佑都

…あ、俺宛に手紙来てる…誰からだ?

今まで、自慢じゃないが俺宛の手紙なんてそうそうなかったからな。
こうして自分の元に手紙が来ると、嬉しいものだ。

…あいつらには子供か、と言われそうだが。

そして、俺は封を開けて、中身を取り出した。

御無沙汰。
そちらの方は繁盛しているのかしら?
こちらは…そうね、縁に沿っては順調かしら。

今回、手紙を送ったのは他でも無いわ…
この前、店にどうにかして欲しいと禍物が持ち込まれたの。

普段なら某めがね君に任せるのだけれど、今回のは触れさせることも近づけさせることも避けたいの。

それに、私もそろそろ…

取り敢えず送らせてもらうわ。

御代は解決してから送るわ、ヨロシクね♪

ー追伸ー

オーナーにまた美味しいウィスキーを呑もうと伝えておいて。

美人の某 侑子より

読み終わった直後、足元でコトン、という音と共に、紅色の箱が現れた。

…見るだけで禍々しい感覚が襲ってくる。

まあ俺は、特に何も思わないけどな。
俺の種族は所謂【悪い部類】のものだから。

ただ、ここの事務所には【良い部類】の奴が約2名ほどいる。
最近入った自称地縛霊も、今はどっちかと言うと【良い部類】だ。

まあ、これの送り主はそれを分かった上でうちに寄越したのだろう。

…オーナーがそいつらを守ると見越して。

ここの土地は親父の域。

そこにこんな異物が入り込んだところで親父は気にも留めない。

だが、害を及ぼす場合であるならば、容赦なく潰す。

正直に言おう。

あの時の魔女と名高い送り主がこちらにぶん投げたような面倒なもの、

俺はオーナーにぶん投げたい。

でもそれを実行したところで

「お前への依頼だろうが」と、一蹴されるのは目に見えている。

…仕方がない。

みんなのところに持って行こう。

俺は全員を集めて訳を話し、今は円になって座っている。

その真ん中に、例の箱はあった。

…僕ちょっとそれ距離置いていい?

凍牙

…悪りぃ、俺も距離置いていいか

立哉

すいませんちょっと俺もいいですか

3人が箱から離れた。

おい部屋の隅まで行くなよ、離れすぎだろ。

…こうなることは分かってたけども。

彩都

なぁこれ開けてみてもいいか?

佑都

ああ、いいと思う。
俺も中身確認してないんだ

ここに来るまで箱の外面だけ見てたわ。

彩都が躊躇いもせずあっさりと蓋を外した。

中にあったのは…

佑都

…能面?

彩都

…能面だな

佑都

…翁?

彩都

…翁だな

えっ、どう解決しろと。

壊せばいいのか。

凍牙

能面と翁は聞こえた

翁の能面?

立哉

聞こえ辛いんでもう少し大きな声で…

彩都

じゃあこっち来れば?

3人が無理、とハモった。

彩都

お前らなぁ…

つか、これマジでどうしよう。

壊せばいいのかね。

解決方法:破壊、でいいか?

凍牙

いやもう絶対無理だから

彩都

お前俺の弟のなんだからいけるだろ

凍牙

無理俺お袋側の種族だから親父側の種族のお前と違うから

彩都

それでも半分はこっち側だろうが!

…いや、でもただ壊すだけってのもどうなんだろう。

あまりにも簡単すぎるような…

彩都

おいそこの幽霊隠れんな出てこい

立哉

見逃してくださいませお代官様!!

彩都

誰がお代官様だコラ

んー…

→壊す
→壊す
→壊す

…ダメだ選択肢が壊すしかなかった。

彩都

湊は無理だって分かってるから何も言わねぇよ

ありがとう彩都さん優しいね彩都さん

彩都

ああ、お前はそのままで居てくれ座敷童子

誰がチビだコラ

…壊してサクッと解決するなら壊したい。

でもあの魔女が丸投げしてきたコレがそんな簡単とも思えないしなぁ…

凍牙

湊にだけ甘い気がする…

立哉

贔屓だ…

…滅多と当たらない直感を信じてみようか。

彩都は部屋の隅のあいつらのところに移動してるから止める者はいない。

…よし。

佑都

ていっ

能面が割れる音で、バッとこちらを向く4人。

さて、綺麗に真ん中で割れたのでそのまま粉々に破壊しようか。

彩都

お前何してんの!?

うわ、粉々にするんだ…

凍牙

…禍々しい気配はそのままだけどな

立哉

…これ、壊して大丈夫だったの?

粉々にした後も、凍牙の言う通り、禍々しい気配は消えない。

…それどころか、破片が動き始め…

佑都

…本当に面倒なもの寄越してきたな

徐々に形を作っていく。



そして…

元通りの翁の能面に、戻ったのだ。

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