レグルス

飽きてきたな。

ヤクルト

そうですか?
僕はそうでもないですね。

 2人は金稼ぎのため、依頼を繰り返している最中だった。
 順調に貯まっていくのはいいが、同じ敵とばかり戦っていると、流石に辟易としてきたらしい。

レグルス

そうか。それならいいんだが。

ヤクルト

適当に話しながらやってれば、あっという間ですよ。

レグルス

この状態じゃゲームよりも雑談の方が主になってるな。

ヤクルト

それもネットゲームの楽しみ方の1つですよ。

レグルス

ふーん。そんなもんか。

レグルス

そういえば、ヤクルトはどうしてネットゲームをやってるんだ?

ヤクルト

理由?

ヤクルト

手軽さと、やっぱり色んな人と遊べるのは大きいですね。

レグルス

やっぱりそこに行き着くか。

ヤクルト

このゲームが無ければ、レグルスさんと会うことは、恐らく無かったでしょうしね。

レグルス

わかんねーぞ。
案外、隣人同士だったりするかもしれないだろ。

ヤクルト

ハハ、そうだったら面白いですね。
大体どの辺ですか? 僕は東北の方ですが。

レグルス

全然違うな。俺は四国だ。

ヤクルト

まぁ、そんなもんですよ。
逆に言えば、それだけ離れているのに一緒に遊べるというのも、ネットゲームならではってところですね。

レグルス

確かにな。

ヤクルト

そういうレグルスさんこそ、どうしてネットゲームを始めようと思ったんですか?

レグルス

俺か。俺は……仕事だなぁ。

ヤクルト

ええ? ゲームをする仕事なんですか?

レグルス

あ、悪い。作る方だ。
仕事でネットゲームを作るかも、って話になってな。その下見みたいなもんだ。

ヤクルト

なんだ。そういうことですか。
IT系の仕事をされてるんですね。

レグルス

ああ。
ゲームの開発なんて専門じゃないんだが、なんでこんなことになっちまったんだか。

ヤクルト

はああ。大変ですね。

ヤクルト

ところで、仕事のための下見中なんですよね?
用が済んだらもう辞めちゃうんですか?

レグルス

んー、そうだな……。

 仕事のために始めたことは事実だが、単に興味を持って始めたのもまた事実。

 しばらくプレイしてみた感想は悪くなく、新しく知り合った友人と早々に別れるのも、なんだか惜しい気がした。

レグルス

いや、どうやらハマったらしい。
このまま続けるよ。

ヤクルト

そうですか。
安心しました。

レグルス

とはいえ、開発が本格化してきたら、しばらくはゲームもできないかもなぁ。
さっきも言ったがうちは専門じゃないから、ノウハウも何もない。1から手探りじゃ相当骨が折れるだろうな。

ヤクルト

……体調には気をつけてくださいね。

レグルス

おう。ありがとよ。

ヤクルト

結構お金貯まってきましたね。

レグルス

そうだな。

ヤクルト

このまま続けてもいいんですが……、ちょっとマンネリしてきたみたいなんで、少し別の依頼をやってみますか。

レグルス

お、いいな。
どんなやつだ?

ヤクルト

納品系の依頼ですね。

指定されたアイテムを持ってくればクリアです。
今回の納品物は料理ですから、料理を作って、それを持ってくればOKです。

レグルス

料理を作る……?

ヤクルト

メニューに項目があるんですけど、触ったことありませんか?
生産という項目です。

- 生産系スキル -

 料理、装備品の製造、アイテムの生成等に使用するスキルを生産系のスキルと呼ぶ。

 多くの場合、プレイヤーが製造する装備品は店で販売しているものより高性能である。
 また、生産系スキルを極めるには多くの手間と時間がかかるため、生産系スキルの高いプレイヤーは重宝される。

 ゲームの本筋そっちのけで、生産を極めようとするプレイヤーも極少数だが存在する。

レグルス

なるほどなぁ。
料理もできたりすんのか。

ヤクルト

わりとよくある要素ですから、開発の参考にどうです?

レグルス

俺の仕事のことなんて気にするなよ。
しかし料理は面白そうだな。

レグルス

ところで、料理ってどこでやるんだ?
酒場の料理台でも借りるのか?

