ちわーっ! 誰かいるかー?

もうちょっと優しくノックなさいよ

シン……? オレもシン

誰もいないようね

ちょっとシン……勝手に入って大丈夫?

おーい! 誰かいねーかー?

にゃー

猫たーん! きゃわわ!!

なんだ、猫しかいねーのか?

人の気配が無いわね

にゃー

猫たん! あたしたち、王国の任務でエルフ一家を保護しに来たんだけど、どこにいるか知らない?

にゃー

ばーか、猫に聞いて分かるわけないじゃん。頭悪いんじゃねーのシェリー

あんたにだけは言われたくないわ!!

(なるほど……魔族の仲間ではなさそうね)

(でも、エルフたちが魔王城に連れ去られたことをどうやって伝えようかしら)

みんなでかくれんぼでもしてんじゃねーの?  オレ、その辺探してくるわ

ちょ、待ちなさいよ! もう!

(ふむ、とりあえず、あの一番バカそうな少年を利用するか)

 私はエルフの家にあった人形を咥えて、少年を追い駆けた。

おーい! エルフのみんなー! もーいーかいー!?

(よし)

 人形を置き、後ろに隠れる私。

おい、そこのキミ

ん!? 今、頭の中で声がしたぞ!?

 テレパシーで背後から少年に語り掛ける。

そうだ、キミだ

やべえ、オレってば、友達が欲しすぎて……

ついに頭の中で『エア友達』作っちまったかも!?

ちがうわよ!

!? この人形が喋ってるのか!?

ああ。俺だよ、俺

も、もしかして……

親父か?

そ、そうだ、親父だ

 なるほど、オレオレ詐欺はこうやってするのね。勉強になったわ。

(※良い子はマネしちゃいけません)

今はただの『はにわ』になってしまっているけれど、親父だ

お……親父!! 会いたかったぜ……!!

 はにわを抱きしめる少年。
 この人、信じるの早すぎ。

 親父さんに似ているのだろうか。
 はにわ。

あ、すみません、今は感動の再会とかいいんで

親父ぃ!

 私は本題へと話を戻す。

エルフ一家は、魔王城に連れて行かれたの

え、まじ?

まじよ

わかった! いま助けにいく!

 一人で走り出す少年。

ちょい!

貴方だけじゃ心もとないから、さっきの仲間を連れて行くのよ

行くのよ? なんか……女言葉じゃね? 本当に親父なのか?

オ、オネエに目覚めたのよ!

なら仕方ねえか。オレの仲間を紹介してやるぜ!

 割り切るの、はやっ!

ただ、私がこうして語り掛けてることは秘密にしておいて?

なんで?

バレたら堕天使……いえ、はにわにされてしまうのよ!

もう、なってるじゃん

めんどくさいわね! なんでもいいから早くしなさい、貴方の脳みそは、カニミソなの!?

親父……

なによ!

カニミソはあれ、カニの肝臓とかなんだぜ……しらねーの?

なんか、地味に腹立つわね、あなた

 悪気が無いバカほど、やっかいなものは無いと言うけれど。まためんどくさい人を選んでしまったかもしれないわ。

 この先、大丈夫かしら。

 こうして、カニミソ少年と心優しき天使の豚救出作戦が始動した。

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