東京から新幹線と在来線を乗り継いで三時間……

僕たち家族が引っ越してきたその町は、のどかな田園風景が広がる田舎町だった。

関東のとある片田舎、坂の多い街、夏見町。
八月のお盆の最中に開かれる祭りの時期には、全国から3万もの観光客が訪れるらしいが、その解き以外はどこにでもあるような、平和な片田舎だ。

空気が澄んでて、いいところね

ね、二人とも

…………

真央、行こう

う、うん……

すると、大きな鳥居が見えてきた。


ここが夏見大社だよ。
せっかくだから、お参りしていこうか

うん……

……

想像より、ずっと大きくて立派な神社だった。

ずいぶん長かったけど、何をお祈りしてたの?

別に……

あ……

遠くで、巫女装束の女性がホウキで落ち葉を掃いているのが見えた。

……

結、そろそろ行くよ

あ、うん

紺野君、どう?
新しい学校には慣れたかな

はい

この人は担任の寺本先生だ。
明らかに地毛でない頭以外は、温和で穏やか、気になるところのない教師だ。

あの、先生、用事っていうのは

そうそう、これなんだけどね……

そう言って先生が取り出したのは、一枚のプリントだった。

「入部届書」と書いてある。

部活……ですか

全校生徒が所属するように決まってるんだ。前の学校では何をやっていたんだっけ

剣道ですけど……

おっ、いいじゃない。
たしか、お父上は警察官だとか

でも、もう剣道は辞めたんで

もう剣道はやらない。

これはすでに決めたことだった。

この決断は揺るがない。
何があっても。

まあなんでもいいから、来週までに決めといてくれると助かるな

俺は先生からプリントを受け取ると、一礼して職員室を出た。

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