ミドリ、俺はどうすればいいと思う

 王様に向かって平謝りするサンザシを見つめながら、俺は呟いた。

まずは、知るしかないんじゃないかな

 ミドリはそう言って、手をさしのべてくる。俺は、その手をとって立ち上がった。

私と、タカシ君にかかってるんだって、サンザシちゃんの命。私、何でも協力する。あの子のために

ありがとう

タカシ君も、頑張るんだよ

……うん。でも、罪って

 どういうことだ。考えようとする俺に向かって、もう、とミドリは手を叩いた。

考えすぎないの! 
わかんないことは仕方ない! 

見よう、まずは

今聞いたことは他言無用だ、いいな


 ミドリの声と、ロジャーの大きな声が重なった。

はい!

申し訳ございませんでした!

もうよい

 ロジャーがその場を去るまで、二人は頭を下げたままだった。

 扉が大きな音を立てて閉まった後、ふう、とトウコがため息をついた。

よかったあ、ばれたかと思った

本当にね

 サンザシが、くしゃりと笑う。

 懐かしい笑顔に、泣きそうになる。

 手を伸ばしたくなる衝動を必死にこらえ、その場に立ちつくしたまま、耳をそばだてる。

どう、最近上手くいってるの?

うーん、どうだろう。でも、エン様は優しいよ。いつか、ずっと側においてくださると思う

 きゃあ、とサンザシが手を叩いて喜んだ。

時間の神様のエン様と、あのトウコちゃんって言う子は、つきあってるみたいだね

ああ、聞き耳をたてていたのは、二人の関係がばれたんじゃないかって思ったからかもしれない

 サンザシが、ねえねえ、といたずらっ子のように微笑んだ。

魔王様、やっぱり気にならない? 
どんな方なのかなあ

やめなよ、怖い方だって聞くよ? 

いくら私たち魔族の王様でもさあ……何されるかわかんないよ。近づかない方がいいって

でもさあ、怖いっていうの、噂、でしょ? 

魔力を悪いことに使いそうにはないって、さっき時の守り人の方も言ってたじゃん!

そうだけどさあ

やっぱり気になるんだよね、噂の魔王様!

 サンザシが、きらきらと目を輝かせて、ああ、と手を組んで見せた。

会いに行こうよ、トウコ

やーよ、一人で行けばいいじゃん

……そっか、別に、一人で行ってもいいんだよね。魔王様、誰にでもお会いしてくださるって、聞いたことがあるし!

え、ちょ、冗談だよ! 

やめてよ、怖いじゃん

噂でしょ! 見てみたいの、魔力をもてあましてる、孤独が大好きな魔王様!

 くすくす、と笑って、サンザシはきびすを返した。

そうとなったら、もう寝なきゃ! 明日行こうっと

ちょ、ちょっと、サンザシ!

 扉が、重々しく閉まる。

 ふーん、とミドリがうなずいた。

サンザシちゃんと、魔王様、ね

なあ、やっぱりこの物語、魔王様の物語なんじゃないか?

んー……そうかもしれないけど、でも、タカシ君

 ミドリが眼鏡の奥から、真剣な眼差しを向ける。

やっぱり、まずは情報収集。すべてのカードが出揃ってから考えた方が、いい気がするけどな

……そうか、ごめん

 ううん、とミドリは優しく微笑む。

サンザシちゃんのことだもん、気持ちがあせるのは分かるよ。

ほら、私はサポート役だからさ。タカシ君を止めるのも、役目のひとつだよ

 ふっと思い出すのは、サンザシのことだ。

 さっきまでそこにいたのに、もう、会いたいと思う。

 次々と思い出すのは、彼女が俺のそばで懸命にサポートしてくれた、あの冒険の日々だ。

ミドリ、ありがとう。サンザシを追おう。サンザシの過去についてだ、サンザシについていくのが一番だろう

そうだね、行こう

 こういうとき便利だよね、と言いながら、ミドリは壁をすりぬけた。

7 記憶の奥底 君への最愛(9)

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