翌朝、僕達は香港からマカオ行きのフェリーに乗船していた、船が動き出す。フェリーは朝もやの香港を出発した。

あああ、もう気持ち悪いうえ~

僕は三半規管が弱い、この前の遊園地のまじっくじゅうたんが強烈にフラッシュバックする!どうしてこういう時に限って思い出してはいけないものを思い出してしまうんだろう。清水は?そう思い、振り返る、やはり彼はいない。

 はなさんが、小声で話しかける

ゲス海は既にトイレ、おそらく着くまで出てこないんじゃないの~

そう、僕ももう少ししたら、トイレのお世話になるかもねはは~

 玲奈は何してるんだろう?うわ!ホテルが用意した、卵サンド食ってるよ!すげー強すぎる!!

どうして、怜奈のほう見てるの~?

超小声で少し怒って言ってくる、いやその目、ちょっと眼力ありすぎ!

いやっ僕気持ち悪いのに、良く卵サンドなんて食べれるな~って

え?あたしも同じ物さっき食べたよ、美味しかったけど、ミルクティーと一緒に

もう勘弁してその味を思い浮かべるだけで、僕はトイレにダッシュしていた。

 その後フェリーは30分ほどして船着場に到着し、船着場でパスポートを見せ簡単な入国審査を済ませると僕達は香港の隣りマカオに入国した。
 フェリー乗り場には白石の人が用意したハイヤーが既に到着していたので、それに乗り込みある場所に向かった。 ハイヤーは30分程度走り、マカオのパンダ園に到着した。

 入り口に入り、パンダの檻の前まで行くと彼女は以外にも簡単に見つかった。清水が呼びかける今日はカラコンも変装もないので一目でわかった。

白石さん

やっぱり、ここにいたんだね

いや~すごいな~コーキがここだって分かったの?清水君

そうだね、昨日チョンキンマンションで梶本さんとはぐれた後、偶然白石さんと会ったらしいんだ、その時の会話の断片からここだって

やっぱり、コーキは人と違う何かを持ってる、絶対誰にもとられたくない!


白石は僕たちの顔を見ると驚いて、逃げようとしたが、清水に上手く回りこまれ、へたりこんでしまった。

あ~あ~捕まっちゃったあ、また最初からやり直しかあ~、でもあなた達結構やるね~!今までで最短で捕まったちゃったよ。

白石さんは少しだけ失望、そして諦めたような感じで失笑するように笑っていた。

白石さん、その言い方また逃げる気満々だね、逃げて何か解決するの?私は逃げない!あんたみたいなの同じ女として見ているとムカついてくる!うざい!

玲奈が冷たく言い放つ。
 いや~ここは穏便に説得ってホテルで言ったのに

だったら、追いかけてこないでよ、大体なに?人の事言いたい放題い言って?あれ?あなた梶本製作所の娘、フン!あなたは自分の家庭の問題棚に上げておいて他人の事言える筋合い?週刊誌でもあなたのお父さんの事読んだよ、ずいぶん派手なようで~

う~んまずいなあ、売りに買いのルートでしょこれ?

そんな事今、関係ないでしょう!それにパパは改心したんだから!

そんなの分かるわけ無いでしょう~

なにを~~やろ~!

玲奈が白石に飛び掛るのを僕が必死に抑える。体格が小さい割りにすごいパワーだから、抑えるのに必死だ。

こいつ、ぶっ飛ばしてやる、ふざけやがって!こい!このヘタレ!

清水は白石を抑えている。

あなたみたいな粗野な人なんかに、私の何の気持ちが分かるっていうの!あ~ヤダ新興の成金企業の娘だから品が無いっていうか~

こいつ、コロシテやる!!離せコーキ!離してよ!

