貴方と出会って以降、
一度も外出することが無かった私。
初めての外出だけど楽しくない。
だって、貴方が一緒じゃないから・・・。

To Journalize

はぁ~

きっと貴方は私が居なくても
あの子と2人きりで
楽しくやってるんだろうなぁ~。

貴方の事を想うと、胸が痛い!

ID:50000

あれ~?
おねぇちゃんも、ドコか悪いの?

ドコが悪いのか、私には分からないの。
急に連れて来られたからねぇ。

ID:50000

ぷぅ~!
つまんない。

ごめんね。

それにしても、まだ小さいよね。
なんで、ココに居るの?

ID:50000

小さいって、言うな~!
ココに居るって事は、
どこか壊れてるんだよ~。
年上なんだから、察してよ。

それも、そっか。

ID:20000

あら、そこの二人。
こんなところでも、随分楽しそうね!
私も、まぜてよ!

順番くるまで、暇だからねぇ~!
一緒にお話ししましょ!

ID:50000

わ~い!
もう一人、おねぇちゃんが増えた!!

ID:20000

よろしくね!

偶然の巡り会わせで出会った3人は、
普段はどんな事をして、過ごしているか?とか
どんな時が楽しいのか?とか
ココに来るまでの経緯とかを話して
名前を呼ばれるまでの時間を潰していた。

作業員A

IDが20000番台の方は、
こちらのコンベアーにお乗り下さい!

ID:20000

呼ばれたみたい。
また会えるか分からないけど・・・。
バイバイ!

次は違う場所で、会いたいね!
バイバ~イ!

ID:50000

げぇんきぃになってね~

ID:20000

ちょっと、泣きすぎだから!
過剰演出は要らないのよ。

ID:50000

ちっ。
バレたか。

騙された~!!

ID:20000

ハハ

ID:50000

おねぇちゃん。
バイバイ、またね!

そう言って2人は、ID:20000に別れを告げた。
もう、会えないかも知れないけど。

作業員B

そういえば
20000番台ってドコが悪いんだい?

作業員A

大きな声じゃ言えないけど、
他の製品に使うパーツを、
組み込んだらしいよ。

作業員B

それじゃ~、ドコも悪くないって事?

作業員A

いや、それがなぁ~
そうでもないらしいぞ!

作業員A

そのパーツを使ってる他の製品で、
発火事故が起きたらしいよ!

作業員B

マジかよ!

作業員A

っで、
この製品で発火事故が起きる前に
回収したって感じかなぁ~

作業員B

消費者はこの製品に、このパーツが
使われているの知ってるのかなぁ~?

作業員A

知らないと思うよ!
使う筈の無いパーツなんだから。

作業員B

そっか~。
それにしてもこの作業中に、
発火とかしないよな。

作業員A

それな。
心配だわぁ~。

作業員A

交換完了!

作業員B

じゃ~、次のチームに引き継ぐか!

ID:20000

私は何故、ココに居るんだろう?
その前に、私は誰なの?

ID:20000

オ・モ・イ・ダ・セ・ナ・イ。

ID:20000はチップを交換された為、
それまでの記憶がリセットされてしまったようだ。
それでも、大丈夫!
配送チームが、家まで送迎を行うから・・・。

作業員A

ID:50000番台の方はコチラですよ~

作業員B

なぁ~コレって、
最近出荷されたばかりじゃないか?

作業員A

そうだよ!

作業員B

なんでいきなり、ココに来るんだ?

作業員A

それはなぁ~・・・。

工場長

お前ら!
サボってたら、給料やらんぞ!

作業員A

すみません!
手は動かしてます!

作業員B

私もです!

工場長

んなら、いいや!
最近の奴は、
目を離すとサボるからな~。
定形文だから、気にするな!

作業員A

はい

作業員B

はい

工場長

そこのお前!
コレの事、気にしてたけど、
教えてやろ~か?

作業員B

聞きたいです!

工場長

話してやるけど、手は動かせよ~。

作業員B

はい!

工場長

コイツはな~、
使い物にならないんだよ。

ID:50000

ちょっと、イタイんだけど。
離してよ!

