠慮気味にはなさんは左手を僕の肩にかけて、看板の方向を指す。
その時、遅れて梶本が会場に入ってきた、かなり眠そうだ。
おはよう~ああ~やっぱりだめだ朝は、時差があっても無くても眠い~
はなさんはびっくりして、パッと僕の肩にかけていた手を離すと、梶本さんのところに近づいていく。
おはよう~怜奈、でも良く起きられたね~
清水の口が一瞬緩んだ、
(また、朝からはなさんをおちょくる気だな)
そうだね、田中!田中の実家の家業も香港式の看板に取り替えたら?そうしたら少しはお客さんも戻るかも ハハ~
ボコッ!
その瞬間、清水がうずくまり、他の宿泊客が数人振り返り、失笑が少しだけ起こる。
ううう、田中はな棒くん!トレイで殴るのなし!トレイは!
何故、ここまで全力で、おちょくりが好きなんだあんたは、っていうか。はな棒ってどういう意味?いや、もっと気になる事もあった、そういえば
あの、はなさんの実家の家業ってなんなのかな~って思ったんだけど
その瞬間2人が同じ言葉を発した。
えっ!
田中は顔を赤らめて、フリーズしている。
えっ!
梶本さんは、少し驚いた表情をしている。
いやあ~あのう、その、りょかんぎょう
へえ~そうなんだ、今は外国人観光客も増えて大変でしょう?
ま、そだね、ハハハ
梶本はひとり事をごにょごにょ
え、なんで?コーキ今まで、あんな呼び方してなかったけど、はなさんって?どうして?
確かに旅館業だね、あああ、それに昨夜あったこととか、あああ全て暴露してしまいたい、でもそんな事言ったら
清水さん、表情がダークサイドに落ちてます、怖いです
食事が終わり、僕と梶本さんがコーヒー,はなさんが緑茶、清水が紅茶を飲んでいると、清水が切り出した。
さあ~て、来週のサ○エさんは、じゃなくて、ええと、
……
清水さん、切り出しに、滑るのってキツクないですか?
ゴホンと咳払いをひとつして、清水は話し始める。
今日はどのようにしてこの香港にいる白石を探すかを決めるかだけど、昨夜この件に関して考えました。
どうでしょう、この香港って狭そうに見えるけど、東京都23区のほぼ半分の面積なので、狭そうですが、一人の人間を探すのは結構広いです。そこで、この4人を2組のチームに分け、白石製薬グループの傘下に入っていないまたは関係があまりない、日系高級ホテルや日系施設から探し始めるというのは、どうでしょう?
おお~
僕が驚きの声をあげる。
なるほど~ばか海はこういうひねくれた発想だけは天下一品だね~
う~ん、清水君、このアイデアにかかった時間は?
梶本さんが問いかける。
えっ、、実は昨夜シャワー浴びてた時かな、10分くらい、ちょっと疲れてて眠かったから、そんなに時間使えなかったよ
(僕は驚嘆の声をまた発した、普段の爽やかさに加えて、本気だすと、すぐこれくらいのプランを簡単に出しちゃうすごい奴、そういう奴だよ、すごいよ清水さん!服装のセンスは無いけどね!)
彼女にあったことあるっけ?
はなさんが続ける。
いやないんだよね、だから事前に佐藤先生経由で、いくつか彼女に関するデータを貰ってきた、足りないものは自分で集めてみた
アイパッドを開くとそこには、彼女の生い立ち、今までの学歴、病歴、趣味、食事の嗜好好きな音楽等々、事細かく記載され、そして、写真も子供時代から現在までのものが取り込まれていた。
また、白石製薬グループ以外のセレブが行きそうな場所のリストも用意されていた。
すごいね、まるで、スパイみたいだね~清水君
梶本が関心している、
(いやっ本当、こいつスパイなんだよ多分、大学出たら、CIAに行くのかね?)
子供の頃の白石さんの写真を見る、あどけない表情の中に素直な笑顔があった、嘘偽りの無い笑顔、これは、どこで撮られたのだろうか、キリンのかなり近くで、レンジャーの人と家族で立っている、雄大な景色の中で無邪気に笑う白石。
気になるのかい?
