一時間目が始まり、最初の方は意識があったんだが…
ふぁ~よく寝た~
一時間目が始まり、最初の方は意識があったんだが…
気づいた時には、昼休みに突入していた。
お前凄いな。一時間目から今まで、一度も起きずにずっとよだれ垂らして寝てたんだもんな
意識がまだハッキリとは戻らないなか、重たい頭を横に向けて声の主の方に顔を向けた。
あ…延彦…おはよ…zzz
寝るのかよ!
再度延彦に起こしてもらい、昼飯を食べることにした。
コイツがいなかったら、昼飯が抜きになっていたかもな。
お前の弁当、いつ見ても美味しそうだよな
ん…ほうは?
そーだろーよ。可愛い妹が愛情込めて作ってくれてるんだからよ
いいはほ~
まあ、それはいいとしてだな、食べ物くらい飲み込んでから話せよな。何言ってんのか全然わかんねー
とりあえず、口の中にあるものをお茶で流し込んだ。
てか、俺が口の中にご飯を詰め込んでるのに話しかけたのお前だよね? なんで、俺が一方的に悪いようになってるんだよ!
まあ、それはそれとして…
延彦は改まったように椅子を座り直し、1つ咳をした。
聞いたか?
何をだよ?
このクラスに転校生が来ることをだ
ふーん、随分と時期外れだな
今は4月。時期としてはいいのだが、あと6日で5月に突入すると言う少しおかしな時期である。
まあ、時期が外れてる事に関しては、別にいいんだが…
じゃあなんだよ
その子が今日学校に来てるのを俺、見たんだよ。しかも、女の子!!
で?
すっげー可愛かった
だから?
それだけだが…少し、反応薄くないかい?
当たり前だ。コイツの趣味的にどうせまた、「可愛い妹属性きたー!」とか言うんだろうよ!
人の事言えないけど…。
お前の事だから、どうせ人の事ロリコン扱いしてるんだろ?
お、凄いなお前! 俺の考えてることわかるのか?
ボチボチな。お前にだけは思われたくないが!!
ふふ、それは俺に対しての最高の褒め言葉だ!
絶句している延彦にドヤ顔をお見舞いしてやった。
ゲホン。そ、その話は置くとして、一般的な意味で可愛い奴が来たんだって!
お、結構俺の言葉が効いたようだ。
気分もいいし、今日ぐらいは信じることにしよう。
で、どんな感じの子なの?
それはだな、髪型が…
おーい、こんな所にいたのかよ! 早くしろよな、先生がマジギレだぞ?
他クラスの男子生徒が、話の途中なのにも関わらず、割って入ってきた。
あー! 委員会の仕事あるのすっかり忘れてた!
え、続きは?
わり~、放課後に話そうぜ
そう言い残し、延彦は行ってしまった。
最初は興味が無かったが、いざ聞くとなって打ち切られると、続きが気になるな。
結局、延彦は放課後も呼び出され、俺に転校生の話をすることがなかった。
そして、放課後。
ふぁ~、今日もよく寝たな~
断っておくが、登校中ではない。下校中だ。
信一さ~、何のために学校行ってるの? バカなの?
ん~、なんとなくとしか言えないな~。あと、バカなのは自分が一番わかってるから言うのやめてもらえるかな?
じゃあさ、なんで中学まで頑張ってた剣道やめちゃったの?クズ人間だから?
おい、さっきよりも言葉が酷くなってるぞ
寝起きで頭がボーッとしてる中、酷い言葉を浴びながら、家に向かって歩いている。
しかも、自分の鞄だけではなく、隣で一緒に歩いている奴の荷物まで持たされている。これではまるでパシリのようだ。
無駄に大きい段ボールに、これでもかとチョコレートが入っている。
・・・・・重い!
そろそろ重いから代わって頂きたいのですが…
あと少しだから頑張って
なんだよ、その笑みは!
これ、俺の荷物ではないのですが…
なに、男なのに弱音吐いてるの? あと少しぐらい頑張りなさいよ。このヘタレ
確かに、あと少しかもしれない。
でも、運ぶ所ってマンションじゃん。
しかも、七階じゃん。
それなら、エレベーター使えば済むかもしれないけどさ…。
今、故障中じゃん!!
あー、もうやだ持ちたくない!
しかも、何でヘタレ扱いされて持たないきゃならんのだ!
ふざけるな!!
…と心で思うだけにして、大人しく従うか。
反抗したら、またやられそうだしね。
…まだまだゴールまでの道のりは遠そうです。
それより実(みのり)さーん、このチョコレートって何に使うんですか?
は? 何であんた何かに教えなきゃいけないの? 人に聞くより、まずは自分で考えなさいよね! このサル知能
うん、おかしいよね!
なんで、聞いただけでここまで言われなきゃいけないんだよ!
しょ、しょうがないから教えてあげてもいいんだけどね! 今回だけよ!!
あ、別に言いたくないなら言わなくて結構です
しょうがないも、くそもあるか‥‥
イッテ~~~~~~~~~~!!
一瞬の事で、俺も少し戸惑っている。
でもさ、いきなりだよ?
荷物持ってる人間の足に、五キロの重りを落とすのは違うよね?
てか、その重りどこから出した!
あっれ~、どーしたの?
うっぜー!
