貴方はいつだって、優しかった。
私にも他人にもね。
そして、その優しさが私にとって辛い時があった。
たとえ私に向けられたものだとしても・・・。
貴方はいつだって、優しかった。
私にも他人にもね。
そして、その優しさが私にとって辛い時があった。
たとえ私に向けられたものだとしても・・・。
Kindness can sometimes
end up hurting a person
今日もダメだ～！
なんだか、気力が湧かない。
不調になってから幾日が経過したが、
相変わらず改善の兆しが見えなかった。
ちょっと心配だな～
結構長引いているみたいだけど・・・。
ちょっと買い物に行ってくるわ。
ふぁ～い。
そう言って、貴方は心配そうに家を後にした。
私の気持ちとは裏腹に・・・。
～ショッピングモール～
俺らの子供のころには、
こんなのが建つなんてさぁ～
思ってもみなかったよな！
あぁ、確かに！
ガキの頃にあったらよかったのに。
ガキの頃じゃ、金ないからなぁ～
あまり遊べないじゃん！
それもそうだな。
他愛も無い会話をしながら、売り場を探す２人
そういえば、今日は何を買うんだっけ？
お掃除ロボットを見ようかと思ってね！
そっか！
ちょっと待って、あの店入ろうぜ！
お洒落な店だな～
店内を物色して、お目当ての商品を探す二人。
おぉ～。
あったぞ、あった！
どれだよ？
これこれ！
そう言って、一体のロボットを指さす！
ロボットの性能一覧には
『床◎ 窓◎ 会話◎』と書いてあった。
これは確かに凄いや！
会話機能が付いているなら、
一人暮らしも淋しくないや。
けど、見た目がねぇ～・・・。
あと、邪魔にならんか？
そうか？
俺は好きだぞ、この格好！
それに、値段がヤバイ！
これ、一般人買えね～よ！
やっぱ、無理か～
60万なんて、手が出ないよな～
ネタとしては面白いけどな・・・。
おっ、ならアレはどうだ！
この店で一番安いぞ！
そういうと、奥の方の商品を指さした。
ちょっと待て～
もしかして、コレの事か？
それそれ
待て待て～
箒なんて時代遅れも、いいとこだろ～が
ワガママだな～
当初の目的、忘れてるやん！
手動じゃん！
じゃぁ～、アレはどうだ！
デザイン重視で、機能が疎かな掃除機
いや、あれは無いな。
箒より無いわ。
仕方ないなぁ～
これなら文句ないだと思うけど。
20XX式自動掃除ロボット
なんだかデザインが、
ごちゃごちゃしてるけどなぁ～
デザインは、１台ごとに違うらしいよ！
今はコレしか残って無いみたい。
まぁ～、いいか。
値段も手頃だし、
１台しか残ってないからコレにするよ。
目的の物を購入した貴方は
友達と別れて家路につく。
近づく足音に期待をしながら、一人家で待つ私。
玄関を開けた瞬間に駆けつけたいのに
今は動く気力すら無い。
この音は・・・
もう少し、あと少しで会える。
ただいま！
帰ってきたら、元気になってる・・・。
なんて事は無いよね、やっぱり。
貴方の声にホットしたのも束の間、
私は貴方の異変に気付いてしまった。
そして、落胆した。
ちょっと・・・。
一緒に居るのは誰？
私ではもうダメって事？
嫌だよ・・・。
今日からお掃除は、この子に任せよう！
お掃除ロボットが、勢いよく掃除を始める。
私はそれを、傍観する事しか出来なかった。
貴方にとって私は、
それだけの価値しかなかったって事ね！
所詮、取り換えがきくのだから・・・。
私にとって貴方は特別なのに・・・。
さてと、
新しいお掃除ロボットも買ったし
この子を工場で直してもらおう。
この子のIDを見たら、
リコール対象商品だったから。
それにしても、
すぐ壊れるって評判になってたのに
半年も壊れなかったよ！
早く直して、ウチに戻ってくるんだぞ！
えっ！
廃棄される事を１ミリも疑わなかった私にとって
思いがけない言葉だった。
戻って来れる。
また、貴方と暮らせる。
私はそう思うと涕(なみだ)が止まらなかった。
一日も早く帰ってこよう・・・
そう誓ったのであった。
