第4話 偽りの笑顔
第4話 偽りの笑顔
だけどどうして梶本は清水と話す時無理に笑顔を作ろうとするのだろう、何か不自然だ。
あの後学校を出て4人で近くのファミレスに入り、夕食を摂っている時そんな事ばかり考えていた。
なにか人を恐れているのに無理して距離を近づけているような気がする。
いや、清水の時だけそんな表情になるけど田中の時は本音で会話しているような表情だ、笑った時の口の角度がちょっと違うような、気のせいかな?母さんが酔っ払って手を付けられなくなった親父のご機嫌を伺いながら会話してる時と少しだけ似ている表情なんだけどな。
ひょっとして彼女、まさか男性恐怖症?でもそれじゃなんでわざわざ清水に好意を?なんか矛盾するな、う~ん分からない、考えが混乱してきた。
そんなことを一人で考え込んでいると、梶本が時計をみてすこし驚きながら言った。
あ、もうこんな時間だ、私帰らないと
そう言われてみんな時計を見ると19時近くになっている事に気付いた。
ああもうこんな時間か、じゃあ今日はこれで
うん、楽しかった~清水君今度はどっか遊びにつれていってね~
はは、まあみんなで遊びにいくとかいいかもね~
駅前で梶本と別れると僕たち3人は誰からとも言うことなく近くの喫茶店に入り直した。
ごめんな、松君今日は無理言ってつき合わせて
いやそんな事ないよ
いや~松君つまんない顔してた~な~んか不機嫌な顔してた
そうだな、何かあった?ごめんな松君梶本さんと全然話せてなかったね
いやそうじゃなくてなんか梶本さんの表情や態度と清水への好意が相反すると言うか、清水の事あれだけ好きだってアピールしまっくているのに男を警戒してるっていうか、敵意すら表している?ごめん僕言っている事おかしいよねやっぱり
二人とも一瞬無言になりそして互いに顔を見合わせている。
すごい!
いや~すごいな!やっぱり佐藤センセの眼力は恐れ入ったよ、驚いた!そうその通り、彼女梶本怜奈は男性恐怖症、理由は不明
え!?
まつ君良く分かったね~すごいよ一度会っただけで、私なんか彼女と同じクラスで友達になって何週間も経ってから、他の人とかからの情報も合わせてなんとなくわかったのに~あれが表面的なものだと分かったんだ、今日初めて会っただけで?
田中さんは何か知っているの?
原因については詳しくはわからないんだよ、でも多分お父さんとお母さんが仲がよくないみたいなこと言ってたような気がするから、その事と関係があるかも
そういいかけると田中は何か気になったようで、
あ~もう田中さんだなんて、他人行儀な言い方好きじゃないな~
ちょっと目を細めて少しだけおどけた感じで言った。
えっ?でも下の名前で呼んでもいいの?
う~んそれもちょっとね~自分の名前好きじゃないんだ~古臭いでしょ?
そうかな?いいと思うけど
エッ?そ、それは有難うね、ヘヘ
まあ田中それは今は置いといて、取り合えず今回の2次活動の目標として彼女の男性恐怖症を少しでも克服してあげるってことでいいかな?
まあ~この手の問題は解決は難しいんじゃないの?先月あった伊藤君みたいになんなきゃいいけど
まあ、いつもうまく行くとは限らないよ、でも正直あれは俺の作戦ミスだった、すまない
もう済んだことはしょうがないんじゃないの~まあ結果的に事が治まったから良かったけど
2次活動もいつもうまくいくとは限らないのか、何があったんだろう。
僕は具体的な活動の流れを含めて聞いてみた。
それで、どうしているの?こんな場合2次活動としては
別に特別なことはしていないよ、今までは二人で話し合ってこれはと思うアイデアが出たら、お互いに話し合ってプランを考える。それを対象の人に提案する。それがもし却下されたり、受け入れてもらえ無さそうな雰囲気ならそれとなくそのような選択をさせるように誘導することもあるかな
うわ~誘導とか言っているよ、ずいぶんといろんな意味がありそうだね。そんな事を思っていると、
だけど今は彼女がどうして男性恐怖症みたいになったか原因を知ることからはじめないとね
と清水は続けて言った。
確かにそうだな、男性恐怖症か、僕が女性が苦手なのと似ているっていうか基本構造は同じだな。
もしできるなら
と僕は勤めて遠慮がちに言った
もしできるなら、田中さんがそれとなく彼女に、どうして清水と付き合いたいと思うようになったところから少し突っ込んで聞いてみるっていうのはどうかな?だって男が嫌いなのに清水と付き合いたいと思ったのって、それなりの理由があるからでしょう?