わざと臭いのがたまらなくウザい!
このチョコレートはね、部活で作り過ぎちゃって、部員全員でジャンケンをして負けた人がもって帰る事になってて‥
負けちゃった。テヘ
あー、それは大変でしたねー
そんな事知るかよ!
しかも、最後のテヘがまたウゼー!
あー、持つんじゃなかったな~。
そうこうしているうちに、何とか早川家の玄関前に到着した。
ふー、やっと着いた~
あ、あのさ。持ってきてくれたお礼に…チョコレート…一つ…あげる…
俺は迷わず答えた。
俺、甘いもの苦手だからいらねー
刹那、俺のお腹に腹痛が走った。
だってさ、このクソ女、俺に手加減なく、頭突きしてるんだもん。
ぶふぁ!!
いいから…もらいなさいよ…
あ…じゃあ…妹への…手土産ブハ!
今度は顔への強烈なパンチだった。
鼻血ブーだぜ! ワイルドだろ~。
・・・なわけあるか!!!
何がワイルドだよ! メッチャダサいわ!
もー知らない!
勢いよくドアが閉められ、そのドアの前で、俺はうずくまった。
俺をこんなになるまで痛め付けた女の名前は、早川実(はやかわみのり)という。
ポニーテールが似合う、小学校からの幼馴染みで、クラスは隣の2組。
帰りは都合が合えば一緒に帰らされて…帰っている。
部活は料理同好会で、先輩が誰もいないので部長をやっていると聞いた事がある。
あくまで、本人に聞いたわけではないので、嘘か本当か分からないのだが‥。
まあ、俺には関係ないがな。
右手にチョコレートを持って、俺はマンションを出た。
正確には、実が玄関に投げ捨てたチョコレートを、もったいないから拾ってきた。
このチョコレートは妹と二人で食べる事にするか。
…いや、これはやっぱり一人で食べよう。
俺の妹に、こんな危ないものは食べさせられないよね。
マンションを出て2分後、俺は自宅に到着した。
実の家から俺の家までは、歩いてすぐの距離にある。
近いから荷物も持ってあげたんだけどね。
ただいま~
俺は玄関に上がって、すぐにリビングへと向かった。
あ、兄さんお帰りなさい
ただいま、美智瑠
俺の妹、大野美智瑠(おおのみちる)はかなり可愛い。
今年で15歳になる…だが、訳あって学校には行かず、共働きの親に代わって、ずっと家で家事をこなしている。
最初に断っておくが、俺の妹に手を出した奴は俺が殺す。
お風呂、温めておいたから入ってきて。それからご飯にしよう
いつもありがとな
いいよ、どうせいつも家にいるし
俺はもう一度お礼を言って、お風呂に入った。
ふー、今日も疲れたな~
お風呂に入りながら、おおきな溜め息をついた。
全ての授業を寝た俺が、こんな事を言ったと先生が知ったら怒るだろうな~(笑)
お風呂から出て、美智瑠が作ってくれた、和食を二人で食べた。
美智瑠の料理が美味しすぎて、兄ちゃん、ご飯を3杯もお代わりしちゃったよ。
そのあと、少しリビングでゆったりして、俺は自分の部屋に向かった。
そのまま勉強をするわけでもなく、ベッドに横になり、「今日も1日色々あったな~」と自分の中で今日を振り替える。
その時にふと、あることを思い出した。
転校生ってどんな子なんだろう…
やっぱり、気になるものは気になる。
まあ、明日になればわかるから、それまで我慢をすればいいんだろうけど…。
あ、もう1つ大事な事を忘れていた。
自己紹介がまだだったね。
俺の名前は大野信一(おおのしんいち)。
・・・
それくらいしか出てくる自己紹介がない。
そんな自分が恥ずかしいです。
と、とりあえず、明日は早いので、今日は寝ることにしよう。
本当に自分が情けない…。
翌朝、俺は朝イチで学校にやってきた。
まだ、誰もいない校門をくぐり、クラスへと向かった。
我がクラスには日花(にっか)という、朝イチでクラスに行き、花に水をあげなければいけない仕事がある。
・・・
意味わかんねーよ。
7時30分には仕事を終わらせておけとか!
残りの一時間何するんだよ!
まあ、クラスのルールなのでとりあえずは来たけど…。
みんな本当にやってるの?
今日、先生…は可愛いから許して、委員くんに抗議しよう。
クラスの前に到着した俺は、鍵でドアを…開いてる?
おかしいな? いつもはこんな時間に来るのは日花の人ぐらいなものなのに…。
恐る恐る、ドアを開けて中を見た。
え…
ドアを開けた先には、見た事のない女の子がいた。
俺の中から、完全に言葉が消えていくのを実感した。
髪型はショートカット、まっしろで透き通るような、肌をしている。目も大きく、今にも吸い込まれそうに思えた。
結論を言うと、とても可愛いかった。
でも‥
何で上半身、ブラしか着けてないの!!
その時だった。
・・・・
彼女と目があった。
距離はそんなに遠くない。
目と鼻の先で、上半身を脱いでいる女性が一人。
うん、これはまずいね。
キャーーーーー!!
彼女は全力疾走でこっちに来て、
俺の頬に強烈な一打が炸裂した。
同時に、俺の意識も一気に吹っ飛んだのだった。