うん、他の写真と比べて、この写真の白石さんの表情は本当だなって、他の同級生との写真や、恐らくセレブの人と一緒の写真は作り笑顔だよ
そう言うと、
そこは、ケニアにある国立公園の一角を写したものだね、因みにこの写真は、彼女が有名私立小学校へ入学する直前にお受験合格のプレゼントとして、行ったそうだよ。
プレゼントって言うことは、彼女は動物が好きって事だね
そうらしいね
清水君、
何?
君はいろんな外国にいた事があるんだろうね、
いや、ネットとかの知識だよ
(どうして、嘘をつくんだろう?)
僕は話の雰囲気を変えるため、他の話題に切り替えた。
ところでさ、さっき言ってたグループ分けだけど、どうする?
まあ、それも考えたんだけどね 松君、どうやら、君は広東語がいけるみたいだね
あっそうだね、うん、親父のところの建設会社で、出稼ぎみたいな人がいて、その人が親切で、仲良くなって教わったんだ。少しだけどね
そうか、俺は少し英語ができるから、どうだろう、語学ができるほうが女子の一方と組むというのは
はなさんが続ける、
そうだね、正直私は英語苦手だし、怜奈もそうだったよね?いくら電子辞書あっても、語学できる人と組んだほうがいいよね
まあ、そうだね~
そこで、俺と梶本さん、松君と田中との組み合わせはどうだろう?
えっええ~どうしてその組み合わせなんですか~、私と、松君のペアでもいいじゃないですか?理由がいまいち分からないですよ!
理由はいくつかある、一つは松君は方向音痴だ、僕と組めば語学ができるもの同志で、偏る、そして悪いけど、梶本さん
あなたもそうだったよね。方向音痴の松君と君を組み合わせたらどうなるか、香港で迷子だなんて、人探しどころじゃなくなるよ。
ええ~なんでそれも知ってるの~
そっそうだね、私英語だめだけど、地理は得意だし、地図見るのも比較的得意かも
とはなさんが言う。
俺は前香港に短期間いたことあるから、そこそこ土地勘ある、この組み合わせがベストだと思うんだ
うううう~しょうがないか~~
梶本さんは本当に残念な表情で悔しがった表情をしている。少し可愛そうな気もするが、ごめん、でも今回はそういうことで香港に来てるんじゃないんだよ。
じゃあ、食事が終わったら各自一旦部屋に戻り、その後、一階のロビーに1時間後に集合でいいかな?
そう決めると各自の部屋に戻っていった。
一旦部屋に戻り、着替えを済ませて、日焼け止めを塗っていると、梶本さんから電話がかかってきた。
ちょっとロビーまで来てくれないかな?
いいけど
じゃあまっている、急いでね
ロビーまで行くと、梶本が入り口付近で手招きしている、ホテルの入り口から出ると
ちょっと、あっち向いて、
え?
いいから!
正面玄関の方向に振り向くと、、肩を思いっきり押され、ホテルのタクシーに乗り込まされた。
なに?え!
意味不明状態の僕
梶本さんは不適な笑みを浮かべて、
これから今日はコーキは私と組んで、白石さんを探すの!
えええ!!!
なんて強引!う~ん経営者のDNAか!いやそんなこと考えている場合じゃない。
これはまずいよ梶本さん、勢いで、タクシーに乗っちゃたけど、清水が言ったとおり、これからどうするの?僕スマホ以外財布も何も持ってきていないし、海外初めてで、方向音痴だよ、梶本さんも、あんまし得意じゃないよね、
この前梶本と、サイクリングした記憶がよみがえってくる、星がや運動公園の森林コースは1周20分もかからないコースだったのに、梶本さんが飽きたから、ショートカットしようと言い出し、コースを外れいつの間にか、大宮区の埼玉スタジアムに到着してしまった、そして、そして戻れたのは、16時だった。
大丈夫、その為にパパの会社のエンジニアに、特性白石追跡アプリ香港バージョンβ準備してもらったんだから、
嗚呼、パパの部下さん、おそらく徹夜で作ったのね、合唱。
まあ、それは、良かったね、でも、何処から探すの、
フフン、そんな事この端末に聞けば良いんだよ、この端末は、白石菜月がこの前録音した以外の知人、友人との過去のメール、チャットデータが全て入力されていて、ビックデータ化されたものが、アクセス出来る様になっているの、
(すげ~さすが、清水が頼りにしている情報屋)
そうなんだ、僕には全然わからないや、ごめん、
まあ、簡単に言うと、彼女の趣味、思考なんかを記憶して、そこから、何処にいくか確率で予想してくれるの、まあ見てて、
そう言うと、アプリを起動し、白石行動予想と書かれたボタンを押した。画面には、数秒で、幾つかの、観光スポット、中華料理の店が表示された。
観光スポットかあ、恐らくもう随分ここに来てから日にちが経っているから、どうだろう、、それにこのレストラン僕みたいな庶民向けぽっいんだけど
大丈夫!梶本製作所のシステム開発部のエリートグループに作らせたの。さあ、行くよ。清水君とはなあのグループより、先に見つけてやるんだから、
いやぁ本当は、僕ははなさんとのペアだったのに
そんなことを思っていると
僕のスマホに電話がかかってきた、出るとはなさんが早口で話し出した
こうくん、どうしてロビーにいないの?今どこにいるの?具合でも悪いの?
