さっきの会話からしばらく経ち
アリストさんは言った
おーい、ついたぞー
さっきの会話からしばらく経ち
アリストさんは言った
今回の依頼は行ったとおりここの調査だ
調査って言ってもなにがあったとかを報告すればいい
向こうが重要性を判断してくれるからな
向こう、というのはギルドのことだろう
ほえー本当に早く付きましたね
んあ?
ついたのか?
ボルト君はずっと馬車で寝ていた
大丈夫だろうか?
少し不安が残る
そうですね、こんなに近くにあるなんて
本当に早くついたと思う
そんな遺跡が今まで発見されていなかったのが驚きだ
降りましょう
リーダさんの声でグループの皆が馬車から降りる
周りを見ると森が広がっている
そして僕らの視界の中央に不自然に広がった広場
そこには木が生えておらず草すら生えていない
そんな場所に、”それ”はあった
これが入り口だ
地下へと続くタイプの遺跡のようだな
みんな、危険は無いと思うが念のため警戒しておけ
そういってアリストさんを先頭に僕らは遺跡へ入っていく
アリストさんは中をカンテラで照らしながら歩いていく
なんと準備のいいことに全員分持っていた
遺跡の入り口はなんともこじんまりとしたものだった
石の小さい縦長の建物、それも人一人入れば満員だ
その中に階段がある
なんだかすごいです~
そうですね、なんだか不思議な場所です
言った通り遺跡内部は不思議な雰囲気を放っていた
なんか強そうな敵とかでそうっすね!
や、やめてよ怖い事いうの
まぁ、確かに出そうな雰囲気はあるよな
それは確かに思う
でもなんというか敵の気配はまったく感じないのも確かだ
さて、何かあるだろうか
クロウさん、これって・・・
僕の後ろを歩いていたリーダさんが声を掛けてくる
リーダさんは何かを指差していた
なんですか?
・・・これって
カンテラを照らす
そこに何かものがあったわけではない
壁がある
その壁には絵が描かれていた
なんかみつけたか?
・・・こりゃあ
それを見た全員が声を詰まらせる
それに書かれていたのはこの世界に住む人なら誰でも一度は聞いたことがある童話、そして実話だった
”鴉羽の勇者の絵だ”
分かった理由は簡単
そこに書かれていたのは大きな鳥と一人の人間が手を取り合う・・・まぁ正しくは翼と手なのだが
これが何を意味するのか・・・
これって~まさか災厄ですか?
でも~鴉羽の勇者と災厄は敵対関係のはずじゃあ・・・
そういえば僕はラックさんに教えられていて知っているけど人間は普通に神の使いを災厄と認識している
つまり、だ
現在彼女らは自分の認識している歴史と違う歴史が目の前に広がっているということだ
なんか、でも決して悪い雰囲気ではないですよね
そうですね、むしろ仲がよさげな・・・
そう、それには悪い雰囲気は無く手と手を取り合う仲のいい者たちが書かれているだけだ
なるほど、これは報告する必要があるな
もしかしたら大発見だ
まじっすか!?うおおスッゲー!
さらに奥まで足を進める
すぐに行き止まりが来てしまった
だが何も無いわけではない
1つの大きな石に何か文字が書いていた
大分古いな
なになに・・・おいこれってやっぱり大発見だ
アリストさんが言葉を紡ぐに連れて真剣になっていく
何が書いてあるんですか?
我、この場所で友と眠る
名前は書いてないが、これは墓のようだな
というかこの遺跡全体が墓のようだ
そして壁に書いてある鴉羽の勇者の絵
これから連想されるのは・・・
ここから先は言わなくても恐らく想像通りだろう
ここは鴉羽の勇者の遺跡・・・大発見なんてものじゃない
帰るぞお前ら
これは俺たちだけじゃ手に負えない
研究グループに任せよう
は、はい!
僕を含めて皆が頷く
そしてみんなが来た道をまた辿る
その前に僕はもう一度だけあの墓石を見たくてそっちに寄って見る
我、この場所で友と共に眠る
名前は・・・かすれて見えないか
ん?裏に何か・・・
僕は軽く墓石を見回してからあることに気づく
墓石の後ろ側にも文字が書いてある
ほこりをかぶっていて読めないが掃えば読めそうだ
なんて書いてあるんだろう?
”パッパ”と軽く手で埃を落とす
そこには
いつか、魔の者と手を取り合える日が来ることを願う・・・?
これって
鴉羽の勇者にも魔物に友人が?
これは神の使いのことを指しているのかな?
僕と同じように・・・
そしてそれが当たり前になることを願っていた?
僕は少し考えにふける
おーい!早く行くぞ!
あ、はい
僕は皆の方へ歩き出そうとする
そのときだった
地鳴りのような音が響き、大きな揺れが遺跡内に起こる
僕は立っていられずに膝をついてしまった
皆は大丈夫!?
クロウさん!早くこっちへ!
ミラさんの叫び声のようなものが聞こえる
皆は階段にすでにいる
この部屋にいるのは僕だけ
声を上げようとするも大きく響く天井から壁が文字通り”生える”
そのまま壁は僕とみんなを境にするように
そん・・・な
僕は皆と離れ離れになり、最悪なことに遺跡に閉じ込められてしまった
罠はないはずじゃ・・・
だが実際にあった
しかし、遺跡内の変化はそれだけではなかった
あれ?
墓石の後ろに通路が・・・
さっきまで墓石の後ろは壁があったはずなのにそこに壁は無く通路が大きく広がっている
何であったことに気づかなかったというくらい広い通路だ
皆の声は聞こえない
こんなところで死ぬ訳には行かない
進むしか、無いよね
僕は一人で遺跡を再び歩き出した