翌日。
私たちは、お昼近くに目を覚ました。
翌日。
私たちは、お昼近くに目を覚ました。
おはよう
うっ、うん
なんだか照れくさいね
私たちは目と目があうと、思わず顔を背けた。
昨夜のことを思い出したからだ。
それは、いくら親友とはいえ顔を赤らめずにはいられない行為であり、そしてどこまでも鮮明でハッキリとした記憶であった。
ごっ、ごはん食べに行こう
うん
えへへ
別にあのことを理由に関係がぎこちなくなったわけではないけれど、それでも、自然と笑えるようになるのには少し時間がかかりそうだった。
さてと
私たちはご飯を食べた後、ヤマイダレさんと外に出た。
昨日、確保した土地を畑にするためだ。
ちなみに、セシリアちゃんたち教会から来た女児やMI6のお姉さんも一緒である。——
※
人工芝をはがしたら、耕しましょう
ヤマイダレさんはテキパキと指示を出した。
はいっ
セシリアちゃんたちはそれを喜んだ。
きゃっきゃと、はしゃぎながら作業にいそしんだ。
ゴミを捨ててくるね
小夜は、はがした芝を台車に載せて駆けまわった。
きれいきれいしましょうね
いつきは、MI6のお姉さんと一緒に女の子たちの世話をした。
そして、私は手押し車で人工芝のはがれたところを耕した。
あはは、気持ちいいな
手押し車は、その先端にスクリューのような歯がとりつけられていた。
それが回転して土をひっくり返した。
私は手押し車を押しながら、ぼんやりとヤマイダレさんを見ていた。
ふう
ヤマイダレさんは、鍬(くわ)で耕していた。
それは手押し車で耕せないような狭い場所や、女の子たちのいるところを耕すためだったのだけれども、しかし、一番の理由はヤマイダレさんが鍬(くわ)を好んだからだった。
こっちのほうが慣れてるのよ
実際、ヤマイダレさんは器用に鍬で耕した。
さすが昭和ヒトケタ生まれ——と、思わず感心してしまった。
ただ、そんな彼女の意外なスキルよりも私が注目したのは、いや、視線を吸引されたのは、ヤマイダレさんのあのむっちりとした下半身だった。
あら、なにか埋まってるのかしら
ヤマイダレさんは、軽作業をするとき相変わらずブルマ姿だった。
そのことについてはもう、私たちは特に意見することはなかったのだけど、それでも、やっぱりあのブルマはエロかった。
ぴちっとしているわけではない。
レオタードや水着のように身体に密着しているわけでもない。
ヤマイダレさんのブルマは、お尻のほうこそ若干ぴっちりしているけれど、下腹部のあたりは布にゆとりがあって、何本かシワが入っていた。それに生地も厚かった。だから下着姿で歩いているのとは、まったく印象が違った。そう。当たり前のことを言うけれど、そもそもブルマは体操用ウェアである。エロくないのである。たぶん。
それなのにエロい
ではなぜヤマイダレさんのブルマ姿がエロいかというと、それはあのだらしなくも不健康な感じのする真っ白な太もものせいだ。
絶対運動してないよなあって感じに、ぷるんぷるんしたあのお尻と太ももが、そう感じさせるのだと私は思うのだ。
いちいちポーズもエロいんだよなあ
私はそんなことをつぶやいた。
その目の前で、ヤマイダレさんは、くにゃっとしゃがみこんだ。
それから、あえぐように空を見上げ、口を半開きにして額の汗をぬぐった。
疲れちゃった
ヤマイダレさんは芝まで這って、そこにぺたんと座った。
タオルで汗を拭きはじめた。
ヤマイダレさんは首筋や腕だけでなく、全身がうっすらと汗でにじんでいた。
しっとりと太ももをしめらせた汗は、なぜか淫靡なそれを思わせた。
………………
私はツバを呑みこんだ。
うん?
ヤマイダレさんと目があった。
彼女はニッコリ笑った。手招きをした。
私は彼女のところまで行き、一緒に休憩することにした。
ねえねえ、智子ちゃん
なんですか?
さっきから私のこと、ずっと視姦してたでしょ
シカン?
目で犯すこと。あなたのイヤらしい視線が、私のお尻から太もも、そして太ももの付け根のあたりまでをも這いまわっていたわよ
なんですか、その言いかたは
と、ため息混じりに責めてはみたけれど。
しかし、なかなか鋭い指摘であった。
私は言葉をつまらせた。
ねえ、昨晩なにがあったか知らないけれど。しゃべってスッキリしたかったら聞くわよ?
えっ
今日の智子ちゃんは、なんだかムラムラしちゃって、目つきが男の人みたいだわ
ほんとですか!?
