先ほどのバーまで戻ると、水樹が笑顔を貼り付けたまま俺に向かって言った。
俺はゆっくりと呼吸を整えて、再びバーカウンターに座った後、無言のまま頷いた。
隣で水実がグラスを揺らしながら、鼻で笑うような冷めた笑顔を俺に向けていた。
恐らく、現実離れした底なしの川を拝まされ、驚愕していた時の俺の顔でも勝手に想像しているのだろう。
ここがあの世に近しい場所なのかはさておき、思い出すと鳥肌が立つほどに恐ろしくもあり美しくもある『身代わりの川』は、地球上のどこでもないと思わすには十分なインパクトがあった。