声高らかに、セイさんが現れ、俺の前でパチン、と指をならす。

 見えない糸で縛り上げられたかのように、俺の両手は体にくっつき、その場でつんのめって転んでしまう。

離せ! サンザシ! サンザシ!

怒らない! 
ビー、クーーーール! 

落ち着かないと、また君が暴走して! 
サンザシちゃんが消えちゃうから!

 最後の言葉に、はっと息を飲む。

 黙ってセイさんを睨み付けると、怖いなあ、とセイさんは苦笑した。

サンザシは消えてない、そこにいるじゃないか

あれは過去の映像だよ

 セイさんは頭上に向かって手をふると、笑顔で叫んだ。

エンちゃん! 
ストーップ! ストップしてー!

 そのとき、サッと空気の流れるような音がして、この世界から音が消えた。

 セイさんの奥に見えるサンザシに目をやる。
 止まっている。

どういうことです、セイさん!

 ミドリが俺の肩をだき、ゆっくりと起こしてくれた。座っている俺と目線を合わせるように、セイさんがしゃがむ。

これは物語じゃない。

君はもう、今までのことがゲームではないことを聞いただろ。

あのゲームはもう終わりだ

じゃあ、俺はなんのためにここに……

真実を知るため。

ここは、過去だ。

サンザシの犯した、罪を、見てもらう

サンザシの、犯した罪……?

そう。そして、彼女の過去。

彼女がどうして、君と一緒に世界を回っていたか、順を追って見せてあげる。

君は、知りたい。そうだろう?

……見たら、サンザシは、助かるんですか

わからない

 セイさんが、微笑む。

君と

 俺を指差し、

君に

 ミドリを指差す。

かかっている

 ミドリが息を飲む音が聞こえた。
 俺も、ごくりと生唾を飲む。

ま、特にタカシ君だね。

くれぐれも、怒りとか混乱で、僕がせっかく封じ込めてあげた魔力を暴走させないように。

ビー、クールで頼むよ。んじゃ、またね!

ちょっと!

 俺が呼び止めるもむなしく、セイさんはどこかに消えた。

 それと同時に、ブン、と空気の動く音がして、音が戻ってくる。

 世界が、動き出した。

申し訳ございません、王様!

 サンザシが、そう言って頭を下げるのが、見えた。




 サンザシ、と呟いた俺の声は、枯れていた。

7 記憶の奥底 君への最愛(8)

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