俺たち家族は、母方の祖父の家に身を寄せていた。
東京のマンションとはまったくちがう、築100年の古民家だ。
紺野、放課後ひま?
みんなでカラオケ行こうぜって言ってるんだけど
悪いけど、今日はちょっと……
あいつ部活入ってないんじゃないの?
塾とかあるんじゃん?
東京からの転校生は俺らみたいにフラフラしてねーんだよ
え、お前もう塾行ってんの……?
行ってるけど?
マジで?
俺たち家族は、母方の祖父の家に身を寄せていた。
東京のマンションとはまったくちがう、築100年の古民家だ。
ただいまっ……!
建てつけの悪い引き戸を開けて中へ入る。
だが、そこには誰もいなかった。
居間も
風呂場も
誰もいない。
ふいに頭の中に、あの日の映像が蘇った。
し、椎花…………っ!
どうしたの、お兄ちゃん?
門のところに母と祖父、そして妹の椎花が立っていた。
お隣の加藤さんが苺をくださるって言うから、みんなでもらいに行ってたのよ
誰もいないのに、鍵が開いてたから、心配した
田舎じゃ、どこもちょっと出るくらいじゃ締めないからなァ
何かあってからじゃ危ないだろう……!?
カッとなってつい強い口調で言い返すと、
「結」
と母にたしなめられた。
椎花の宿題見てやってよ。わからないところがあるんだって
……わかった。行こう、椎花