いや~梶本さんが、一緒に探そうって、タクシーに乗せら
そういい終わるやいなや、梶本は僕のスマホをひったくるように取りあげた、その後、僕のスマホからは
ええ~それどういうこと~?
まあ、彼女の行動を予測しなかった僕のミスだな
裏から小さくつぶやく清水の声が聞こえてきた
悪いけど、さっきのチーム決めには納得できない。ちょっと公平さが足りないと思う、だから 今日は私とコーキが一緒に探すことに決めたから!私、負けないから!
そう言うと、電話を切って、電源を切ってしまった。
これは勝ち負けじゃないと思うんだけど
これは悪いけど預からせてもらうから
ええ~そんな~、どうして、そんな事するの?それに梶本さん、これは白石さんを探し出す生徒会2次活動の一環なのに、そんな
なんで?
鋭い声で梶本さんが言った。
え?
なんで!はなあの事は今まで田中さんって呼んでいたのに、今朝からはなさんって呼んでいるの!あたしの事も怜奈って呼んでよ!
えっ?いや、そんな、、いきなり呼び捨てなんて、
それとも、昨夜何かあったの?
(鋭い!!女性の勘って怖い!っていうか、僕は、梶本のなんなの?なんで僕はこんなに責められているの訳分からない~)
いや、そんな事ないよ
じゃあ!私も、呼んでよ、名前で!
分かったよ、それじゃ、怜奈……さん
怜奈でいいの!
分かったよ、怜奈……さ
ギロッ!
ひぃっ!
それから僕たちの乗ったタクシーは、30分ほど走り、一番可能性が高いとアプリが判断した
黄大仙 (ウォンタイシン)という有名な寺院に到着した
ひえ~カラフルだね~、日本とは違って、色使いが派手派手だね~
本当ね~
でもこんなところ、普通、観光客が初日にこない?
そうだね~でもひょっとしたら、いるかも知れないから探そうよ
30分後
どこにもいないね~
う~ん確立90%だったんだけどな~
いろいろ、詳しく探し回ったが、白石さんは見つからなかった。
その時一台のタクシーが到着しはなさんと清水が降りて、こちらに向かってきていた。
怜奈はそれに気づくと僕の手を引っ張り、寺院の裏手まで走り出す。
ちょっと、なんで逃げるの?
いいから!
裏手でじっと様子を伺っていると、清水とはなさんは、
でも、清水、どうしてここだって分かるの、あの二人が
うん、まあなんと言うか、勘?
(い~や絶対違うから、それ、何かあるぞ、あいつの事だから、)
そんな事思いながら、清水達に手を振ろうとすると、
梶本が僕の手を思いっきり抓ってくる。
いて!なにやってるの、怜奈さ
しぃ!見つかっちゃうじゃないの
へ?何言ってるのこの人?
ねえ、何でこんな風に隠れる必要があるの?
うるさい!静かにして、裏門に回るよ、
僕は、手を引っ張られ、裏門まで連れてこられた、そこにちょうどタクシーが停まって、客待ちをしていた。
あっタクシーがいた、あれに乗ろう、早く!
分かったよ、ちょっと押さないで、
その時、背後からはなさんの声が聞こえた。
あっいた~、こうくん、玲奈、何処に行くの~?
だけど、僕はまた、タクシーに押し込まれてしまった。
ちょっと待ってよー、ああ~行っちゃった~、も~う何考えてるのか全然わかんない、
困ったもんだな、梶本にも、(しかし、それだけ昨夜の効果が出ているって事か、ちょっと困った状況だけど、面白い!)