作業員B

何でですか?
同じ工場から出荷されたものですよね?

工場長

あっ、そうか。
お前らは下っ端だから、知らんのか。

工場長

コイツは、国産じゃね~よ!
コストダウンの為に、
アッチの国で作った代物だ!

作業員A

消費者だましたんですか?

作業員B

え!
ヤバくないっすか?

工場長

お前ら~
聞いちゃったから、共犯だぞ!
色々ヤバイんだって。

作業員A

・・・

作業員B

・・・

ID:50000

イタイんだから、離してよ!

工場長

アッチの国で作ったところまでは
良かったんだけどなぁ~。

作業員B

フツーに、良くないでしょ!

工場長

こっちが依頼していないパーツまで
くっつけて組み立てやがったんだよ。

工場長

おかし~な。
おかし~なって思ったんだよ!
コレを購入した人からのクレームが
鳴り止まないんだよ。

作業員A

クレームの内容は?

工場長

コレを買った次の日から、
変なセールスが、
後を絶たないらしいんだとさぁ~。

作業員B

コレと変なセールスは
関係ないじゃないですか!

工場長

最初はみんなそう思って、
相手にしなかったさぁ~。

工場長

だけどなぁ~
このIDの製品を買った人の9割から
同じ内容のクレームだぞ!
天才バッターも驚愕のヒット率だ!

工場長

まぁ~、
調べるわな~。
それで見つかったんだよ。
このチップが!!

作業員A

っで、そのチップは何ですか?

作業員B

納品検査しないって、
ザルすぎじゃないですか。
この会社、ヤバイっすね!

工場長

スリル満点の
ブラック企業だからなぁ~。
そもそも、面接のときに聞いただろう?
もしも入社した会社がブラックだと
分かったらどうしますかって?

工場長

その回答で「通報」って言う単語
それを言わなかった奴が
ココに居るんだからなぁ~
あきらめろ!!

作業員A

なんすか、その採用基準。

作業員B

あの質問は、
そう言う意味だったのか・・・。

工場長

っま、それは良いや!
それでこのパーツはナント!
声と位置を知らせる
優れものだったんさ。

つまりだ
購入者の情報が筒抜けだったから、
購入者に寄り沿った形のセールスが
家にやって来たってわけさぁ。

作業員A

なるほど

作業員B

そうなんですか・・・

工場長

それを知った社長が、
ウチの製品で儲けるなんて許さん!
って怒って、全品回収になったんさ!

工場長

ただこのチップは優秀だから、
奇麗にはずして回収しろって、
上からのお達しだ!
いいかお前ら、慎重に扱えよ!

作業員A

このチップ集めて、どうするんだよ?

作業員B

一刻も早く、辞めたい。
けど、話し聞いちゃったし言えない。

作業員B

ちなみに、本体はどうするんですか?

工場長

他にどんな仕掛けがあるか、分からん。
だから、完全に壊して処分だ!

作業員A

はい

作業員B

そうなんですね。

ID:50000

私はスクラップなのね・・・。
だから、雑に扱われたんだ。
グスン。

チップを回収されたID:50000は
コンベアーで流された!

作業員A

おい、なんか聞こえなかったか?

作業員B

気のせいっすよ!

工場長

いいから、作業に集中しろよ

あの声は確かに、ID:50000の声だった。
私には分かる。
私はどうなってしまうのか?
そんな事を思うと、恐怖で逃げ出したかった。
だけど、私の思いとは裏腹にコンベアーは進む!
貴方にもう一度会いたい。
生きて帰りたい。
ただただ、願うばかりだった。

作業員A

ID:X0000番台の方はコチラで~す

ちびりそうだよ!

作業員B

ん~

作業員A

こんな感じか~

一瞬の出来事で、
何が行われたか分からなかった。

アレレ、もう終わったの?

私は生きている!

私の好きな人は貴方で、
貴方の元に帰る!

そういいながら、自分自身をテストしていく私。
記憶も正常だ!
今までの身体の不調が嘘みたいに元気だ!

結局のところ、何を修理されたか
分からないけど、これで帰れるんだね!

今から帰ります!

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