僕がこの学校に転入してきて二ヶ月半が過ぎた。
もうすぐクリスマスがやってくる。
まあ当然ながら、一緒に聖夜を楽しんでくれる彼女などいるわけがない。
今年も家族と過ごすのかと思うと、気が重くなった。
僕はふと、山根さんのことを考えた。
図書室で山根さんと二人きりのところを、アキオ君とホアチャー君に目撃されたあの日から、僕は意識的に山根さんを避け続けていた。
山根さんとすれ違っても、お互い声をかけることなどなくなった。
山根さんのことが嫌いになったわけじゃない。
むしろあのまま何もなければ、お友達になれたと思う。
だが、ホアチャー君からはイケてないと言われ、アキオ君もその意見に同調し、変な二人組からは『琴葉たん』などと呼ばれている。
そんな山根さんと一緒にいると、またバカにされそうで、それが怖かった。
休み時間、僕は山根さんの方に目を向けた。
相変わらず周りには誰もおらず、一人で何かを書いている。
プロットというやつを書いているのだろう。
山根さんは、教室ではプロットしか書かないことにしているそうだ。
中学のときに教室で絵を描いていた際、その絵をネタに何度もからかわれたらしい。
それ以来、教室で絵を描くのが怖くなったのだと図書室で僕に話してくれた。
やはり漫画はオタクのイメージが強くて、馬鹿にされやすいジャンルなのだろうか。