第一章
第五~最終話
エルフの家襲撃~魔王城脱出まで

ラファエル視点の
サイドストーリー

にゃー!!!(大変よ!)

ブヒブヒブヒ

 私はエルフの少女に飛びかかり服を引っ張る。

どうしたのかな?

にゃにゃ(家が! エルフの家が襲われているわ!)

 天使であることがバレてはいけないと神様に言われているので、あの豚にしかテレパシーを使えない。
 なので私は、仕方なく豚に向かってそう叫んだ。

猫ちゃんなんか様子がおかしいかな?

ぶひぶひ、ぶひぶひひー!!

え?なんでそんなことわかるのー?

ぶひぶひ、ぶひ!!

にゃ(早く!)

 私は二人を連れて、急いでエルフの家に戻った。

 しかしそこにはもうエルフ一家の姿はなかった。

なんだお前ら?

 ガラのわるい男が話しかけてきた。

みんなはどこ……?

あ? 魔王様の奴隷用に連れてった。ゆっとっけど、お前らがわりーんだぜ。この辺りは魔王様の庭だぞ。勝手に家作りやがって。お前らも来やがれ

 そう言って近づいて来ようとする男に向かって、エルフ少女は臨戦態勢をとる。

アイスニードル!

 エルフ少女は男に向けて氷の刃らしき魔法を放った。

 しかし、男の目の前で空中停止し、バラバラと砕け散る。

おっと、いきなり危ねーじゃねーか、お嬢ちゃん

なー!?

ぶひひひ!?

エアースラッシュ!!

ははははは、無駄だ! 無駄だよ嬢ちゃん!

 次にヒーチが放った魔法も、男をすり抜け、後ろの木を切り倒した。

なんで効かないのかな!?

そりゃ俺が強いからだろ! 弱い奴は強い奴に従ってればいんだよ

ぶひっ……

なんだお前? 人族か? ちょっと面構えが良いからって、やんのかコラ?

 男が豚に向かって近づいていく。

にゃ(どいて)

 弱っちいくせに目立つことしないで欲しいわ。
 仕方ない。
 少女も豚も私が助けるしかないようね。

 颯爽と前に出て、巨大なファイアボールを作り始める私。

だめー! やめて!

にゃ?(どうして? 私なら殺れるわ)

あっはっは! ばかな猫だ! 森でそんな魔法使ったら全てが燃えてしまうからな

ぶひ……ぶひぶひぶひぶひ

ありがと、猫ちゃん。もういいんだ

にゃ(わかったわ)

 私は集中を解き火の玉を空中へと分散させた。

 自分の身より家のほうが大事だと言うのね。
 やはり下界の者たちは命を粗末にしすぎる。
 弱いのよ。
 みんなが自分の命を一番に考えていれば死者も減るものを。



 そんなことを考えていると、いきなり男は私に向けて魔法を放ってきた。

にゃぎゃっ

 衝撃波のような魔法。
 私は5メートルほど吹き飛ばされた。

 ありえない……。
 天使の私に向かって何てことを。
 絶対に許さないわ。

ちょっと! 動物にまでそんなことしなくていいんじゃないかな!

ああ? その猫、なんか危ねーだろ? 生かしとくすべはねえ

 この男、やっかい。
 今の私ではやられてしまうわ。
 まだ死ぬわけにはいかない。
 ここは一旦ひくしかないようね。
 女の恨みは恐ろしいということを、いつか思い知らせてやるわ……
 そう考えながら私は草むらへと身を隠す。

ぶひぶひぶひ! ぶひひ!

 豚が何かブヒブヒ言ってるけど聞こえない。

おいおい、行っちまったじゃねーかよ! どうしてくれんだコラ?

 男は豚の胸ぐらを掴み、ガンを垂れている。

ぶ、ぶひ、ぶひぶひひ

もう止めてください。降伏します

おうおう、だから素直に最初っからそうしてればいいのによお! ほらっ、魔王城へ向かうぞ!

……

 そして二人は、魔族の男に連れて行かれた——

さて、どうしたものか

 私も天使の端くれだから見過ごすわけにもいかないし。
 しかしあの豚も哀れね。
 デブで醜くて、弱っちいの。
 神様も、もっと平等に作ってあげたらよかったのに。
 てか、あれを助けなきゃ私も堕天使にされてしまうわ。
 あの豚、名前なんだっけ?
 ブタ雄?
 キモ雄?
 あ、デブ雄かな?
 うーん……思い出せないわ。
 まあなんでもいいのだけれど。

魔王城ね……

 悪魔でも住んでいるというの?
 悪魔なんて所詮は、堕ちた下級天使のなれの果てじゃない。
 ウリエルがちゃんと管理できていないから蔓延ってるんじゃないの。

ぶわっくしょん!!

……風邪かの?

帰ったらあいつ、しばくわ

 その時、外に誰かの気配を感じた。

 外を覗くと三人の人影が見える。

おっ、あったあった!

ここがエルフ一族の住処?

ええ、そのはず

魔族では無さそう……

(様子見ね……)

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