まあ、二人とも落ち着いてくれないか?白石さん今日は俺達はあなたと喧嘩しにきたんじゃないんだ。一度日本へ帰国して両親とかおじいさんとかと落ち着いて話し合ってみるっていうのはどうだい?もし必要なら俺達や佐藤先生だって

白石さん私達はあなたの事できるだけ助けたいと思っているんだよね、玲奈も怒っているけど皆助けたいと思っているからここにいるんだよ

そんなの無理だよそれに、だって仕方ないじゃん、私は医者になんかなりたくないし、親は医学部の受験勉強を強制するし、仮に医者になったって医者なんて単なる金儲けの職業のひとつじゃない!セレブのパーティに行っても、医者なんか患者のことなんかこれっぽちも考えてないのよ!ただちやほやされたいそういう職業ステータスのひとつだと思う

その言葉を聞いていた清水の顔色が変わった、明らかに今までに見たことの無い表情だ

医師になるのが、ただ金儲けの手段に過ぎないだって?白石さんあなたは、本当にそんな風にしか医師と言うものが捉える事が出来ないのかい。確かに金儲けしか考えていない最低な奴もいるだけど、だけど、医師っていうのは本当は命を助ける、命を繋ぐのが医師の役目だと思う!あなたのような人に、目の前から逃げてばかりの人に医師を語る資格は無い!帰りたくなければここにずっといればいい。でも親のお金ですごしている君の言う自由はちっとも自由なんかじゃない!所詮親の手のひらで遊ばれているだけだ!良く考えろ!自由になりたいんだろう!自分の意思で考えてみろ!

帰ろう

えっ?いいの?

これ以上何を言っても無駄だろう。後は彼女次第だ

僕達はパンダ園を後にしてホテルに戻った。
ホテルに戻ると清水が珍しく真剣にみんなに謝っていた。確かに清水があんなに取り乱したのは初めてだった。その後まだ夕食前だったので、一旦それぞれの部屋に戻るも近くだったので、また僕はパンダ園に戻ってみた。そこには白石がまだベンチに一人座っていた。

何?まだなんか用?

白石さん、子供の頃ご家族と旅行したケニアの時の写真みさせてもらったよ。すごくいい笑顔に写ってた。今日ここにこれたのも君がチョンキンマンションの喫茶店で何冊も手元に置いてみていた動物の写真集から、ひょっとして動物が好きなんじゃないかって思ってここに辿りついたんだ


白石は何も言わない。

僕も将来何になりたいかだなんて今決めろって言われたって正直分からないよ。だからうまく言えないけど、もっと単純に好きな方向にいったら?

…………

白石さんは何も言わない。表情には暗さが漂っていたけど目にはうっすらとした笑みが浮かんだような気がした。

僕って本当に気の利いた言葉が言えないよな

ごめん、僕何いってるんだろう、でも、これが恐らく僕だけじゃなく、清水や田中さん、あとさっき怒ってたけど、怜奈もみんな同じ考えだと思うんだ。じゃ帰るよ

数歩あるくと、後ろから、小さな声で

ありがとう

そう聞こえた気がした。

ホテルに戻りその後は皆言葉少なに夕食を摂り、それぞれの部屋に戻っていった。
ところが深夜、ぼーっとテレビを見ているとノックする音が聞こえたので、ドアを開けると清水が珍しく部屋に興奮して飛び込んで入ってきた。、

お客さんだよ!


ロビーに行くと、そこには白石がいた、

あっさっきは有難う、今はまだ自信ないけど、その摂りあえずは帰国して親とかに自分の好きな方向がなんなのかを探す時間が欲しいって言ってみることにしたから、でも恐らく、動物に関係した何かができればいいかなって、言ってみるつもり

それは良いことだね、何かあったら生徒会で相談にのるから

ありがとう、じゃあ帰りの飛行機時間がないから私戻るね、今度こそ日本へ

うん

そう言うと彼女は足早に立ち去っていった。

あれ?白石さんが来ているって聞いたけど。

もう帰ったよ、日本へ

やっぱり、玲奈は気まずくて来なかったか

えっ!本当~!!それは良かったね~これでやっと帰国できるね~それに夏の香港って暑いしね~だいたい夏の合宿ってもっと涼しいところでやるもんでしょう?もう帰ろうよ~

そだね~もう暑いのはちょっと勘弁だねやっぱ涼しいところが一番だよ

帰ったらみんなでどこか、涼しいところでも行こうか?

