押し入れを開けると、以前から気になっていたダンボール箱がある。
それは乱雑に放り込まれた掃除用具やアイロン、衣替えの時期がくるまで眠らされた冬服、積まれて紐で縛られた小説などと共に、一番奥の壁際で窮屈そうにしていた。
最初にそのダンボール箱を見つけたのは、冬弥と同棲し始めてすぐのことだ。
あれから二年もの間、彼との生活という小さな世界に存在するパンドラの箱のように、例のダンボール箱は私の好奇心と理性をくすぐり続けた。
開けてはいけないもののような気がするが、中を見てみたい。
だが、冬弥との関係が崩れるほどの秘密が入っているかもしれない。
そんな風に思ってはいたが、よく考えてみれば押入れを開けるとすぐに目に付く箱だし、そんなに深く考えるものじゃない。
二年間あれこれ悩んでおきながら、何故あれほどの迷いがあったのかと思えるほど楽観的になった。