空を覆う雲





































おねえちゃん

なんで電気つけてないの?

あたし

はっ!






感情が交錯する中、



あたしはいつの間にかダイニングへ戻って



椅子に座っていた。







おねえちゃんは



何事もなかったかのような



顔をしている。




あたし

あ……ちょっと考え事してたら…
電気つけるの忘れてたよ…。

おねえちゃん

よっぽど集中してたんだねぇ。
リツが全然呼びに来ないから
自分で来ちゃったよ。

あたし

へ?

あたし

チラッ



時計の針はもう10時過ぎを指してた。

あたし

うぇ!?
もうこんな時間?

おねえちゃん

実は寝てたんじゃない?

あたし

寝てないと思うんだけどなぁ……。

おねえちゃん

今日は体力的にだいぶ無理したからねぇ。

あたし

それ、おねえちゃんのせいじゃんか!

おねえちゃん

はいはい、そうでしたねぇ。
ごめんね、リツ。













いつもの調子のおねえちゃん。



さっきまですすり泣いていたとは思えない。














あたしは本当に夢を見てたのかな?











それにしてはリアルだったし……。








おねえちゃん

さて、早く食べないとね…。

あたし

そうだね……。
餃子、温めるよ。





餃子を電子レンジで温めている間、



冷蔵庫から冷えすぎたコブサラダを出す。







4時間以上も冷蔵庫で過ごしたサラダは



ラップをしていたとしても乾燥気味だ。




おねえちゃん

いただきます。

あたし

いただきまーす。

おねえちゃん

もぐもぐ

あたし

時間が経ち過ぎちゃったね。
やっぱ焼きたてじゃないと……。

おねえちゃん

んー……。
でも、おいしいよ。

あたし

……ありがと、おねえちゃん。











おねえちゃん

あははは……。

あたし

………。



今日も食後はリビングでテレビを見る。






けど、頭に入ってこない。













笑いながらテレビを見るおねえちゃんが


本当の姿なのか、


書斎で泣いていたおねえちゃんが


本当の姿なのか、


はたまた、あたしの見た夢だったのか。










おねえちゃん

ふぁぁぁ……



大あくびするおねえちゃん。


おねえちゃん

今日はたくさん運動して疲れたねぇ。

あたし

たく……さん……!?

おねえちゃん

もう寝ようか。

あたし

そ、そうだね。














おねえちゃん

今日は久しぶりに自分の部屋で寝る。

あたし

階段登る体力あるの?

おねえちゃん

大丈夫だよ、手すりがあるから。

あたし

そこ!?

おねえちゃん

まぁ、埃っぽくないかは心配だねぇ……。

あたし

あたしがたまに掃除してるから大丈夫だよ!

おねえちゃん

おや、そうかい。

おねえちゃん

ありがとねぇ。

































おねえちゃん

はぁ、はぁ、はぁ……。

あたし

もう、ぎりぎりの体力じゃんか!

おねえちゃん

んじゃ、おやすみぃ〜

あたし

うん、オヤスミ。









おやすみのあいさつをして



お互いの部屋に入る。









ベッドへと潜り込み、



書斎での事を整理してみる。






……けど、肉体労働でヘトヘトの体は



睡魔には勝てず、



考えがまとまらないうちに



夢の世界へと堕ちていく。





































あたし

ハッ!

あたし

ここは……。
心の世界……?
それにしては……。









……暗い。











今まで見てきた心の世界は




柔らかく優しい明るさを




持つ世界だった。










けど、これはまるで




暗雲が立ち込めているみたい。




レム

ア…… キタ!

あたし

レム!



あたしの姿に気づいたレムが声をかけてきた。


あたし

これはどういう事?
何でこんなに暗いの?

レム

……キョウ…
キミ ハ
カレ ノ アルジ カラ
ハナレナカッタ。

………。

レム

オカゲ デ
カレ ヲ ネラウ
『クロヴィス』ハ
カレ ニ テダシ
デキナカッタ

レム

………ケド……。

あたし

……けど?

レム

スッ……










レムはゆっくりと空を仰いだ。




あたしも釣られるように



上を見上げる。










あたし

!!!
































そこには





おびただしい数のクロヴィスが





心の世界の空を埋め尽くしていた。















レム

ヤツラ ハ……

レム

ナニガ ナンデモ
カレ ヲ
ケス ツモリ ダ!






あたし

何がなんでも……!?







………。















もう一人の門番さんは






変わらず沈黙を続けたまま……。




















事態は好転しなかった。



























けど、ただひとつ。





レムの言葉ではっきりした事がある。
































もう一人の門番さんは








まぎれもなく








おねえちゃんの門番さんだ。






























つづく

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