4月9日

今日は土曜日。
学校は休みだが、せっかく友達になったし桜も見納めということで、クラスメートと花見に来た。

犬伊

おー、ところどころ葉っぱになってるけど、まだ結構咲いてるなあ

井崎

ほんと、地面も花びらで絨毯みたい

井崎は俺の前の席で、入学式当日隣の席がいなくて孤独死しそうだった俺の一人目の友達だった。

根白

オレは花見なんて小学生以来だ

和咲

ちょ、ちょっと根白なんで野球の格好なの?
変に目立ってるよ

根白

え?
そりゃこれから部活の仮入部だし・・・
つかお前らだって制服じゃん

井崎

まあそれはしょうがないよね

和咲

そうそう、しょうがないの

根白

はあ?
なんでオレだけ・・・

根白、和咲は暇そうにしていたから声をかけたが、なかなか気の合いそうなやつらだった。

犬伊

なあ、それよりこの後どうする?

井崎

出店回る?
結構いろいろあるみたいだ

今いる桜公園から少し歩いた、河川沿いの桜並木は結構な見ものだった。
近年は観光客が多いらしく、出店も幾つか立ち並び、賑やかだった。

井崎が指差した方を見ると、綿菓子や金魚釣り、ヨーヨー釣りなど祭りのような出店が並んでいる。

そのうちの一つにりんご飴屋があり、そこになんだか見覚えのある後ろ姿を見つけた。

新乃

・・・

犬伊

あれ、新乃もきてたんだ!

新乃

・・・

肩を叩くと、俺には全く気付いていなかったらしい。
驚いて目を見開いた新乃はきょとんとして俺を見つめた。

犬伊

悪い悪い、驚かして
真剣な顔してたけど、りんご飴選んでたのか?

新乃

・・・

新乃

・・・

新乃はこくんと頷くと、再び真剣な面持ちに戻り、並んだりんご飴をじっと見つめた。

和咲

犬伊、どうかしたの?

井崎

あれ、新乃だ
新乃もきてたんだ

根白

新乃って?

井崎

犬伊の隣の席なんだよ
りんご飴選んでるの?

犬伊

そうみたい

遅れて新乃に気付いた井崎たちも、りんご飴の屋台に群がる。
ふと気づくと屋台のおじさんは、俺たちを冷やかしと思ったのか厳しい目で睨んでいた。

犬伊

あ、ほら新乃、どれとどれで悩んでんだ?

新乃

・・・

俺が聞くと、新乃は二つを順番に指差した。
どちらも大きく、差分はほとんどなさそうだ。

犬伊

じゃあおじさん、これとこれ

屋台のおじさん

はいよ
一個500円な

犬伊

たかっ
あ、いや、そんなもんなのか・・・?
じゃあ1000円で

屋台のおじさん

はいまいどあり
これおまけね

犬伊

わ、ありがとうございます

出店の食べ物って割高に感じてしまうが、おまけの小さいりんご飴ももらい、なんだか得した気分だ。

犬伊

はい新乃
好きな方食べていいよ
もう一個は俺が食べるから

新乃

・・・

新乃

・・・

犬伊

お、嬉しそう

新乃

・・・

新乃は二つのりんご飴を選びに選んで、ようやく一つを決めるとこくんと頭を下げた。

井崎

新乃って甘いの好きなんだな

犬伊

そう見たい
あ、小さいのもらったけど誰か食う?

井崎

おれは甘いの苦手だし、いいや

根白

オレも

和咲

そうなの?
じゃあ僕もらおうかな

犬伊

はいどうぞ

和咲

ありがとう
りんご飴なんて久しぶりだ

和咲に小さいりんご飴を渡すと、嬉しそうに手に持った。
和咲はサイズが小さいから、小さいりんご飴もなんとなく似合って見えた。

和咲

おいしいね

根白

見てたらちょっと食いたくなったな
根白、新乃でもいいや
一口くれよ

和咲

え、いらないって言ったじゃん

新乃

・・・

和咲

ほら、新乃もいやだって

根白

え・・・

犬伊

根白ショック受けすぎ
俺のくうか?

根白

お前は・・・なんか違う

犬伊

ちょっと殴ってもいいだろうか

それから5人でわいわいしながら桜並木を歩いた。

井崎

なんだか平和だなあ

犬伊

そうだな

和咲

またみんなで来たいね

新乃

・・・

新乃がこくんと頷いた。
それは出店の甘いものが目当てなのか、それとも俺たちといて楽しかったからなのかはわからないけど、新乃と少しは仲良くなれたらしい。

つづく

まさか休みの日まで新乃に会えるなんて!これって運命感じちゃうよね。
でもでも明日は日曜日だし。明日も新乃に会えるかな・・・?

犬伊

さすがにキモいから次からちゃんとした次回予告します
またみてね!

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