フフフ、
(なにこいつ、キモッ!、どうしてこの状況下で笑えるかね~)
タクシーの中で、怜奈はうっすらと出た汗をコンパクトを使って直していた。
やった、どうやら追手を捲けたようね、
少し勝ち誇ったようにつぶやく。
いゃーそういう事じゃ、
僕がそう言いかけると、梶本は、遮り、
これは私たちのチームワークが試されているの、だから、次の目的地に迅速に行くの!
あの~
何、どうしたの?
いゃー運転手さん、インド人ぽいんだけど、僕広東語出来るけど、英語はダメだよ、
えっなんで?なんで香港にインド人の運転手がいるの?
知らないよ~
信じられない!じゃあ、インド語で話しなさいよ、
そんな無茶な、
もうしょうがないわねえ、それじゃあ、直接目的地を見せたほうが早いだろうから、
と言ってiPadの特性ソフトを起動させようとする、
あれっ?おかしいな、固まって動かない
まあ、βだしね。しょうがないよ、清水達と合流しようよ、
嫌!そんなの有り得ないから!
顔面真っ赤になった怜奈はスマホを取りだし、電話をかけ出した。
はい、梶本です只今、電話に出れません、発信音の後にメッセージをお願い致します。
あれ、パパ出ない、ああ~そうか、午前中はほとんど会議だった、よーし、
そう言うと、別の番号に掛け直した。
はい、おはよう御座います。梶本製作所秘書室です、
すいません、父を出してもらえますか
は?恐れ入りますが、御名前を、
と言いかけると、
はぁ?あなた、新人?もういい!、秘書室長の吉田さん出して、
しばらくすると、年配の男性に電話の声が代わった。
玲奈ちゃんおはよう、元気かい?
吉田さん、久しぶり、今時間無いから手短かに、この前システム部の人に香港ナビゲーションソフト作ってもらったの、それが、動かなくなってしまったの
ああ社長がいろいろやってた奴かな?
これが無いと、私と大切な人が困るの、だから至急直して欲しいの!
いやっ、玲奈ちゃん申し訳ないけど、今会社で大事なプロジェクト抱えてて忙しいんだよ、怜奈ちゃんには社長が本業に取り組める環境に戻してもらって本当に感謝している、だけど今は
吉田さん、何を言ってるの、これは、業務命令よ
はぁ?
あなたも秘書室長なら、分かるでしょう?この前の役員会議で私人事部部長兼社長補佐に任命されたの、だから私の言葉は社長命令と同等だから、至急この案件にシステム部のリソースを割り当てなさい。アップができ次第連絡して。ちなみに人事権の一切は私が握っているから、お忘れなく!
そう言って電話を切った。
(うっわ~清水とはまた違った怖さがあるね~怖いよ、こわ~い 怜奈、さん)
さてと後はこの時間をどうするかね、よし!
そう言うと、後は身振り手振りの、玲奈さんジェスチャータイムが始まった、ガイドブックも無いため、とりあえず、レストランの名前を言ってみる、通じたかは、分から無いけど、タクシーは、街中を走り、一件の小さなインド料理店に到着した。
店からはインド料理の独特なにおいが漂って来ており、カレー好きの僕にとっては嬉しい瞬間だったが、ここに白石さんっているのかな。。。。
怜奈も一瞬戸惑った表情を見せたが、半ば意地で店内に入っていった。
幸い店員には香港人もいて、僕はとりあえず、軽く説明をしてスマホにダウンロードしていた、白石菜月の写真を見せてみた。
しかし、やはりというか、残念ながら店内に彼女を知っているものはいなかった。
店に入ってしまった以上、何も頼まない訳にはいかず僕たちはミルクティーを頼んだがむちゃくちゃ甘いので、怜奈に全て飲んでもらった。
怜奈がミルクティーを飲み終わったのを見届け、僕は席を立ち入り口に向かおうとすると、怜奈は僕の腕を
捕まえた。
正面入り口からでるのは、危険ね
ええ?何を言ってるの?そんないるわけ無いよ
じゃあ、すこしだけドアを開けて見てみなさいよ
え?そう?でもまさかね
そう言いつつ、少しだけドアを開けると
えええええええええええ!!
ちょうどタクシーから降りてきたのは、清水と、ななさんだった、ただ
この店までは突き止められてないようで、きょろきょろ辺りを見回していた。
やっぱり!
