彼女なら俺を殺してくれるかもしれない

凛として咲く花の如く

俺に微かな希望を持たせてくれた彼女と歩いている。

さっきから俺にバレてないと思っているのか、彼女は何度も俺をチラチラと見ている。

四季

こんだけ見ていてバレてないと思っているのだろうか?

そんな彼女を少し可愛いと思った。

・・・誰かを可愛いと思う感情が俺の中にあったことに少し驚いた。

四季

ぷっ・・・。

かぐや

!!

四季

言っておくけど、さっきからバレバレだよ?

かぐや

ぬぉっっ!?

彼女は本当にバレてないと思っていたみたいだ。

四季

・・・。
椿は一緒じゃないの?

本来なら俺はあの路地裏で椿を助けるはず。

なのに路地裏に椿はいなくて彼女がいた。

どうやら彼女は椿を逃がすために自分が残って戦うことにしたらしい。

彼女は椿はお姫さまであることを知っているみたいな口振りだ。

【家臣達と】と言ったことから、おそらく椿の正体を知っているのだろう。

四季

キミはどーしてあの時一人でいたの?

武器も無いのに戦おうとしたことは勇ましいことだろう。

でも、彼女は【女】だ。

どう頑張っても力で男に敵うわけがない。

かぐや

んと、とりあえず椿に逃げて欲しかったから無我夢中で・・・。

四季

ふーん。そう・・・。
でも、あの時キミは俺が来なかったら死んでたよ?

俺が来ることをわかっていたのか?

俺には彼女の行動が理解できない。

自分の命をかけてまで椿を逃がす理由があったのか?

かぐや

そう、よね・・・。
でも私もまだこれが現実だって思えなくて・・・。

四季

ゲンジツ・・・ね。

現実と思えない理由はなんなのか?

普通に考えたら、斬られたら死ぬなんて当たり前に理解できるだろう。

何度もこの世界を繰り返している俺にとって【彼女】はただ不思議だった。

かぐや

でも四季はなぜ私が椿と一緒だと思ったの?
椿のことを知っているの?

彼女の質問はおかしい。

普通、俺が椿のことを質問したら、俺が椿と知り合いだと思うはずだ。

だけど彼女は俺に椿を知っているのか聞いてきた。

四季

それを言うならキミはなぜ俺のことを知っているの?

俺は彼女の質問を流すように別の質問をした。

すると彼女は俺のことを意地悪だと言う。

そのあと、少し言葉を選ぶように彼女は口を開いた。

彼女の言葉は俺の常識を覆す希望の言葉だった。

彼女はどうやら別の世界から来たらしい。

本来ならそんなこと、とても信じられないだろうが彼女は真剣に話をしてくれていた。

そして俺たちの服装と彼女の服装も、別世界から来たということなら全く異なるのにも頷ける。

俺の名前をなぜ知っているかは答えれないみたいだけど十分だ。

俺は確信した。

きっと彼女は【俺を殺すために来てくれた】んだと。

四季

いや、今はそれだけわかれば十分だよ。
キミが着ているモノは俺等とは違うし納得もできる。
話してくれてありがとう。

嬉しかった。

もう繰り返さなくてもいい。

きっと今回が俺の【最後】になる。

そう思うと自然に笑みがでていた。

かぐや

!!!

彼女は真っ赤になっていた。

彼女の表情はコロコロ変わる。

それは見ていて面白い。

・・・そんなことを思うのもいつぶりだろうか。

とりあえず、俺は彼女と椿を探すことにした

町中を見ると彼女は言った。

かぐや

うわー!
本当にアプリとそっくり!

四季

あぷり?

かぐや

!!!
いやいや!私そんなこと言ってないよ!

彼女は確かに「あぷりとそっくり」と言った。

彼女の世界のどこかの場所と、この町が似ているのだろうか?

聞き返しても彼女は隠そうと必死だし、俺もそれ以上は聞かないことにした。

四季

そういえばキミの名前聞いてなかったね。

まだ聞いていない彼女の名前を聞いてみた。

かぐや

あ!そうだったね!私はかぐや!
月夜(つきよ)かぐや。

彼女は眩しいぐらいの笑顔で答えた。

四季

つきよ かぐや・・・。

そういえば、昔話に【竹取物語】って話があったな。

俺はあの話嫌いだけど。

【美しいかぐや姫】は勝手に来たと思ったら勝手に帰っていく。

心だけを奪って・・・。

どんなに彼女を慕っても別世界の住人。

帰ってしまえば二度と会うことなどできない。


彼女は昔話の「かぐや姫」と同じ名前。

元々別の世界から来たかぐや姫は最後は月に帰る。

みんなを置いて。

彼女も元の世界に帰るのだろうか・・・。

ふと彼女を見るとまた顔が赤い。

四季

俺は自己紹介必要かな?

こーゆう彼女はなぜだか、からかいたくなる。

俺は彼女を自分の腕の中に閉じ込めた。

・・・案の定かぐやさんは顔を真っ赤にしている。

耳まで赤い。

四季

さっきから顔が赤いけど大丈夫?
もしかして・・・男慣れしてないの?

彼女の身体は思ったよりも華奢だった。

女性だから当たり前なのかもしれない。

だけど、こんな華奢な身体であの男に立ち向かったのかと思うと胸が疼く。

間に合って良かった、わからないが心底そう思った。

四季

武器もなしに、こんな華奢な身体でよく向かっていったもんだ。

かぐや

なっ!!!な、な・・

四季

その反応。
肯定しているようなもんだよ?

かぐや

なんちゅーことを!

筋肉がついているわけでもない、華奢な身体を離してあげる。

四季

ごめんごめん。
あまりにもキミがさっきから顔赤くするもんだから、ついからかいたくなって・・・。

これは俺の本音だ。

彼女のコロコロ変わる表情は見ていて飽きない。

そう、思った時、視界に椿が入る。

こっちにむかって走ってきているみたいだ。

俺は路地裏で椿を助ける世界しか知らない。

かぐやさんが現れたこの世界は初めてだ。

つまり俺にとって未知の世界。

ここから先、物語がどう進むか俺は知らない。

椿とかぐやさんが話している。

俺を知らない椿に対し、かぐやさんは何かを考えているみたいだった。

四季

「初めまして。俺は四季。奏 四季(かなで しき)。」
宜しくね。「椿さん」

俺のことを知らない椿にとりあえず自己紹介をする。

どうやら椿は俺達を城に招いてお礼をしたいらしい。

本来もそうなるはずだが、今回もそうなりそうだ。

そんな椿に対してかぐやさんは助けるのは当然のことだからお礼はいらないと言う。

四季

当然のこと、ね・・・。

自分の命と引き換えに知らない人を助けることを当然というかぐやさん。

そんな考えをできる人間はどれくらい、いるだろうか。

・・・本当に彼女は不思議だ。

結局俺とかぐやさんは椿の城に招かれることになった。

つづく

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