穂波さま

あの烏がどうしたのじゃ?

YATA-CLAWですね

明方

そうだ、ちょっと取ってくるから少年は神様に説明してやってくれ

分かりました

 明方さんが会議室を出ていく。それを見送って、僕は穂波さまにあるものを見せる。

穂波さま

ん? なんじゃ、紙か

 それの見た目はA4サイズのコピー用紙をはがきサイズまで折った紙だ。
 ただ、その頂点3つに爪のような意匠のクリップが付けてある。

これがYATA-CLAW、八咫烏の爪という名前が付いた携帯端末です

 僕が紙の表面をなぞると、起動シークエンスが始まり、紙の上に絵と文字が表示される。
 そういえば、古典ライトノベルを読んでいるところだった。

穂波さま

な、いきなり紙に文字が表示されたのじゃ!

ええ、細かい話はわからないんで省きますけど、簡単にいえばすごくちっちゃい色の付いた墨が、この3つの機械の命令によって移動して、絵と文字を表示してます

穂波さま

なん、じゃと

これがあれば、本も読めますし、漫画も読めますし、電子ゲームもできますし、電話もできます

穂波さま

おお……

明方

説明ありがとさん、持ってきたぞ

 明方さんが会議室に戻ってきた。手には、手のひらサイズの箱がふたつ分。

あ、僕の分もあるんですね

明方

そりゃあな。これから少年も神付きだ。一応、国指定の特別待遇だぞ

そうなんですか

明方

その証拠に、プラチナアカウント付きだ。スパコン並の量子演算処理と保存メモリーが使い放題だぞ

なんと……!

穂波さま

お主のそんなに驚く顔、初めて見たのじゃが、すごいのかそれは

えっと……

 およそ十億円の価値があります、といってもよくわからないだろうなぁ、と思った僕は、

普通の人では手に入らない凄い物です

 と、簡潔に伝えた。

穂波さま

ほほう、わらわの神付きになれて良かったのう

 ふふん、とドヤ顔をする神さま。

ええ、本当に

 何もしていないのに、とは思ったけど、これだけは穂波さまに感謝するしかない。

明方

あとは、神付きコミュニティへの招待コードとか、神さまコミュニティの招待コード。それから、初回の神さまポイントの進呈とかかな

コミュニティがあるんですね

明方

荒神対応の連絡網としても機能してるから、ちゃんと入っておくんだぞ

わかりました

明方

あとの詳しい説明はこのYATAに入ってるから、質問とかあったら俺に連絡してくれ。君たちの担当官にもなってるからな

 と、明方さんはYATAアカウント名が入った名刺を僕に渡した。

ありがとうございます

明方

よし、今日はこれぐらいだ。また一週間以内に来てくれ。神付きのいろはを教えるから

はい、また来ます

穂波さま

また来るのじゃ

明方

変なことはできないと思うが、変なことをしないようにな

しっかり見張っておきます

穂波さま

できないとはなんじゃ!

明方

ははは、じゃあな

 僕は明方さんにお辞儀し、『概念固定体対策科』の部屋から出た。

pagetop