背後から怜奈がつぶやく。
(うわっ近いよ!)
よし、裏口から出るから、店員に裏口から出させてもらう様に交渉して!
あっう うん
(え~と?なんで言いなり??)
その後、店員に頼んで店員用裏口から出してもらえることになった。
タクシーが裏口につけられ乗り込む時、
あっいたいた~もう怜奈、こんな事やめようよ!
3車線道路の向かい側に清水達がいる。
本当にしつこい!ほっといてよ!
怜奈が怒鳴る。
タクシーに乗り込もうとする時、ついにはなさんが切れたのか、
もう本当に待ってよ!怜奈!いい加減怒るよ!
はなたちこそなんでそんなにしつこいのよ!
それは白石さんを見つけるために、ここにいるからだよ
今見つけてる、だから、はなも清水君と探してよ!
もう、わからずや!
うるさいな!ほら行くよ!コーキも乗って!
また、半ば無理やり押し込まれてタクシーに乗り込み、車は走り出した。
でっ、どうするのこの後、まだ、ナビ復活できていないんでしょう?
そうね~じゃあ、、とりあえずセレブな10代に人気がある店が多い地区に向かってと伝えてよ
うん、わかった
僕は、そう伝えると、香港人の運転手は
あんた ヤップンヤン(日本人)?広東語うまいね~、金持ちの若者に受けがいい店があるところ、そうだな?尖沙咀東 (チムサーチョイイースト)かな。。。
怜奈、運転手さんチムサーチョイ イーストってところが、若者に受けがいい店があるって
じゃあそこに行くように言って
タクシーから降り立つと、そこには今まで見てきた香港とはほんのちょっとだけ、異なる景色が広がっていた。比較が難しいけど、日本でいう
横浜みなとみらいっぽくも見えなくない。。。
運転手さんに教えてもらった、セレブご用達の店へいくつか行き、白石の写真を見せたが、しかし、収穫はゼロだった
やっぱり、なかなか、見つからないね、困ったな
そうね~まあいいじゃない最悪見つからなくても、大体そんな自分勝手な奴ほっとけばいいんだよ
いや、それじゃ2次活動的にまずいんだよね、僕もこの活動成功させて大学行きたいし
え~なんだ、そんな事で清水君に付き合っているの?
それ以外にないよ~まあ佐藤先生に半ば無理やり参加させられたっていう面はあるけど
じゃあ~学費が問題なければ、こんな事しなくてもいいのね
は?
いいの、いいの、こっちのこと、気にしないで~さあ!探そうよ!
(はなあ、ごめん 悪いけど、卑怯な手を使うかも。。)
その後、チムサーチョイイーストで有名なイギリス人が経営しているレストランに行ってみるも
白石さんらしき人は見つからなかった。
がっかりして、レストランから出ると、怜奈は辺りをきょろきょろ見回し、
やっぱり!
と言い、
清水達が乗ってきたタクシーがこちらに向かって来ているのを、直ぐに見つけ出した。渋滞にはまってなかなか近づいて来れないらしい。
タクシー捕まりそうにないな
コーキ、走るよ!
えっ?
僕達はその後、タクシーが来た道と反対方向をひたすら走り、息が切れるまで走った。
タクシーは香港名物渋滞に巻き込まれていて、追いつけないらしい。
清水達も、タクシーから降りてきて、走ってこちらを追いかけてきた。
ハアハア ゼエゼエ 怜奈、もう僕走れないよ
この時僕はまだ、怜奈が中学の時陸上県代表に選ばれた過去を知らなかった。
もう~このビルに入って敵をまた煙に捲く!
え?なにこのビル?重慶大厦?チョンキンダーシェ? ええと大厦はマンション?なんか気味悪いビルだよ~止めようよ~
いいから!早く
その薄汚いビルに入ると、そこはまるで、ゲームに出てくるダンジョンのような雰囲気を醸し出していた。まるで、RPGゲームの中に出てくるような人々が買い物を楽しんでいるようだった。
それになぜかは分からないけど、香港人もいるけど、大勢のインドっぽい人達、何ここ?変な帽子かぶっているよ、トルネコ?
