Mail
From
真山美代子
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真山美代子
安田粧子先生
先日は主人を施術して下さり
本当にありがとうございました。
そして主人の数々の暴言や無礼、
どうかお許し下さい。
今や本人は早く先生に来てほしい、
カイロプラクティックを受けたいと
子供のように毎日催促してきます。
看護師の私の目から見ても
粧子先生の頚椎への施術、
サプリメントの適応は彼の症状に
非常に効果的であり、
彼の可動域が確実に
広がったのが伺えます。
これまでの長いリハビリ生活の中では
考えられない変化に
私自身たいへん驚いています。
試合中のアクシデントによる半身不随で、
彼の人生は一変してしまいました。
誰よりもプロレスを愛していた故に、
激しく裏切られた気持ちに
なってしまったのでしょう。
何で俺なんだ
死にたい
殺してくれ
と毎日叫び、
何度も舌を噛み切ろうとし
自傷行為を繰り返す彼の姿に
私はただ涙を流すばかりでした。
これってまさか…
そこまで読んで小暮はこれが
プロレスラー真山仁の夫人からの
メールであることを確信した。
真山が試合のアクシデントで
長期欠場に追いやられた
というニュースを聞いたのが１年前。
その間いっさい公の場に
姿を現さなかったので、
ファンたちの中では
引退説がささやかれていた。
手術や投薬は医療がアプローチできるのに
骨格自体には何もできない。
レントゲンで頸椎のズレがわかるのに、
痛み止めを出す事しかできない。
夫に何もしてやれない。
医療に携わる者として
そんなジレンマを抱えていた時、
自宅に入っていた安田先生の
チラシに書かれていた
カイロプラクティックの説明を受けて
これに賭けよう
と思い立ちました。
思い返せば確かに粧子は
毎週定期的に手作りのビラを
近隣の住宅にポスティングしていた。
まるで学生の文化祭の出店チラシ
のようなチープさの
手書きで作られた
カイロプラクティックの説明などが
書かれたビラである。
〇×〇△□×××！！！
はい、すみません。次回からはそちらのお宅には決して投函致しませんので、ご迷惑おかけして本当に申し訳ありませんでした
施術の予約の電話よりも
よく苦情の方が多く掛かってきて
気弱に応対している粧子の姿を見ては
そんなのいくら捲いたって効果薄いと思うぜ。ここらの奴らがちゃんと目を通すビラなんてパチ屋のグランドオープンか、ピザ屋のクーポン付チラシぐらいのモンだろ？
…だね！でも、私ができる数少ない努力の一つだから。もうちょっと頑張ってみたいの。ごめんね。
と笑顔を振りまいてからエコバッグに
手製のビラを数百部入れて昼間から
外に配りに行った粧子の
細い背中を冷ややかに見送り、
小暮はスロットを打ちに
出かけたものだった。
そんな馬鹿にしていたビラから
あのプロレスラー真山仁に
辿り着くとは
何とも数奇な運命を小暮は感じていた。
粧子の努力の実りに
少しも気づけなかった自分に
やり切れなさも感じた。
俺がしていい事なのかわからないが…
真山美代子様
こんにちは
やすだ施術院受付事務の
小暮忍と申します。
大変恐縮ですが
安田は諸事情により
お伺いすることができません。
つきましては代行として私と
安田の推薦人として
森カイロプラクティック整体院の
森加奈子先生とで
お体診させていただいても
よろしいでしょうか？
続く
