すっかり我が家に慣れきってますね

 こたつを気に入った穂波さまは、尻尾4本すべてこたつに入れ、下半身も入れ、こたつ布団から上半身だけを出している状態でくつろいでいた。
 そして、僕の本棚にあったバトル物の古典漫画を熟読している。

穂波さま

順応性の高さはわらわの自慢なのじゃ

 ふふふ、と言いつつパラリ、と超人たちが繰り広げるバトルの頁を進める。
 明らかにインドア派のスキルですよね、それ。とは言わずに、僕は話をすすめる。

さてと。穂波さま、そろそろ出かけますよー

穂波さま

ん? どこへじゃ?

神様登録です

穂波さま

神様登録、とな?

ええ、神付きとなった人は、神さまと一緒に国へ届け出をしないといけないんですよ

穂波さま

えー、なんじゃ、めんどいのう

でも、届け出すると、いろいろ特典があるんですよ

穂波さま

特典?

ええ、特典です。お菓子が買えるようになったりとか、いろいろ楽しいことができるようになったりとか

 間違ってはない。神様登録すると神様専用のクレジットポイント、通称神ぽがもらえるのだ。
 そのかわり、いろいろな義務が発生するのだけど。

穂波さま

ほほう、悪くはないのじゃ

登録しないと、逆に国から追われる身になります

 これも事実。神様登録していない神付きは、違法神付きとして逮捕される。

穂波さま

行くとするかの

 穂波さまは、追われてはたまらんからな、と言いつつ立ち上がった。

話が早くて助かりますー

 僕は、椅子にかけていたパーカーを取り、袖を通した。

あ、その前に

穂波さま

なんじゃ

図書館寄っていいですか。本を返したいので

穂波さま

としょかん? ああ、書府のことか

古い言葉ですね―初めて聞きました。規模は違うかと思いますが、そうです

穂波さま

別に良いのじゃ。わらわも現在の施設に興味があるのじゃ

では、ちょっと寄り道しましょう

こんにちは、リピカさん。本を返しに来ました

 図書館のドアを開き、カウンターでぽけーっとしている司書さんに、僕は声をかける。

リピカ

はいい、こんにちは。承りましたですー

 司書さんはなれた手つきでぴっぴっぴっと本のバーコードを読み取り、返却完了。

今回もおもしろかったです。他におすすめってありますか?

リピカ

うーん、そうですね。過去見ちゃっていいです?

 司書さんの尋ねかけ。僕は図書館の柱に書いてある一文を確認して、

だめです。図書館の中だけでお願いします

 と答えた。

リピカ

そうですねぇ……やっぱり過去見ちゃっていいです?

 その一文とは、
『過去を見てはダメです。断ってください』
 という内容。

だめです

 二度目も僕は却下した。

リピカ

うーん、そろそろネタが尽きてきたです。歩香に聞くしかですねぇ……

それもいいですね

穂波さま

待つのじゃ

 と穂波さまが、いつもの会話を中断した。

リピカ

はいい?

なんですかー?

穂波さま

なにゆえアカシック・レコードの記録天使が書府におるのじゃ!?

何故って……

リピカ

召喚されたからです?

 と、世界の記憶を記録するアカシック・レコードの記録天使、リピカさんが答えた。

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