よく小説であるよな。
美少女が空から降ってきたり、美女が部屋んなか転がり込んで、うひょー、オラサイコーっす!みたいな展開。
んで、そんな状況を見た野郎が言うわけだ。
「なんて羨ましいんだ!自分のとこにも来てほしい!」と。
そんな連中に言ってやりたい。
じゃあ、今すぐ僕と代われ。
よく小説であるよな。
美少女が空から降ってきたり、美女が部屋んなか転がり込んで、うひょー、オラサイコーっす!みたいな展開。
んで、そんな状況を見た野郎が言うわけだ。
「なんて羨ましいんだ!自分のとこにも来てほしい!」と。
そんな連中に言ってやりたい。
じゃあ、今すぐ僕と代われ。
……
ふっふっふー
不法侵入女とテーブルを挟んで対面に着座なう。
落ち着け、僕。状況を整理しろ。
考えられる可能性は三つ。
①この女はストーカー
②僕の疲れが作り出した幻
③悪霊か何か
……………
まず①は違う。ただのストーカーなら管理人のおじさんにも見えていたはずだ。
この部屋、色々と揃ってるのぅ。どれどれ
とかなんとか言いながら、部屋を物色し始めやがった。
マジ、ファッ○!
となると②か?
いや、こいつさっきドアを開けたよな。ということはリアルに存在しているよな。
つまり②は除外。
おー! 随分ひんやりする箱じゃのう!
とか、なんとか言いながら今度は冷蔵庫をパタパタし始めやがった。
やめろ、遊ぶんじゃない! 冷蔵庫、ピーピー悲鳴上げてるだろうがぁぁぁああああああ!
マジ、フ○ック! 今度は中指立ててやろうか!
となると残る可能性は-------
お前……悪霊か?
むむ?
こっちの問いかけに気づいたのか、僕の冷蔵庫から勝手にチューハイの缶を取り出し近づいてきた。
おい、そのチューハイをどうする気だ。僕の楽しみにしていたソルティードッグだぞ。
悪いが、僕じゃお前を成仏させることはできない。あきらめて消えてくれ
悪霊? 成仏? あ、これどうするんじゃ?
?マークをたくさん並べながら、チューハイの缶を僕に差し出してきた。開けろってか。
僕はため息をつきながらプルタブを開け、不法侵入女改め悪霊女に差し出す。
マジで飲んだら消えてくれ。
礼を言う! どれどれ!
んくっんくっと喉を鳴らして飲み始めた。
そして、時は戻り出す。
と、こうして悪霊にチューハイを飲まれ、悪霊からどんな御神酒とかわけの分からないことを言われ、チューハイだと修正して今に至る、と。
うん、何一つ進展してねえな。
上機嫌になったのか悪霊女はほろ酔い加減で話しはじめた。
ヒック! 時に人の子よ。お主は勘違いしている! 間違っているぞよ! ヒック
勘違い?
うむ!我は悪霊ではない! 神じゃ!
…………
どうした? 神々しさのあまりに言葉を失ったか? 人の子よ
……あれだよな。汚れを拭いたり鼻をかむ時にあるとすげー便利だよな
それは紙じゃ
するとあれか。伸びてくるとむさ苦しくなって速攻で切りたくなるよな
それは髪じゃ
高級品で実を食べても美味いけど、みそを食っても美味いよな。あとはさみで挟まれると痛い
蟹じゃな。と言うか、もうベタなボケはいらぬわ!
そりゃ、ボケたくもなるでしょう。
いいか? 僕はもともと神を信じていない。
ていうか、神様を信じる奴に問い正したいよ!
あなたの信奉してる神様は人様の家に入って、物色して人の飲み物を漁るのかと。小一時間問い詰めたいよ!
…………一億歩譲ってお前が神だとしよう。というか、神でも悪霊でも僕には大差ないんだけど、これだけは聞くぞ。なんで僕のところに現れた? もっとオカルトマニアとかどっかの宗教団体と間違えてないか?
ふっふー。決まっておるだろう
そう言ってにんまり笑いながら悪霊女改め自称神女は言った。
お主が気に入ったからじゃ
はぁあああああ!?
思わず素っ頓狂な声が出る
待てよ! 僕は神様を信じない。仮にいたとしても何一つ神に好かれるようなことは一切していない! どこに気に入られる要素がある!?
そのとおりじゃ。今日神社に来たお主の態度は「不遜」そのものじゃった
不遜?
うむ。まずは礼をせずに鳥居をくぐった。まぁ、これは気にしないが、神の通り道である道の真ん中を堂々と歩く。本居の前まで来て賽銭を投げもせず、一方的に誓いだけ言ってまた鳥居に礼もせず帰っていった。これを「不遜」と呼ばずしてなんと呼ぶ?
……客観的に言われると僕、すげー失礼な奴みたいだな
「みたい」ではなく余裕で失礼な奴じゃ。じゃが――――――
じゃが?
無礼者だが、神ではなくあくまで自分自身の力で願いを叶えようとするお主が気に入った。もう少しお主を見たくなったのじゃ。そこで……
そこで?
神としてお告げを与える! 一年の間にお主の願い「大切な人を守れるようになる」!これを叶えられなかった場合―――――
なっなんだなんだ?
お主に大きな災いが降りかかるであろう! 以上じゃ!
…………
ふぅ。久しぶりに神っぽいことして疲れたわ。なんか馳走、馳走はっと!
いや、待てやぁあああああああ!
む?
む?じゃねーよ! なんだ今のは! お告げつうか……まんま脅しじゃねえかぁああああ!
ちなみに叶えるとハッピーなこと待っておるぞ。叶えらなかったら、大きな災い降りかかってくるだけじゃ
「ちょっと濡れるだけだから」みたいな軽いノリで言うな!
ふふっ。見てみたいのじゃ。気に入ったお主の可能性をのぅ。あ、ちなみに
なんだよ!
願いが叶ったかどうかの判定役としてしばらく厄介になるぞよ
はぁあああああああ!?
これからよろしく頼むぞ。人の子よ。お、これ美味そうじゃのう!
ちょ、待てよ! あ! おい! 僕の魚肉ソーセージを取り出すな! 剥くな! 食べるなぁあああああああ!
こうして。
僕の悲痛な叫びとともにこの好奇心旺盛。自由な奔放な自称神様との。
1年後の災いをかけた同棲生活が始まったのだった……