賛成~じゃあ私は怜奈にこの事伝えてくるね

 こうして僕にとって初めての海外での2次活動は終わったと思われた。
 しかしそう甘くはいかなかった、深夜部屋で寝ているとノックの音がした、気のせいだと思い眠る

今度はスマホのバイブ音、うも~何だよ~

もう、なんだ?こんな夜中に~玲奈だ、えっ?今ドアの前にいるだって?

驚いてドアを開けると、玲奈が血相を変えて飛び込んできた。

大変だよ、コーキ!白石さん逃げたって

えっ?まさか!

僕は寝ぼけ眼で絶句した、そんな昨夜日本に帰って両親と話すって言ってたのに、あの表情に嘘はなかった。何でだよクソッ!恐らく白石製薬の人も僕たちの報告で監視をやめてしまったんだな!

それで、他のやつらは?

あたし朝弱いからライン気が付かなくて、ごめんなさい。清水君とはなあはもう一足先の飛行機で追いかけてる、私たちも急がなきゃ

分かった!

急いで荷物をまとめて身支度を整え、ホテルを出る、

早く!乗って!

 タクシーに乗り込み、空港へ向かう、空港へ到着すると僕たちは既に清水が予約してあったチケットで搭乗手続きを済ませ、飛行機に乗り込んだ。行き先はどこだろうチケットを見る。

ブリスベン?ってどこ?

オーストラリアだよ、コーキ

彼女は僕の表情から、その疑問に答えた。飛行機は離陸を始める、そうか、動物好きだから今度はそこに逃げたか!

はい!

彼女は長袖の上着を僕に渡した。

ブリスベンまでは8時間、機内は冷えるし、向こうは南半休だから季節逆なんだよね、厚着しないと風邪ひくよ。

ありがとう。優しいな

 それに前から気付いていたけれど、ちょっと微笑んだ、いたずらっぽい表情が可愛らしい、うん?なんだこの引っ掛かる気持ちは?いたずらっぽい?長袖?まさか!

ああー!やられた!

僕は絶句する、白石さんじゃあなかった。はめたのは玲奈か。

いや見事だよ、玲奈

ばれちゃった、?清水君のまねしてみたの~

いたずらっぽくそして最高に可愛らしい笑顔で僕に微笑んでくれる

だってコーキ言ってたじゃない、涼しいところに行きたいって、それにもう飛行機は飛び立ってしまったし、もう引き返せないよ

 涼しいところってそれ聞いてたのね

コーキの事なら何でも知りたいの!悪い?

玲奈が少しはにかみながら小さめの声で言う。一瞬気持ちが揺れるのを感じるその時飛行機の機体も揺れた、旋回しているようだった。

いや、あの

まあ、これから時間はいくらでもあると思うし

 窓に目を向けると朝もやの中に香港の景色が見えてきた、ああー香港から遠ざかって行くけど、日本からも遠ざかって行くよ~

飛行機が旋回する。

僕を帰宅させて~

そんな細かい事はどうでもいいの!

二人とも英語できないのは細かいことじゃないよ~!

飛行機はマカオ国際空港を遠ざかっていった。

俺がホテルで経済新聞を読みながら朝食をとっていると、田中が激怒してこちらに向かってくるのが見えた。なんだ梶本がまた拗ねたのかな?

何かあったか?

テーブルに怜奈の筆跡の置手紙を荒々しく置く。

清水もぐるなの?

はっ?

玲奈の奴、こうくん、連れだしてどっかいっちゃった!!

えっ?さすがにその事までは知らなかったよ、

追いかけるから、支度して!

えっ?でもそれは二次活動じゃないから、お金がでないよ

なんか言った!!

ひぃ、怖い

早く!居場所、つ き と め て!!

その後、玲奈とおまけの僕と、はなさんとおまけの清水の追跡がオーストラリアで一週間にわたり繰り広げられたが、その事はまた機会があれば。

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