ヤクルト

いえ、生産系のスキルは材料さえ揃えばどこでも使えます。
専用の場所でしか生産系スキルが使えないゲームもありますけどね。

レグルス

なるほど、それじゃ材料さえ揃えればこの任務はクリアだな。

レグルス

で、どうやったら材料は手に入るんだ?
店は一通り見たが、料理に使えそうな物が売っている店なんて無かったと思うが。

ヤクルト

収穫します。

レグルス

は?

ヤクルト

収穫するんですよ。
材料を収穫してきて、それを元に料理を作るんです。

レグルス

そこからかよ。
良い料理を作るには、材料からこだわりを、ってことか?

ヤクルト

ゲームなので、どれも一緒ですけどね。

レグルス

身も蓋もねぇな。

ヤクルト

ゲームなので、どの料理もボタン1つで出来てしまうんですよ。
実際に作る段階よりも、集める段階の方がゲーム性を持たせやすいわけですね。

レグルス

なるほど。言われてみりゃそうだ。
材料をモンスターに持たせるとかすれば、このゲームの主要素である戦闘にも絡めやすいしな。

ヤクルト

そういうことですね。

ヤクルト

本格的な料理モードを作ってもいいのかもしれないですけど、ゲーム変わっちゃいますからね。

レグルス

確かにな。
余裕があれならやってもいいのかもしれんが……。

レグルス

それじゃあ、収穫に向かうか。
どこで収穫できるんだ?

ヤクルト

街の外れにある、生産エリアですね。

ヤクルト

それと、料理以外の生産系スキル……つまり、装備品の製造やアイテムの生成も要領は同じです。
料理の材料が集められる場所で、装備品やアイテムの材料も集められるので、そちらの準備もしておきましょうか。

 街の外れに用意された生産エリア。

 低レベルの生産系スキルで必要な材料は、ほぼ全てここで集めることが出来る。
 材料を収穫するための道具は各人で用意する必要があるため、2人は収穫に使う道具を僅かずつ購入した。

ヤクルト

それじゃあ、収穫していきましょう。
料理系の材料は北の農場エリア、装備品に使う材料は東西の森林・鉱山エリアですね。
どこから行きます?

レグルス

それじゃ、まずは装備品用の材料から集めるか。

ヤクルト

いきなり寄り道からなんですね。

レグルス

まあな。
元々の目的を達成してから寄り道するより、寄り道してから元々の目的に向かうほうが、一見無駄がない。

ヤクルト

……わかりそうでわからない理論ですね。
どうせ全部寄る予定ですから、構いませんが。

 森林エリアに、木を伐採する音がこだまする。

 木が倒れる音にまぎれて、何かが壊れるような音がした。

レグルス

もう壊れちまったよこの斧……。

ヤクルト

僕の方もです。
一応予備も持ってきたのに、そちらもあっという間でしたね。

レグルス

所詮安物か。

???

おや。

 森林エリアの奥から、別のプレイヤーが姿を現した。

 レグルスは、そのプレイヤーに見覚えがある。

???

また会ったッスね。

 ゲーム開始直後、街の入口で出会ったプレイヤーだった。

 プレイヤーの情報を確認してみると、名前は"6号"となっている。上級者らしく、レベルはかなり高い。

ヤクルト

あ、6号さん。
こんにちは。

レグルス

確か……街の入口に居たな。
というか、ヤクルトも会ったことがあるのか?

ヤクルト

はい。僕も街の入口で。
ゲームを始めた時、色々教えてもらいました。

レグルス

コイツもしかして、ずっとあそこに居るのか?

6号

2人とも生産?

ヤクルト

はい。
生産入門クエストの途中です。

6号

なるほど。生産入門クエストッスか。
懐かしいッス。僕も最初は一度……。

6号

あれ?
でもあれって料理じゃ?

レグルス

料理のついでに、他の生産系スキルも試してみることにしてな。
次は鉱山に行く予定だ。

6号

それはいいッスね。
僕も付いて行っていいッスか?

レグルス

俺は別に構わねーよ。
ヤクルトは?

ヤクルト

勿論構いませんよ。
それじゃあ、早速向かいましょう。

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