マンションなのに中に店がたくさんあるって一体、なんだここは??まるでゲームのように 防具とか武器とか薬草とか買えそう。
怪しすぎる。
変な漢方薬みたいな、訳わかんない臭いもしているし~関口なら相当喜ぶだろうけど、僕の趣味には合わないな
その後5分後、遅れてきた二人はチョンキンマンションの前に到着。
ねえ清水!私たちもこの中に入ろうよ
いや、ここは駄目だ、ここは止めといたほうがいい
どうして?
ここは地元の人でもあまり深くは立ち入らない未知の領域、チョンキンマンション、その昔ある旅行者が立ち寄り遭難した伝説があるとか、ないとか、一旦入ったら、よほど熟知していないかぎり出ることはできない!
そんな馬鹿な~あり得ない
いやっ、ここは、この正面出口でしばらく待とう、しかし二人とも究極の方向音痴、心配だ
清水がこんなに心配している顔初めて見た。
その頃、僕と怜奈はそのチョンキンマンションの中を奥へ奥へ進んでいた。
なんだか、インド人ばっかりで、すこし怖いよ~それにすごく注目されているよ、僕たち、早くでたいけど、でも正直言って、ここがこの建物のどこら辺か全く分からないよ~
おまけに、香港人じゃない人ばかりで、広東語通じないから、道も聞けないし。。どこに行っていいかまるでわからないよ~。だから、方向音痴なんだから、止めとこうって言ったのに
うっさいね~!黙ってついて来てよ!
その後、僕らは1時間程度、この迷路のようなチョンキンマンションを彷徨い、とうとう元の通路がどこか全く分からなくなってしまった。
あああ~とうとう、迷子になっちゃった、もういい加減諦めて、清水達に助けを求めようよ~
なんで、コーキはいつもそんなに弱気なの!清水君にばっかり頼って悔しくないの!もっと強くなってよ!
そんな勝手な事ばかり言わないでくれよ!大体、怜奈は僕のなんなんだ?
思わず、今言うべきではないことを言ってしまった
怜奈は、眉間に皺を寄せて、拳をぎゅっと握っている
そうだよね、あたしバカだよね、コーキの気持ちも聞かないで、勝手に……ごめん
そう言うと、怜奈は走り出した、追いかけた僕は通路がすべり易くなっていのに気づかず、転んでしまい、見失ってしまった、起き上がるとそこは魚屋のようだった。
その後、周囲を探すが、僕は怜奈を見つけることができず、スマホも持っていかれてしまい。何も持たずに、一人チョンキンマンションの中に取り残されてしまった。
何故こんな事になってしまった、これ何のバツゲー?
一人寂しく歩いていると、日式漫畫喫茶と書かれた看板を見つけた。おお~日本の漫画喫茶だ~あそこなら助けを呼べるかも。
しかし、店内には日本人は一人もいなさそうだった。
僕が呆然としていると、香港人の店員に、
今満席なので、相席でも宜しいでしょうか?
と言われた、さっきまで、玲奈を追いかけていたので、喉がカラカラだったし、もう12時近くでお腹も空いてきた、何か食べておいたほうがいいなと思ったので、広東語で
相席でいいです、アイスコーヒーとメニューを頂けますか?
と思わず言ってしまった。まあいいか、最悪店員さんに事情を説明して、後で電話を掛けさせてもらおう。
余り相席は好きじゃないけど、金髪の男の子が入り口側の席に座っていたので、僕は英語が分から無いので、
ハロー失礼しまーす
とだけ小声で言って向かいの席に座った。
男の子は、ビックリした表情でこちらの顔を伺い、
え、あなた日本人なの、今そこで、店員と広東語で話していたけど、広東語どこで覚えたの?
えっ女の人?っていうか日本人なんですか?てっきり白人の人かと、うん?この声、どこかで聞いたような、あの、ひょっとしたら、人違いだったらすいません、白石菜月さんですか?
目の前の白人の男の子と思われた女の子は金髪のかつらをとって、僕を驚きながら見つめた。
えっ?あなた、そうかぁー祖父に雇われた人?でも、どうして香港側の方に来るって、知ってたの?
いやっ、僕は同じ高校の生徒会で、さ、佐藤先生に頼まれて。
ええっ?生活指導の?ああ~なるほど、パパが理事会動かして、でも、まさかここまで追いかけて来るとはね~ちょ~うざ!
