俺が美由と出会ったのは、枯葉が舞い散る真冬の墓地だった。
俺はその日、成人したばかりの晴れ姿を母に見せたくて、着慣れないスーツを身にまとい、花束を抱えて墓参りに来ていた。
規則的に並んだ無数のお墓を、左右に分断している小道。
俺は小石と枯葉が散らばったその道のずっと奥にある、母が眠るお墓を目指して歩いていた。
小道を一直線に進んだところには、少しだけ開けた空間がある。
その空間の中央には、この地の主とでも言わんばかりの一本の大きな木がそびえ立ち、木の周りは白く塗られた木製のベンチで囲まれている。
そのベンチに一人の女性が腰掛け、顔を覆って泣いていた。
顔がはっきりと見えたわけではないが、高校生か大学生くらいだろうか。
清潔感のある綺麗なセミロングの髪が風に揺れている様が、物悲しい印象をより一層高めている。
そりゃ墓地なのだから、たとえ空が雲一つなく晴れ晴れとしていようとも、泣いてる人の一人二人いてしかるべきだろう。
その時は気にすることもなく彼女の前を通り過ぎて、先にある母のお墓へと向かった。
墓参りを済ませて、来た道を引き返すと、彼女は同じ場所で未だに泣いていた。
よくよく考えてみると、若い女性がたった一人で泣いているというのは普通じゃない気がした。
恋人でも亡くしたのか。
もしかして、家族を亡くして一人ぼっちなのではないか。
そんなことを考えていると、なんとなく彼女のことが気になってしまった。
俺は物心ついたばかりの頃に事故で父を亡くし、女手一つで俺を育ててくれた母も高校卒業間近に病気で亡くなった。
だから俺は、この時彼女に自分の姿を重ねてしまったんだと思う。