レイプしそうなオーラがにじみ出てるわよ
まさかっ
私は息を漏らして失笑した。
しかしヤマイダレさんは困り顔でうなずいた。
それから笑顔でうながした。
私は話すことにした。
あの、実は昨晩……。いつきと小夜と3人でチョコ棒で遊んじゃったんですよ
あらっ、じゃあ新しいのほしい?
ヤマイダレさんはそう言って、チョコ棒を私に持たせた。
いったいどこから出したんだろう——そんなことを思いながらも、私はそれを握りしめた。そして言った。
このチョコ棒ってアレの代わり……男性のアレの代わりですよね?
おち○ぽ?
えっ、うん。そうソレ。ソレなんですけど。これってサイズも同じくらいか、もしかしたら男性のアレのほうが大きいんですよね?
まあ、個人差はあると思うけど。たいていは大きいんじゃないかしら
でね、ヤマイダレさん
ああん、太ももなでないでえ
ほう、ここが弱いのか、こうすると気持ちいいのかな
んふぅ
って、なでるかっ!
私はノリ・ツッコミをとりあえずキメると、それからチョコ棒をヤマイダレさんの太ももに当ててこう言った。
エッチって、こんなモノが身体に入ったり出たりするんですよね?
ええ
私たちは中学生だから小さいかもしれないけれど、でも、身体の大きさだけを言えば、ヤマイダレさんやMI6のお姉さんとなら、それほど違わないと思います
ヤマイダレさんは、乳と態度がでかいから大きく見えがちだけれども、実は身長はそれほど高くない。
ヤマイダレさん、チョコ棒を見てください。これって結構奥深くまで入りますよ。おへその裏まで入っちゃうんですよ
ええ
それなのに気持ちいいんですよね? こんなモノが奥深くまで入って、しかも高速で出たり入ったりするのに気持ちいいんですよね? おかしくないですか? それとも私たちもオトナになったら気持ちよくなったりするんですか?
そんなこととても信じられないですけど——と、私はため息をつくように言った。
するとヤマイダレさんは、あわれむように微笑んだ。
それから語りはじめた。
女としてのたしなみを。
日本人としてのつつしみを。
じゅんじゅんとして、女教師のごとく、また母親のごとく。
ねえ、智子ちゃん。そういうことは滅多に口にしてはダメ。恥ずかしいという気持ちをもちなさい
はあ
私は口をとがらせながらも、複雑な気持ちでうなずいた。
お前がそれを言うな——というのもあったし。
今さら正論すぎる正論を言うなよ——というもあった。
それに普段とはまるで違うヤマイダレさんに、私は裏切られたような気持ちになったし、また落胆したのである。
もうちょっと心に余裕とユーモアのある人だと思っていたよ
私は、うらめしそうにつぶやいた。
するとヤマイダレさんは、ごめんねと、やさしく謝った。
それからこう言った。
ねえ、知ってる? 男の人ってね、フィニッシュすると急に冷めた態度をとるのよ
はあ
賢者モードっていうんだけどね、今日の私はそれみたい
……なにかあったんですか?
あっ、これはまたおかしなことを言いだす雰囲気だ。
私はそう思った。
だけど回避できそうになかった。
だから私はめんどくさそうに訊いた。
するとヤマイダレさんは、じわあっとスケベな笑みをした。
私って昨日、CIAの彼女に殴られたじゃない?
ああ、そういえば気絶しましたよね
そのお詫びにね、言うことを聞いてもらったの
何をやらせたんですか?
というより、どんなことをしでかしたのか。
私は嫌な予感がした。
すると案の定、ヤマイダレさんはドヤ顔でこう言った。
立ちバックゴッコよっ
それから、うっとりとした瞳をして空を見上げた。
明らかに昨晩の行為を思い出している顔だった。
立ちバックですか……
私は思わずヤマイダレさんとCIAのお姉さんとの行為を想像してしまった。
しかしそれは、オトナの女同士のべっちゃりとした濃厚でしつこそうなガチのからみあいではなかった。
美少年がヤマイダレさんの肉体にずぶずぶと呑みこまれていくような、そんな女体地獄——ヤマイダレさんはバックから責められる側だというのにそれなのに主導している、まるで食人花が美少年を消化しつくすかのような地獄絵図——私が想像してしまったのは、この世のものならぬ濃艶の秘図だった。
ヤマイダレさんって、童貞が大好物ですよね?
思わず訊いてしまった。
するとヤマイダレさんは、当たり前よといった瞳をして、しかし口では別のことを言った。
どちらかというと、圧倒的なパワーとテクニックでねじ伏せられたいわあ
あっ、はい
その真相はともかくとして——ようするにどっちも好きなんだよね、とも思うのだけれども——それはさておき、ヤマイダレさんの賢者モードは終わり、もとの痴女に戻ったようだった。