なるほど~そうだねゲス海とはちょっと違ったやり方で面白い
確かに、今までの僕のアイデア、アプローチが間違っていたのか、さすがだな松君。実は何回かどうして男性が苦手なのか田中を通じて遠まわしに聞いていたんだけど
そう言うと清水は声色を変え、
え~はなあ~そんなことないよ、どうして私が男性苦手とか超おかしいし~なんでそんな事聞くのかな~
と、かなり無理をして梶本さんの声まねをした。清水さん、努力は認めますがそれはさすがにあなたの爽やかキャラと100%合いませんので、金輪際止めてね。
僕と田中が若干冷ややかな軽蔑のまなざしを向けると、清水は完全に滑った事を理解したらしく気分を取り直すため咳払いをした。清水君も恥じらいの表情なんて見せるんだへえ。
まあ、取り敢えずそれじゃ田中はこの件宜しく。なんとか真意をできるだけ松君の方法で聞き出してみて
了解~!あと彼女高いレストランとかしか興味ないから部費のほう宜しくね~
ああ、そうか~彼女は一部上場起業カジモト製作所の一人娘だからね~まあ宜しく頼むよ、部費は余っているから心配ない
だけど、怜奈も清水と一緒なら普通のレストランに入ってくれるんだな~、初めてわかったよ。女子だけなら絶対、雑誌に載っている高級店にしかいかないからな~本当疲れるよ、高級な店で高級な料理ばかり食べても緊張して私味わかんなくなるのよね
相当高級志向が高い良いとこのお嬢様なんだな。
ありがとう、田中さん宜しくね
あっいやその、業務だし全然構わないよ私、ははははは~
じゃあ、今日はこれで解散でいいかな?
そだね
僕たちは喫茶店を出てそれぞれの帰途についた。
そして それから3日ほど経ったある放課後、生徒会室で僕と清水は一次活動の書類を作成していた。その時田中が驚きの表情で部屋に飛び込んできた。
いや~びっくり、やっぱり松君てすごいね~すごすぎ!
どうしたんだ、田中
いや~この前の怜奈の件、まつ君の方法で聞いてみたんだ、ちょっと私なりのアレンジをして。そしたら分かったよ彼女の男性恐怖症の原因が
へえ、すごいなやっぱり松君は助かるな
でね、さっきまで彼女と話してたんだけどこんな事言ってたの
田中はさっきまで梶本と話していた事を思い浮かべながらゆっくりと話し出した。
だけど、ここだけの話清水ってさあ、いろいろと噂あるじゃない?何人にも告られたようだけど断ったりしているから、もし付き合ってからそれが分かったらちょっと困らない?怜奈はどうして清水に興味あるのかなと思って
実は、清水君みたいに誠実そうな人なら、パパみたいに浮気しなさそうな人かなって、だってなんか爽やかそうなイケメンでしょ?彼なら、怖くないの、っていうか中性っぽいかなってところが怖さを感じないの、でも彼ってどうなんだろ実際のところ?はなあは何か知っている?あたしの情報網にも入ってこないんだよね彼の事
いやあ~そこまで仲良くないからな~ただの生徒会のメンバーだから、ははは
おい!おまえだろう、その根も葉もない俺の噂を流しているのは!!
そう言って、田中の回想を強い口調で清水は止めた。
まあ、経緯はどうであれようやく彼女の男性恐怖症の原因がわかったみたいで、よかったじゃない?
そう、僕は取り繕う。
そうだよ!今日だって、学校前に寝ぼすけの怜奈を起こして、機嫌を直して高級店でモーニング食べて来てさんざん持ち上げてようやくここまで聞き出せたんだからね!お前のがせ噂なんて安いもんだろう!
そう言うと、田中は領収書の束を清水に渡しながら椅子に座った。
清水は領収書の概算をすばやく計算し
おい!あのね!予算気にしなくても良いっていったのは今月の予算梶本の案件で全部使って良いって言った意味じゃないぞ!どうやったら3日で20万も使ってこれるんだよ、しかもエステとかライブの最前席とか、佐藤センセになんて説明したらいいんだ
ええ!!20万!
