俺は目を閉じる。暗い自室で、更なる暗闇が視界を覆う。

俺は独りだった。孤独。

障りのない静寂が周囲を満たすとともに、ろくでもない思考が頭を満たす。

沙希と手をつないでいても、母に笑われても、谷口と無駄口を叩いていても。俺はきっと孤独だった。

俺は誰とも出会ったことがない。みんな『役割』だ。交換可能性。人の形をしたなにか。

誰でも予想できる程度の未来。『俺』が『俺以外の誰』であろうと、予想されるありきたりな人生。

そんな未来に『俺』はいない。『俺』はきっと『俺』にしかありえない未来にのみ存在する。

そしてそんな未来はこの世に存在しない。だから『役割』だけが『俺』の代わりに未来を生きる。

誰と出会うのも誰と生きるのも、すべて『俺の役割』だ。『俺』は誰とも出会ったことがない。

他の人間は寂しくないのか?怖くないのか?俺はたまらなく怖い。

ならあの少女は?

俺は夕陽に包まれ水夜と名乗った女の子を思い出す。

思い出してはいけないのに。

思い出したってどうしようもないのに。

それでも思考せずにはいられない。

彼女は一人じゃないのか?

一人じゃないなら彼女は『誰』と一緒にいるんだ?

大丈夫、いつも通り。いつも通りだ。

明日も明後日も。その次も。

俺はきっと死に続ける。

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