アヴィスに戻った私達は応接室で待機することとなった。
アヴィスに戻った私達は応接室で待機することとなった。
隊長によるとティナは医療ラボの設備では回復が難しく、
地下にある特殊なカプセルの中で治療をするらしい。
ティナの姿を見たいと隊長に問い詰めるも聞き入れてもらえず
おとなしく待つことしか出来ない。
はぁ・・・・ティナは大丈夫かしら・・
信じて待つしかないな・・
あぁ。それにしても、地下に治療のための設備があるなんて知らなかったよ
確かに、今までなぜ使わなかったのかしら・・
・・・そういえば、ティナの件で動揺していたから忘れていたけど、隊長って戦闘の間
どこにいたんだろう?
広場の奥から来たわよね。どうしてあんな方から?てっきりアヴィスに
戻ったんだと思っていたわ。
人型モンスターが居ないか見回っていた、とかかな・・?
やっぱり隊長は何か隠しているわ・・ユウリは何か証拠を掴んで
殺されたのかも・・・
アヴィス内でこういう会話はしない方がいいかもな、聞かれると
俺達もヤバイことになるかもしれない。
そうね、確実に三人だけの時にしましょう。隊長にさぐりを入れたりも
せずしばらくおとなしくしていた方がいいわね。
その後隊長が部屋に来て私達は休暇を取ることになった。
連日の戦闘と仲間の負傷で心身ともに疲れていたため非常にありがたかった。
翌日、私はワンダー湖に来ていた。
ふぅ・・・
この湖を見ていると今までの疲れや悲しみを全て忘れることが出来る気がした。
・・!もしかしてモンスター・・・?
後ろの茂みが揺れる音がして慌てて振り返る。
・・・
木々の隙間から現れたのは、綺麗な白髪を胸元まで伸ばした男だった。
その男の整った顔立ちに思わず見惚れてしまった。
ぁ、待って・・
・・っ!?
無言で立ち去ろうとする男の右腕を咄嗟に掴むと顔を歪めてその場に座り込んでしまった。
腕を怪我しているじゃない・・!ごめんなさい、今治療しますから!
回復魔法を唱えてから、持っていたピンクのハンカチを包帯変わりに腕に巻く。
・・・ありがとう。
気にしないで。でも、どうしてここへ?市民の方達はシェルターの中にいるはずじゃ・・
・・・俺はアリア隊として他の地区に派遣されていたんだ。
え、でも生き残った人はいなかったって隊長が・・・
・・・あぁ、戦闘で負傷して発信機を無くしてしまったんだ。
そうなの・・・
釈然としない部分も多いが、生きていた人がいるという事実が嬉しくてさほど気に留めなかった。
じゃあ一緒にアヴィスに行きましょう?隊長にも報告しないと。
・・!!待ってくれ、俺のことは誰にも話さないでほしい・・
どうして・・?疑いたくはないけれど、さっきから貴方の言動は不審な点が多いわ・・
すまない、隊長に俺の存在を知られるわけにはいかないんだ。
理由も話さずにこんなことを言って申し訳ないが、どうか分かってほしい。
必死に私に訴えかける姿を見て、悪い人ではなさそうだと判断した私はそれ以上詮索するのをやめた。
分かったわ、貴方の事信じます。隊長や他の仲間には今日の事は言わないわ。
・・ありがとう。
ほっとした表情をする相手に微笑みながら言葉を続ける。
せめて名前だけでも教えてもらえないかしら?私はリリアーヌよ。
そうだな・・・俺はキリュウだ。
キリュウは名前を名乗るとまたいつか会えたらハンカチを返すと約束し、その場を立ち去った。
やっぱりこの湖に来て良かったわ。
思いがけない出会いに少しだけもやもやした気持ちが晴れた気がする。
私は軽い足取りでアヴィスへと戻った。