白石さん、ご家族が、心配しているよ、それに学校のほうもこのままだと
いいんだ、もうそんなの、どうせ戻ったって、医学部に入る為の受験勉強だけなんだもん、私は医者になんかなりたくない!
その表情には、変えがたい信念が現れていた。この決意を変えるのは無理なんじゃないか、そう思った。
どうして?
えっ?
どうして、おじいさんや、お父さんは、白石さんを医者にしたいの?
それは、まあ、殆ど他人のあなたに言っても構わないか
それは、パパがって言うか、祖父の代からの悲願
悲願?
そう、私の祖父白石安次郎は医師になりたかったの、でも、受験に失敗して薬学部に入り、薬剤師として実績をつむ傍ら、病院に営業をして、販路を作り今の白石製薬の元を作ったのよ。でも、医者の夢を諦め切れなかった、だけど息子である私のパパも、そこまでの学力がなかった、それで、この私に自分の夢を押し付けてきたの。いつも思ってた、私は、パパとママの間に、白石家に生まれたくて生まれたんじゃないのに、でも、それも自分のわがままだって分かるの、だからこんな気持ちになる自分が、嫌い。
僕は何も言えなかった、お袋が、親父の悪口を言う時の感情が頭によみがえった、俺は親父とお袋の間に望んで、生まれてきたんじゃない! 何か立場は全く違うけど、目の前に座っている白石菜月は、僕と同じだ。そう思うと、彼女にかける言葉がなくなってしまった。
じゃあ、私は、戻るから
しばらく、そのまま、僕は動けなかった。
そのあと、店内から清水にでんわをかけ迎えに来てもらった。
こうくん!
はなさんは、泣きはらした後らしく、僕にしがみついて来て、
良かった、本当に良かったよ~
と言ったきり、何も言わなくなってしまった。涙と鼻水で僕のシャツはぐちゃぐちゃになった。
梶本は先に帰ったよ、松くんに謝っておいてくれだって、自分で謝れば良いのに、許してやってくれないか?
そんな良いよ、玲奈だって、白石さんを探したいっていう、熱心さが、空回りしただけだと思うんだ。それに、ビックリすると思うけど白石さんに会えたよ!
えっ!
ただ、ごめん、彼女の事情をいろいろ聞いて、説得できなかった。
そうか、残念だな、まあしょうがないか、しかし白石さんがこんなとこにいたとは。リストにはチョンキンマンションは入ってなかったんだがな。
多分偶然だったと思う、あと彼女変装してて、金髪のかつら、それにカラコン入れてた、すごい色白であの髪型だと、パッと見日本人には見えにくいよ。
あれじゃ、多分リストのところで会ってもなかなか気づかなかったと思うよ。
そうか~、こーくんの事もばれっちゃたろうから、変装も変えちゃうだろうし、困ったな、これから何処を探せばいいんだろう
恐らく、多分だけど
え?白石さんにどこに滞在しているか聞けたの?
いや、聞いてはいないけど、彼女と話しててなんか、気になる事があって、それが自分でも引っ掛かって分からないんだ
彼女との会話を思い出す。
えっ?あなた、そうかぁー祖父に雇われた人?でも、どうして香港側の方に来るって、知ってたの?
いやっ、僕は同じ高校の生徒会で、さ、佐藤先生に頼まれて。
(香港側の方に来るって?側っていう言い方って香港に滞在している人が言うか?それに、、)
じゃあ、私は、戻るから
(戻るって?日本へ?いやそれはあり得ない。)
清水、
なんだい、松君?
恐らく、もう既に香港やマカオの国際空港や、香港と中国の検問所には白石製薬に雇われた人が見張っているんだろうね。目立たないように
そうだね、よく分かったね。最悪僕らの計画が全て失敗した時を考えて、他の国へは出国を食い止めたいからね
(勘で言ってみたけど、やっぱりそうだった!怖い~~)
彼女は僕との会話の中で、自分が香港側に来ているのをなんで分かったと僕に聞いて来たんだ、そして喫茶店を立ち去る時、戻るからとも行った。この時彼女の表情に嘘は無かったと思う、
そうか、でも白石製薬の見張りがある中国側の検問所や、空港へは行けない、だからあとあるとしたら、
そう、香港の隣、マカオだよ、あと、これも推測だけど、恐らくマカオでも特に静かな場所にいるんじゃないかな
どうして、そう思うの?
