山根さんは僕を見るなり意味不明なお願いをしてきた。
椅子の後ろ側からだが、よく見ると山根さんの両隣の椅子に誰かがいて、山根さんにもたれかかっているように見える。
僕は山根さんの前方に回り込んでみて驚いた。
あの二人の子供だ。
いつも小奇麗な紺のズボンに白いシャツの男の子と、紺のスカートに白いブラウスの女の子。
この二人が山根さんの膝を枕にしてすやすやと眠っていた。
もしかするとというべきか、やはりというべきか。
昨晩、施設の庭で見かけた二つの小さな影はこの二人だったに違いない。
両側からの膝枕状態なので、スペースが足りなくて女の子の方は山根さんが腕を使ってなんとか支えていた。