僕は言葉を失った。
ほら見なよ、松君も驚いているだろうお前の無計画な出費を
いや3日20万もびっくりだけど、ここの部費って一体いくらなの?
あっそうか、その事まだ話してなかったね、詳しくはこの案件を片付けてから話すけど予算は表向きの1次と2次でだいぶ違う、1次はどこの生徒会とも代わりがないよ2次は1ヶ月上限30万、それより必要な場合は佐藤先生を通じて交渉になるね
そうなんだ
僕は唖然とする。
ここの生徒は、もう分かっていると思うけど上流階級の奴らばかりだから付き合うのも資金がいるんだよね。
なんだか、いろいろと面倒くさい学校に入っちゃたな。
まあ取り敢えず今優先事項は彼女の男性恐怖症の原因である父親の浮気癖がある事、これをどうするかだね。
でもさ~原因は分かったけど、彼女の父親の性癖を私たちが直すことなんてできるのかな~
そうだなあ~こういう場合ちょっと荒療治をしないと効果がでないからな~
ええ~清水の考えかあ~私はこういうの考えるの苦手だからいつもこれまであんたに頼ってきといてこう言うのも悪いんだけど、何か騙しっていうかトリックみたいなの使う気でしょう?
そうだね、例えば彼女の父親に、彼女も相当な浮気性な娘だと思い込ませてみるとか
なるほど、父親にも同じような嫌悪感を味合わせてってやつね。いつものように、SNSとか入り込んで情報操作するんだ
なんかちょっとすごいこと言ってるよこの人たち。
僕があっけに取られていると、
松君は何かアイデアはあるかい?
えっ?ええと
しばらくの沈黙の後僕は意を決したように言った。
アイデアっていうか、これは僕の知人の話なんだけど。その人の父親がよく母親に暴力をふるっていた人なんだ、その上いろいろ他の女の人と付き合ったりしていたみたいなんだ
それで?
2人は興味津々で聞いてきた。
それで、ある日その知人が父親の事をなぐったんだ、ただ殴った時できるだけ感情的にならず冷静に、まるで物でも叩くように、そしたら完全には良くならなかったけど大分殴る回数が減ったってそして浮気をするとかは無くなったとか言ってたな、もし、彼女の父親が酒癖も悪かったら効果は半分しかないけど
それを聞いていた清水は、一瞬僕を哀れむような表情を浮かべ直ぐに穏やかな表情に作り直し、
そうか、その人は大変だったね自分の父親の事を感情を押し殺して物でも叩くように殴るなんて、叩くほうが拷問を受けているようなものだね、辛かったろうね
と言った。
分かった、それじゃあ田中はどっちの案がいいと思う?もちろんお前の案があれば言って欲しいんだけど
そうだね~私はさっきも言ったとおりに、こういうのあんまり得意じゃないから、二人の案のうちどちらか選ばせて貰うよ。う~ん、よし決めた!どうだろう今回は怜奈の男性恐怖症の原因を突き止めたのが松君だから、松君のアイデアでいってみない?、あんたの謀略みたいなの効果的なんだけどちょっとはこういう正面攻撃的な事もいいかな~なんて
分かった、でも松君の案はいいとは思うけど、どうやって彼女を納得させるかだね
僕が、正直に言ってみるよ同じ恐怖症同士として
え?松君が言うの?直接?
清水君も、田中さんも頭が僕なんかより相当いいからとっくに気づいているんでしょう?僕が重度の女性恐怖症だって
え?まあ
だから、正直に自分の思っている事を言ってみる
二人は驚きの表情を見せたが、直ぐに僕の気持ちを理解してくれたようで。
分かった、君の案にのるんだから君のやりたいようにやったらいいよ、俺たちはバックアップに努めるから
有難う
じゃあ、今度の週末にどこかへ4人で遊びに行ったときに話してみるってのはどうかな?
田中が事もなげに言う。
そうだな生徒会室に呼び出して説得じゃ彼女の気持ちを変えるのは難しいだろうからね、いいアイデアだ田中、と言う訳で松君悪いけど今週末は空けといて貰えるかな
う、うん
しまった!まさかこんな展開になるとは、ああ女の子と週末どこかへ行くなんて、休みなのに気が休まらない、どうしよう。