真山は小暮と加奈子の手を
握りながら叫んだ。
俺は…お前の言う通りだ!
プロレスラーなんだ。
嘘ついて泣いてる場合じゃねえんだよ!
もう一度リングに立たないと、そこを目指さないと…俺が俺じゃ無くなる。
真山は小暮と加奈子の手を
握りながら叫んだ。
先生“方”、お願いします。
もう一度俺をリングに上がらせてください。
何でもします。もう絶対に自分の魂に背くような事はしません。だって俺は
誰よりも
プロレスを愛してる。
それから
カイロプラクティックの資格を
取るまでの一か月間、
小暮は加奈子の指導の下、
資格試験の練習をかねて
毎日病院に通って真山の固くて
大きな足首を回し、
足首回転の技術を黙々と続けた。
真山はその時の新人稽古の要領で
半分面白がって毎日
小暮に悪態をぶつけた。
おいおい、握る力抜けてんぞ?もう回せないのかよ?こんな基礎も出来ねえで一生プロになれるわけねえだろ!?
はい!(容赦ねえなオイ)
おいバカメガネ!
アンタ一体何回同じ事教えれば気が済むの?
パチスロのメダル一枚分くらいの脳みそしかないわけ?
はい(こいつはいつか××す)
そして三年が経った現在。
素晴らしい友情物語!そしてまさに虎の穴!
あんときは資格試験前に腱鞘炎になって肝心の足首回しが当日ままならなかったけどな。
まあ、おかげで足首回転に関してはどんな患者さんにも全然疲れた事はない。
その時の初々しい小暮先生タイムスリップしてお会いしてみたいですねえ。何か弱点が掴めるかもしれません!
何だよそれ。別に俺はいつだって隙だらけの弱い人間さ。それにしても、いつまで待たせるんだろうね。スーパースターさんは?
ごめんなさい。
長らくお持たせしてしまって。
もう準備整いましたので。
リハビリルームに行くと、
まだ真山の姿は無い中、
音楽が流れた。
プロレスラー真山仁の入場曲である。
すると
リハビリルームの扉を開けて、
直立不動の真山が現れた。
杖を使わずに美代子に手を引かれ、
ゆっくり歩いて部屋の中央で止まる。
美代子がそっと手を放す。
真山が体を震わせながら
自力て直立してみせる。
どうよ、先生?
ちゃんと自分がいない時でも運動とサプリメントを欠かさなかった賜物ですね。
当たり前だろ。それがプロだからな。いや、ちげーんだよ。見せてえのは、勝負はこっからなんだよ!
両手を頭の後ろに組んで、
腰を下ろしてスクワットを
始めようとする真山。
小暮が思わず立ち寄って
危ない!ダメだまだ…
うるせえ!勝手にリングに上がってくるんじゃねえ!俺を信じろ!
鬼気迫る表情で小暮を睨む真山。
その瞳には火の玉が
メラメラと燃え走っていた。
唸り声を上げながら
徐々に腰を下ろしていく。
もう一度歯を食いしばって
今度は腰を上げ始める真山。
あと少し、もう少しで!!
続く