アヴィスへ戻ると隊長から招集がかかり応接室へと集まった。

マルビス

みんな、昨日は御苦労だった。ティナはまだお前達に会わせられる状況ではないが、
 回復の兆しをみせている。

リリアーヌ

良かった・・・

隊長の言葉に全員安堵する。

マルビス

ここに集まってもらったのは確かめたいことがあったからなんだが、昨日の戦闘の時に
 前回話した人型モンスターらしきものを見ていないか??

カイト

いや、見ていないですね・・

カルマ

俺も見ていません。

リリアーヌ

私も、見ていないです。

マルビス

そうか・・・

全員首を横に振り否定する。

リリアーヌ

隊長はそれらしきものを見たんですよね?

マルビス

あぁ、人影を見た気がしたんだが、気のせいかもしれん。

カルマ

じゃあ戦闘の途中から隊長がいなかったのはモンスターを探していたからなんですね。
 何かあったかと思ってみんな心配していたんですよ。

マルビス

・・あぁ、すまない。ちょっと気になって広場から離れたんだ。

私の指摘にバツが悪そうに答える隊長は誰の目から見ても怪しかった。

マルビス

まぁ、何事もなければいいんだ。明日は全員出動してもらうつもりだから、
 今日のところはしっかり休んでくれ。では解散。

明日の任務に備えて、私達は早めに休息をとった。

そして翌日の昼過ぎ、応接室に全員集まり待機していると隊長がかなり慌てた様子で、
ノックもせずに部屋に入ってきた。

マルビス

全員揃っているな・・!?地下の爆発を知らせる警報が鳴った。危険だからすぐに外に出てくれ!

リリアーヌ

地下って・・ティナは無事なんですか!?

マルビス

大丈夫だ、既にカプセルごと搬送機で移動させている。とにかくすぐにここから離れるんだ!

そう言って隊長は部屋を飛び出していった。

リリアーヌ

ねぇ、どう思う?

カルマ

怪しいな・・・

カイト

少し見回ってから外に出ようか。

私達は一番怪しい場所である研究室へと続く階段付近に向かうことにした。

カルマ

特に変わった感じはしないな・・・

リリアーヌ

物音も聞こえてこないし・・・でも施設に不具合があったのなら逆におかしいわよね

カイト

そうだな・・・っ、誰か来るぞ!!!

3人で階段を覗き込んでいると後方から足音のようなものが近付いてきた。
身構えて振り返るとそこには・・・・

リリアーヌ

え・・・・なに? 嘘でしょ・・・!?

カルマ

ヌラ!?・・いや、あの髪はティナ、なのか・・・!?

ティナ

ぐぎょおおおお・・・

ほぼ全身がヌラの体で覆われており、かろうじて左頭部からティナの特徴であるツインテールが飛び出していた。
あまりにも衝撃的な見た目に私はその場に崩れ落ちて呆然としていた。

カイト

ど、どうしたらいいんだ・・・!?

ティナ

ぎょおおお・・・タ・・・タス・・・

カルマ

おい、何か喋っているんじゃないのか?ティナ、俺達が分かるのか!?

ヌラ

タ、スケテ・・・・ぎょおおおぐおおお

体をくねらせて苦しんでいるような叫び声が廊下に響く。
だんだんと体が大きくなっていき、全て飲み込んで完全なヌラになってしまった。

リリアーヌ

いや・・・いやああああああ!!!!

カルマ

リリアーヌ、落ち着いてくれ・・・。
一体なんでこんなことに・・

変わり果てていくティナを見て泣き叫んでいる私の手をカルマがそっと握ってくれた。
カイトはヌラになってしまったティナの様子を窺っている。

カイト

くそっ、やるしかないのか・・・?

リリアーヌ

カイトやめて!あれはヌラじゃなくてティナなのよ!!

カルマ

・・・・!!みんな伏せろ!!!

カルマの一言で全員がその場に伏せた。
すぐにヌラの光線が放たれたが、間一髪で私達の上を通り過ぎ壁に穴を開けた。

カルマ

リリアーヌ、あれはもうティナじゃない・・・

リリアーヌ

嫌、嘘よ・・・ティナ・・・

カルマ

見ない方がいい・・

カイトがヌラに向き直り魔法を唱え始めると、私の視界はカルマの手によって遮られた。

ヌラ

ぎょおおおおお・・・シテ、ワタシ・・ヲ、コロシテ・・・

カイト

アクアバースト!!!!

ヌラ

ぐおおおおお・・・!!!!!

カイトの魔法によりヌラは消滅した。
もちろんティナの姿も残っておらず、辺りは静寂に包まれた。

リリアーヌ

ティナ・・・ティナ・・・

カルマ

階段を上がってくる音がする、早く離れるぞ!!

歩ける状態ではなかった私を二人が支えるようにしてその場を後にした。

アヴィスを出たところで隊長が後ろから駆け寄ってきた。

マルビス

お前達、まだここにいたのか!?・・リリアーヌはどうしたんだ、怪我でもしたか?

カイト

あ、実は逃げる途中でヌラに遭遇して・・・

マルビス

な、なんだと・・・

カイトがヌラという言葉を発した途端、隊長が焦ったような表情になる。

カルマ

なんとかカイトが倒したんですが、戦闘途中でリリアーヌが頭を打ってしまって・・

リリアーヌ

心配かけてすみません・・・少し休めば大丈夫です・・

誤魔化してくれたカルマに続いてなんとか言葉を繋ぐ。

マルビス

そうか、無事だったなら良かった。

カルマ

しかし、どうしてアヴィス内にヌラがいたのでしょうか・・

カイト

地下の爆発は大丈夫なんですか?

マルビス

どこかから侵入したヌラのせいで地下の制御装置が作動したのかもしれんな。
 確認したが、異常は治まったようだ。もう戻って構わない。

カルマ

分かりました、では応接室で休ませてもらいます。

リリアーヌ

ティナは、また地下に戻ってくるんですか?搬送機で運び込む時に一目でも会えないでしょうか?

マルビス

あー・・いや、しばらく地下の設備の点検をしてから戻すことにするからまだなんとも・・。

リリアーヌ

そうですか、分かりました。

言葉を濁す隊長に、怪しいという疑惑は確信に変わった

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