四日後の水曜日。
山根さんにネームを見せてもらう約束の日だ。
帰りのホームルームが終わった後、僕は目立たない程度の身振り手振りで山根さんに無言の会話を試みた。
なぜそんなことをしているのか。
約束の場所は図書室。
そこまでは良い。
だが、時間帯を決めていないことに今更気が付いたのだ。
いつもなにかが抜けている。
普通に考えれば前回同様、放課後の部活前でいいと思うのだが……。
確証がない。
だからといって皆が見ている教室で、直接話しかける勇気など僕にはない。
僕が山根さんにコンタクトを取るギリギリの方法として選んだのが、目で語り、手で伝えることだったのだ。
手を目立たない程度に振ってみたり、上半身を斜めに傾けたり、無意味に手でキツネの形を作ってみたりした。
だが山根さんは、一切僕の方を向く素振りを見せなかった。
もしかして、今日の約束を忘れてるのではなかろうか。