はなさんが聞いてくる。
思ったんだ、彼女自分を変えたくて、無理してこんな外国に来たんじゃないかな。でも自分の好きな事を変えるなんて出来なかった。だから、しばらくしたら、日本に帰りたくなる、知り合いも誰もいないしね。
でも、日本にいると、医師になる為、医学部へ入るための勉強が待っている。。だから、せめてこのあたりで、本当に自分が好きな場所に逃避しているのだとしたら、彼女と喫茶店で合い席になった時、本を読んでいたんだ
僕はスマホを検索して二人の目の前に画面を見せた。
そうか、香港と違ってマカオはポルトガル領だったから、教会や歴史的な史跡が多くあったり、世界遺産も多くあるから、香港よりかは静かになれる場所が多いかもってことだね、それに彼女の読んでいた本がこれなら、僕も
思い当たる場所があるよ。
ただ、僕も彼女の読んでいた本を見ただけなんで、正直自身はないし、旅行ガイド誌とか、地球の歩き方くらいしか知識がないんで確信は無いんだけど、恐らくその場所なんじゃないかな?彼女がいるのは。。
だけど、清水は相変わらず、海外について詳しいね、この前遊園地に行った時も、海外の食事マナーや文化にやたら詳しくてびっくりしたんだけど。。。香港以外でも、海外で長く暮らしてた事とかあるんでしょう?
え?いや、俺も君と同じで、本の上の知識だよ。。。。
(悲しそうな表情を一瞬見せた、手の拳を一瞬握り締めた、また、嘘をついている。清水にとっての海外での経験は嫌な思い出だったのかな、まあ、今は白石の事が優先だな)
その後、ホテルに戻ったのは、17時だった。
夕食まで時間が少しあるので、僕は怜奈の事が気になったので、部屋に行ってみた。
部屋にはいなかった。
だめだ、怜奈 部屋にいないようだ、ホテルのフロントの人も帰って来てないっていうし。まさか!自分で探しにいったんじゃないのかな?
どこに行ったんだろう
心配そうにはなさんがつぶやく。
とにかく、こうなったら
清水はipadを取り出しアプリを起動した。
あああ!!!それは怜奈のお父さんが作ったソフトじゃないか~
いや~知って欲しくなかったな~これだけは、そう、事前に梶本さんが何か用意しているのは知っていたんだ、だから怜奈のお父さんに頼み込んで彼女のipadにGPS組み込んでもらって、僕にも同じソフト入れてもらっておいたんだ
え?まてよ、ひょっとして、あれ?なんかひっかかる、あああ!ひょっとして彼女のアプリがフリース゛したのもお前の仕業か!!
(この野郎~一瞬微笑したな!確信犯です!お前のせいで、俺はチョンキンなんとかの迷路に!!)
うわ~ゲス海、改めて軽蔑するわ、その根性~
はなさんが目を細めて言う。
その後僕達は梶本さんの端末に仕込まれたGPS情報から、再度タクシーに乗り込んだ。僕達が目指したのは、ビクトリアピーク 香港で夜景が一番綺麗に見える山だった
いた!
はなさんがつぶやく。清水が超小声で話す、
よし田中俺達は帰るぞ
えっ何言ってるの?あんたバカ?
ここは松君に任せるべきだろう~その方が、スムーズに進む気がする!
う~~~んしょうがない、分かった!
じゃあ、こうくん、怜奈の事頼むね、あたしは……じているから
え?帰っちゃうの?僕一人で説得するの?
説得じゃないよ、慰労の言葉だよ、お疲れ様ってね
分かった
そういうと、僕は怜奈の方に歩いていった。
怜奈!
コーキ来てくれたの!良く分かったね!でも、ごめん、いなかったんだ、白石さん。アプリが復活したからここ以外にもいろんなところ行ったんだけど。ごめん、みんなにも、コーキにも迷惑かけて
(いや~半分は当たっているけど、半分はあいつのせいだから、でもこれ言っちゃうと余計話がおかしくなりそうだから言えない!!あとで覚えてろ~清水フフフ)
帰ろう、清水も、はなさんも心配しているよ
本当にごめん、本当にありがとう、あとコーキとこの夜景見れて良かった。もしよければだけど、これからも宜しくね
うん
夜空に輝く香港の夜景を山頂から眺めていると、今日あった事がちっぽけに思えてくる。それくらい最高だった。明日、マカオでなんとかしたいな、そう思った。