会場・裏口

人気ヒールレスラー

イヤォ!!

中堅覆面レスラー

おい道開けろって!勝手に荷物触んじゃねえって!やんのかって!

花形エースレスラー

愛してま~す



試合を終えたプロレスラーたちが

続々やってきて、


ファンたちに手を振ったり、


ポーズを決めながら自社バスの

中へと消えていく。

小暮の父

わーわー、滾るぜオイ!

小暮の父はバカみたいに写真を

撮りまくっては選手や関係者に

怒られていた。


小暮少年はそんな父を見兼ねて

小暮少年

父さん、ごめん。僕トイレ行ってくる

小暮の父

ええ今!?空気読めよ!いま離れたら真山選手に一緒にサンキューな!のチェキしてもらえないぞ?

小暮少年

(お父さんに空気読めって怒られた)…僕は要らないからいいや。すぐ戻るから



トイレに行くと、


そこには体中包帯だらけ、


肘や膝には氷嚢でガチガチに

アイシングしている真山が

大便器で血反吐をはいて

突っ伏していた。

小暮少年

え、あの…大丈夫ですか?




戸惑う小暮少年に真山は気づき、


鬼の形相でにらみつけた。


真山仁

誰だオラ!
お前見るなオラ!





近くで見ると、


全身傷だらけで皮膚はただれ、


小皺も目立ち、


全体的にガタガタで

リング上で見るよりも

いささか老けてみえた。

真山仁

オイ、お前俺のファンか?

小暮少年

いえ…今日初めて父とプロレスを観に来ただけで…全然選手の名前とかはわかりません

真山仁

そうか。じゃあ、ギリギリセーフだな。他の奴らにはこの俺様の無様な恰好絶対言うなよ

小暮少年

わかりました…あの、どうして技を避けないんですか?そんなに痛そうなのに?

真山は再び睨み、


俺の頭を掴んだ。


俺はしまったと思い目を閉じた。

すると

真山仁

…逃げたくねえからだよ。特にお前らガキたちの前で絶対逃げたくねえんだ



そう言いながら笑みを浮かべて

真山は小暮少年の頭を

クシャクシャに撫で回した。

小暮少年

ありがとう!!


俺の口から自然とその言葉が出た。

真山仁

おう。で、まだギリギリ俺様のファンじゃねえおめえを見込んで頼みがあるんだけどよお

小暮少年

何ですか?

真山仁

バスからこっそりスタッフ呼んできてくれねえか

小暮少年

わかりました

真山仁

サンキューな



中指立てる余力もなく、


そう言って真山は気絶した。



俺は言われたとおりの立ち回りをし、


真山の介抱に貢献した。


因みに

このエピソードは父に話していない。




小暮は懐かしそうに

燻らせた煙草の火を消した。


経華が目をウルウルさせながら

織原経華

すっごい感動的なヒーローエピソードじゃないですか!ちょいちょいお父様がちらつきましたけど!

小暮忍

あれから20年経った今でも真山選手は戦っているんだぜ?



小暮は新しい煙草に火をつけた。



続く

ドリームファイター その4

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