おい、そっちはどうだ!?
ダメだ、まったく手掛かりなし・・・
アヴィス付近も調べてみよう、お前達は建物の裏側を見に行ってくれ
早朝に隊長から呼び出された私達は捜索活動にあたっていた。
ユウリが行方不明になってしまったのだ。
私達アリア隊が腕にはめている小型発信機にはGPS機能が付けられていて、
緊急時には隊長が居場所をチェックすることができるようになっている。
今朝アリア隊に発信をしようとしたところユウリの発信機の反応がなく、GPS機能も作動しなかったらしい。
なんで私の嫌な予感って当たっちゃうんだろう・・
リリアーヌ、大丈夫か?
カイト・・ごめんなさい、大丈夫よ。昨日の今日だからちょっと心配で・・何かあったのかしら?
ユウリの性格だと、昨日の夜忍び込んだ可能性は高いよな・・・
きゃああああー!!!
おい、早く隊長を呼んでくれ!!!!
ティナの叫び声と切羽詰まったカルマの声が聞こえてきた。
俺が隊長を呼びに行くよ、リリアーヌは先に行ってくれ
分かったわ!
急いで声のする方へ向かうとそこには――――
・・・っ!? え、ユウリ・・なの・・?
リリアーヌ、あまり見ない方がいい・・
木の茂みに変わり果てたユウリの姿があった。
鈍器のようなもので殴られたようで体は酷く損傷しており、周りの木にも血飛沫が飛んでいた。
ティナは泣き崩れてかなり動揺している。
私はショックでその場に座り込んでしまい、カルマがそっと肩を抱き寄せ支えてくれた。
おーい、隊長呼んで来たぞ!
カイトが隊長を連れてこちらへ駆け寄ってきた。
悲惨な状況を目の当たりにしてカイトもその場に立ちすくんでしまった。
こりゃ酷いな・・・
隊長がユウリの傍へ来て黙祷を捧げた。
あとの処理は俺がやる。お前達は応接室で待機していてくれ。
その場を動けないでいるティナを引き摺るようにしてみんなで応接室へと向かった。
ねぇ、昨日ユウリに何があったのかしら・・
分からない、でもおそらく地下に潜入しようとしたのは間違いないんじゃないか?
じゃあ一体誰がユウリを・・・・こんな所でモンスターが出たとは考えにくいわ。
あぁ、それにモンスターによる攻撃ではあんな風にならないだろう。明らかに何かで殴られたような外傷だった。
考えれば考える程謎は深まるばかりで一向に答えは出てこない。
しばらく沈黙が続いていると、隊長が応接室に入ってきた。
隊長!ユウリは一体誰にやられたの!?まさか人型モンスターの仕業じゃないでしょうね・・・私達もあんな風に殺されちゃうの!?
隊長に掴みかかるように問い詰めているティナをみんなで宥めた。
隊長はゆっくりと全員を見渡してから重い口を開ける。
ユウリはおそらくヌラにやられたと思われる。体が全体的に火傷のような炎症を起こしていた。
ヌラって・・・では何かで殴られたような跡がありましたがそれは?
それは・・突き飛ばされた時に木や壁に打ち付けられたからだろう。
カルマの問いに隊長が一瞬顔をしかめたのを私は見逃さなかった。
でも、そんなのおかしいわよ!
ティナ、落ち着いて。ここで言っていても何も変わらないわ。
隊長、少しこの部屋を借りても良いですか?
私も含めみんなまだこの状況を受け入れられていないから・・
あぁ、何かあれば連絡してくれ。俺は念のため昨日の広場を見てくる。
隊長が部屋を出てからティナが私にキツイ口調で咎めた。
ねぇ、さっきのどうして止めたのよ?このまま分からなかったらいずれ私達も・・・
リリアーヌは怖くないの!?
おい、そんな言い方はないだろう。リリアーヌは何も悪くない。
カイトが私を庇うように前に出てティナを睨みつける。
カイトの冷たい視線にティナはビクリと反応し涙目になってしまった。
カイト、言い過ぎよ。ティナごめんね、私だっておかしいと思ったわ。
あの場でもっと問い詰めたかった。
じゃあどうして!?
隊長は意図的に何かを隠しているわ。絶対おかしいもの。あの場で聞いても絶対
教えてくれないだろうから、言うとおりにして出方を見た方がいいわ。
確かに、俺の質問にも歯切れ悪かったな。
多分、俺達がそこまで見ていたと思わなかったんだろうな。
・・・みんなごめんなさい、私動揺して全然気が回らなかった。
いいのよ、でもまさかこんなことになるなんて・・・
そのあとはしばらく誰も言葉を発することができず、重い空気が漂っていた。
ピリリリリリリ・・・・・・
静まった部屋に発信機の音が鳴り響く。
はい、リリアーヌです。
全員いるか?至急応援に来てくれ。広場を見回りしていたらこの前話した
人型モンスターらしきものを見かけたんだが・・追っていた途中で大群のガンボに出くわした。
隊長の声に被さってガンボの鳴き声が聞こえてくる。
分かりました、全員で向かいます。
あぁ、頼んだ。
みんな、急ぎましょう。
あぁ、しかしヌラに引き続きガンボの大量発生とは・・・どうなっているんだ。
私達は表情を引き締めて救援に向かった。