レグルス

やっぱりツルハシもすぐ壊れるんだな。

ヤクルト

わかっていた事ではありますけどね。

6号

うーん、僕が使ってるツルハシをあげても、レベル帯が合わないから装備できないッスね。
採掘はここまでッス。

ヤクルト

結局、あまり材料集まらなかったですね。
これで作れる装備品なんてあるんでしょうか。

6号

簡単な物は作れるはずッスよ。
例えば――

6号

2人とも、"新緑の葉"ってアイテムは持ってるッスか?
街の前に居る草みたいなモンスターが落とすやつなんスけど。

レグルス

それなら、山のようにあるぞ。
依頼で飽きるほど倒してきたからな。

6号

それは良かった、それじゃ多分、これが作れるはずッスよ。

 そう言って、6号は2人にトレード申請を飛ばした。

 トレードを通して渡されたのは、何かのアクセサリー設計図らしい。

- トレード -

 プレイヤー間でお金やアイテムの受け渡しを行うための機能。

 アイテムを再回収可能な状態で設置できるゲームにおいて、アイテムを床に置いてトレードすることが極稀にある。この行為は、一方的にアイテムを持ち逃げされる等トラブルの元になり易いため、極力避けたほうが良い。

レグルス

コイツ、なんで普段からこんなもの持ち歩いてるんだ?

ヤクルト

ありがとうございます!
あ、確かに作れますね。

レグルス

本当だ。初アクセサリーだな。

6号

そうやって生産を上げていけば、色々な物が作れるようになるッスよ。

ヤクルト

そういえば、6号さんが使ってるその剣も、生産限定なんですよね?

6号

そうッスね。

 6号が装備しているのは、透き通るような青色をした大剣だ。

6号

そういえばヤクルトさん、この剣使いたいって言ってたッスね。
それじゃあ、こいつの設計図もあげるッスよ。

 2人は再びトレード申請を受け、大剣の設計図を受け取った。

レグルス

コイツの鞄は四次元にでも繋がってるのか?

ヤクルト

ありがとうございます!

6号

必要な生産レベル高めなんで、ちょっとしんどいッスけどね。

6号

それじゃ、本命行くッス。

 3人は農場エリアにやってきた。

 順調に収穫していく2人だったが、事もあろうに、必要な材料が揃う前に道具が壊れてしまった。

レグルス

おいおい、まだ材料揃ってねぇぞ。

ヤクルト

僕もです。
最後の1つが出ていないのに……。

6号

最後の材料ってトマトッスか?

ヤクルト

そうです。
何故かトマトだけ1つも……。

レグルス

俺もだ。
他の材料は結構ダブってるんだが、トマトだけ出てねえ。

6号

実は、トマトの収穫場所はここじゃ無いんスよ。
ついてくるッス。

 2人は6号に連れられ、農場の隅にある、柵で囲われたエリアに進入した。

ヤクルト

ここでトマトが収穫できるんですか?
でも、僕達もう道具が無いんですけど。

6号

安心するッス。
道具は使わないッスから。

レグルス

道具を使わずに収穫できるのか?
だったら最初から……ん?

 地面が急に持ち上がったかと思うと、赤黒い何かが吹き出してきた。
 それは巨大な球体で、見上げるほどに高い。

 時折、グロテスクに鼓動している。

ヤクルト

……なんですか? これは。

6号

トマトッスね。

レグルス

一般的に、これをトマトとは言わん。
何かの間違いだろう。

6号

あぁ、すまんッス。トマトっていうのはあだ名みたいなもんスね。
トマトはこいつからしかドロップしないんスよ。

6号

いやー、懐かしいッスね。僕も初見のとき、1度こいつに殺されたッス。
低レベル帯の推奨任務のはずなのに、対象のモンスターが結構強力なんスよね。

レグルス

それ、俺達で勝てるのか?

6号

まぁ……普通にやったら、多分2人とも死ぬッス。

ヤクルト

ダメじゃないですか!

6号

安心するッス。
そのために僕がついてきたんスから。

 6号が剣を構えると同時に、光の壁が全員を包んだ。

6号

補助スキルッス。
これなら2人でも勝てるはずッスよ。

ヤクルト

6号さんは戦ってくれないんですか?

6号

このレベル差ッスから。
僕が攻撃したら一撃で終わるッスけど、それでいいッスか?

レグルス

いや、そりゃあんまりだな。
今回は見ていてもらおう。

6号

わかったッス。
補助は僕に任せて、好きに戦うッスよ。

 2人がトマトを挟むように移動する。
 近づいてきた敵に反応し、トマトが動き出す。

ヤクルト

僕が相手の気を引きますから、レグルスさんは背後に回ってください。

レグルス

よし、任せろ。

 ヤクルトはトマトに近づき、ヘイトを集めるスキルを選択。
 スキル効果により、トマトはヤクルトを強制的にターゲットとして扱う。

- ヘイト -

 モンスターが攻撃対象を選択するために使用するパラメータ。
 ヘイトが高いプレイヤーは優先的に狙われる。
 防御に特化する前衛は基本的に、このヘイトを集めるためのスキルを持っている。

 後衛職の攻撃魔法や回復魔法は、ヘイトが高く設定されていることが多い。
 そのため、前衛は後衛にモンスターの攻撃が向かないよう、常に自分に対するヘイトを高めに維持する必要がある。

レグルス

よし。背中を見せたな。食らえッ!

ヤクルト

6号さんの言う通り、ダメージ量がおかしいですね。もう持ちそうにありませんよ!

レグルス

待ってろよ。すぐに倒すからな!

 渾身の追撃を叩き込むが、まだ倒れない。
 トマトが再び、拳を振り上げた。

ヤクルト

やばいですね……次の攻撃は耐えられません。

6号

いや、まだ行けるッス。

ヤクルト

これは……。

 トマトの攻撃よりも先に、6号の回復魔法が発動する。
 ヤクルトはトマトの攻撃を受けたが、先に体力が回復されたため、攻撃を耐えることが出来た。

レグルス

ナイスだ6号さん! これで決めるぞ!

 トドメを受け、トマトが地に伏した。
 亡骸の中から、大量のトマトがこぼれ落ちる。

レグルス

食いたくねえ……。
必要な数納品したら後は売っちまうか。

6号

お見事ッス。

ヤクルト

トマトのくせに、強かったですね。

6号さんのおかげです。
ありがとうございました。

レグルス

……戦闘中は気にしてなかったが、強いトマトってかなり違和感のある言葉だな。

6号

……実際、あれそのものはトマトじゃ無いんスけどね。今となっては、誰も本当の名前を思い出せないくらいにはトマトッスけど。

6号

それじゃ、僕はこの辺で。
また機会があればよろしく頼むッス。

ヤクルト

はい。ありがとうございました。

ヤクルト

それじゃあ、僕らも料理作ったら納品に行きましょうか。

レグルス

そうだな。
納品して今日は終わりにしよう。

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