羽美

事情がわからない……
どうして、わたしが巻き込まれたんだろう?

奈々

連中はウチの学園の生徒を無作為に誘拐しているの
その過程において言い方は悪いけど、偶然巻き込まれただけよ

参加者探しと言われて、広い学校と思われる廊下を進む。
全員で動くと手間がかかるので、手分けをして進むことに。
奈々という先輩の後に続いて、彼女達はついてあるく。
事情は不明な点が多い。
だた、奈々曰く同じ学園の生徒だけを付け狙い、誘拐してここに集めていた、という。
理由は、分からない。

羽美

ふぅん……
まぁ、運がないのはいつものことか

空は、羽美と一緒ならどこでも幸せだよ?

羽美

そだね、クー

すんなり諦めのついた羽美。
その背後にいる空が笑っている。
そこだけ、幸せな空間が漂う。

奈々

うわ、百合クサ……

前を歩く奈々がボソッと何かをつぶやくが無視。
二人して、きゃあきゃあ楽しそうに騒ぐ。
全く動じていなかった。

奈々は肩を竦め、自分一人でやることを片付けて、彼女たちを連れて回る。
ここにはもう、人がいなさそうだ。

奈々

お、副会長と学園長の倅
どうだった?

粗方終わったところで、他のところに移動していた他の男子達に出会った。
少女のような顔立ちの少年と、眼鏡の青年だった。

松前

こちらは生徒らしきモノはいなかった
そっちも……居ないようだな

有紀

僕達もそれなりには探したんですけど……

二人は、後方の姦しい少女たちに気付くと、軽く呆れた。
奈々がそれを紹介する。

奈々

あれがこっちの見つけた生徒
二年の花園さんと、同じクラスの氷室さん

松前

一人は知っている
やれやれ……
あいつも運に見放されているようだな

副会長と呼ばれた青年は、羽美の名を呼ぶ。
呼ばれた羽美が、顔を向ける。
そこにいたのは、知り合いだった。

羽美

あれ、松前にい
なんでいんの?

松前

それはこちらのセリフだ
羽美、何をしている?

そこに居たのは、現在羽美の面倒を見てくれている遠縁の親戚の一人息子、赤木松前(あかぎまさき)の姿だった。
居候している羽美のひとつ上の三年だ。
ナンセンスな質問に答えるのは愚問だと分かって答えないで、先に進めた。

羽美

誘拐されたの、松前にいも同じだったんだね

松前

まあな……
まさか、お前がいるとは思わなかったが

しみじみ言う二人に互いの連れがアレは誰だと問う。
羽美は空に、松前は連れに軽く教える。

羽美

クーはわたしのこと知ってるよね?
で、今世話になっている所の息子さん
名前は赤木松前、通称松前にい

松前

あいつは俺の家に居候している親戚の娘だ
花園羽美という

簡単に説明を終えると、何故か訝しげにみる二人。
松前と羽美は居心地の悪い気分にある。

ふーん……羽美のお兄さん、なんだ……

有紀

…………

何か警戒しているのか分からないが、羽美達は連れの紹介もしておくことに。
自己紹介するように言う。

……氷室、空です……
よろしく……

有紀

初めまして、ですよね?
僕は小鳥遊有紀(たかなしゆうき)と言います

空は嫌そうな顔をして松前に挨拶して、有紀と名乗る少年は朗らかに南下させて握手を求め、羽美が応じる。

羽美

そっか、松前にいがいれば安心だよ
少しは運がついてきたのかも

松前

だといいがな

羽美が再会を喜ぶと、嘆息混じりで、松前はニタニタしながらこっちを見ている奈々に言う。

松前

会長、これは十中八九『人狼ゲーム』とかいう奴に巻き込まれたと見て、間違いないだろう
例の一件、俺達自身が体験することになったぞ

羽美

じんろうげーむ……?

聞き慣れない単語を聞いて、首を傾げる羽美。
何かを考える有紀。
空は分かっていたように羽美に小さく耳打ちする。

だいじょうぶ、羽美は空が守るから

羽美

よくわからないが、奈々は真剣な顔で頭をかいた。

奈々

やっぱか……
風紀委員長とか書記君も居なくなる前に言っていたもんね
まさか生徒会のトップが全滅するとは……
学校機能するかな

松前

心配はそっちではないだろう?
あいつらなら大丈夫だ
ノウハウは全て叩き込んである

松前

伊達に副会長をしていないからな
そこらへんは信頼してくれ、会長

奈々

うん、ごめんダメだわ
ヘボ副会長とか言われてるくせに信じろとか無理言うなし

松前

…………毎回言うが、それは俺じゃないぞ?

松前と奈々は共通見解を持っているようで、完全に蚊帳の外なのは羽美だけ。
なんなのだ、人狼ゲームとは。
いい加減、イライラしてきた羽美の端末が震えたのは、その時だった。

羽美

ん……?

見下ろすと、そこには手紙のような画面がでており、簡潔に一言、こう書いてあった。

花園羽美さん
貴方の陣営は『第四陣営』です
貴方の役職は『トリックスター』です
ゲームクリア目指して頑張ってください

羽美

咄嗟にポケットに端末を落として、空が覗き込もう登したのを阻止した。
何故か見せてはいけない気がしたのだ。
空が心配そうにどうかしたと聞いてくる。
何でもないと返事をして、誤魔化した。
きっと、これはそのゲームに関する何かなのだ。

何だか分からないが、もう始まっているのかもしれない。
得体の知れない不安を抱えながら、羽美は彼らと共に次なる場所に向かう。

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